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15.出たな! 妖怪変化!

 現在、Irish PUB fieldは休業を余儀なくされていますが、そんな折り、2000年のパブ創業以来の様々な資料に触れる機会がありました。そこで、2001~11年ごろにfield オーナー洲崎一彦が、ライターのおおしまゆたか氏と共に編集発行していた月刊メールマガジン、「クラン・コラCran Coille:アイルランド音楽の森」に寄稿していた記事を発掘しました。

 そして、このほぼ10年分に渡る記事より私が特に面白いと思ったものを選抜し、紹介して行くシリーズをこのnote上で始めることにしました。特に若い世代の皆様には意外な事実が満載でお楽しみいただけることと思います。

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 今回は、セッションの話題から少し離れて、2003年にfieldで行われた日本のアイルランド音楽黎明期を支えたミュージシャンたちの共演を、洲崎がレポートした記事をご紹介します──。(Irish PUB field 店長 佐藤)

↓前回の記事は、こちら↓

出たな! 妖怪変化! (2003年6月)

 5月の合宿でひと盛り上がりしてからこっち、わがfieldアイ研はしばしの落ち着きを取り戻したというか、妙に静かというか・・・。前にもここでさんざん愚痴ったけれど、若い奴らの気の散り方とおっさん連中の超マイペース がうまく噛み合わないと言ってしまえばそれまでか。などと、ひとりブツブツ頭の中でボヤいている所へ、面白そうなfieldライブの話が飛び込んで来た。  

 初めは、京都在住のハーパー小野田和子さんのユニット「ノイ」でのライブ話だったのだが、そこへ、昔から東京でアイリッシュやイングリッシュの伝承歌を歌っていらっしゃる竹内篤氏がゲストに加わるという事になった。  

 私など歳だけ食っててもこの世界ではペーペーなので、誠に失礼ながら竹内氏のお名前を存じ上げなかった。プロフィールを送っていただいてビックリ!! 70年代の東京渋谷「ブラックホーク」というロック喫茶の名前! 

 私にとっては、昔から折に触れ何かの本や雑誌で目にした遠い記憶をたどる「伝説」。京都にもあったよ! ロック喫茶。「ジャムハウス」や「治外法権」や「ニコニコ亭」!!  

 確かにあのころは、今のように音楽がブツブツにジャンル分けされていなくて、洋楽はモダンジャズでなかったら何でもロック喫茶でかかっていたよな (モダンジャズはもっとメジャーだったジャズ喫茶の独占商品だったからか?)。

 私の知っているロック喫茶のそんな雰囲気から、あくまで想像、おもいっきり想像する渋谷「ブラックホーク」は当時のヨーロッパ音楽の限られた情報に群がる妖怪達の秘密基地だったに違いないのだ。その妖怪が地の底から這い出してきた! 

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↑ロック喫茶「ブラックホーク」の伝説は書籍にもなって残っている。

 そんな思いでライブ当日を待ちわびた。  

 そんな日々にも小野田さんからの次々に入るメール。当時の(20年以上昔でしょうね)関西での竹内さんの仲間である、シ・フォークの吉田さんがライブに加わる。ハンマーダルシマの池上さんも加わる。今度はシ・フォークの原口さんも! おまけに赤澤さんまで揃えば、これは、シ・フォーク、トリフォイル、ノイという関西を代表するスーパー・アイリッシュ・ユニットの合体ではないか! 

↑シ・フォークのコンピレーションアルバム「longing time」

 竹内氏の妖怪ぶりに恐れ入る。これだけの人たちを集結させてしまう求心力なのだ。本当にこのライブをfieldレギュラー・ライブの「投げ銭」システムで実施してしまっていいのだろうか?  

 そして、ライブ当日。神出鬼没の赤澤さんは残念ながら欠席。それでも7人の大所帯ですわ。一応最低限のPA設備のあるfieldだけど、さすがにマイクが足りないのでどうしようか? ええい! 

 マイク、スタンド共に新しく買い足しましたよ。どの音も漏らしたくない。私は音響マンではありませんが、この日のPAオペには命をかけました(うそ)。そして、ライブは竹内氏の無伴奏歌からしずしずと開始されたのでした。  

 そりゃあ、このメンバーでリハが充分にやれたなんて期待してません。それなりにアンサンブルは荒れていたかもしれん。でも、そんな事関係ないのだ! この7人の趣味人たちこそ現代の妖怪である事に間違いないことを確信しました。  

 居方が違う。顔つきが違う。年輪が違う。私らペーペーがCDか何かでパッと覚えて弾き散らし、歌い散らせるのとはそもそもの次元が違う。えーカッコしようなんて顔誰もしていないし、謙虚で控え目な素振りの中ににじみ出てしまうかのような主張。若者よ、よーく見ておけよ!  

 本場のアイリッシュ達の演奏にも接した。アイルランドの大御所と呼ばれる人たちとセッションもした。でも、この妖怪たちの醸し出すぶ厚い雰囲気は何や?! 

 そう、彼らはきっと20数年前から(もしかしたら30年に達するかな)、ほとんどブリテン関係の伝承曲の情報など入って来なかった時代から手探りでここまでやって来た妖怪なのだ。いや、絶対にそうであってほしい。これぞ、オタクでなくて何だ?! え?  

 一説によると、今後の世界は「オタク」が蓄えて来た知識と知恵が新しい文化を牽引し、ひいては世界規模の不況を克服する全く新しいマーケットと付加価値売買のシステムを構築するのだという。  

 これからは、また色んな妖怪が唐突にこの地上に這い出して来るぞ。若者よ、 心せい! というわけで、竹内さん! また是非fieldで歌ってください。お願いだから。

<洲崎一彦:Irish pub field のおやじ。今年になって充電にこだわり色々な方法で充電を試みるが、もう! コンセントつないだ方が早いんちゃうの?とヤケ気味のこの頃です>

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