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折々の絵はがき(1)

〈五月雨ふる山王〉川瀬巴水 大正8年(1919) 東京都江戸東京博物館蔵

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◆コロタイプ絵はがき〈季趣五題 なつはじめ 五月雨ふる山王〉 川瀬巴水◆

 外出自粛が続いています。その分、我慢も続きますね。今ががんばりどころと頭ではわかっていても、どうにも息苦しくていけません。どこかに行きたいなあ…そんな気持ちで手に取った絵はがきは川瀬巴水の『五月雨ふる山王』。山王ってことは東京かな?

 梅雨のほんの一歩手前、気温も湿度も高くなるころでしょうか。五月の緑はただでさえまぶしいほどなのに雨に濡れていっそう冴え冴えと見えます。むっとした湿気の中、立ち込めるのはきっとしっとりした土のにおい。石畳はこれからどんどん色を変えていくはずです。

 絵の中の女性は取り立てて急ぐ様子もないようです。小さいひとをおぶって小声で歌でも聴かせているのでしょうか。石畳には下駄の音がからから響いているに違いありません。晩御飯、なに食べたい?なんて声も聞こえてきそうです。すぐそばを歩く犬はたいそう落ち着いて見えます。長い間かわいがられて暮らしてきたのでしょう。

 この作品は「山王さま」と呼ばれ親しまれている東京の日枝神社を描いたもので、木々は桜であると巴水は書いています。女性は子守女で唄を口ずさんでいるとか。それを知って改めて眺めれば、葉を濡らす雨のにおいがより立ち上ってくる気がします。鼻先をかすめるのは初夏の気配。

 絵はがきは季節も場所も自由にわたしたちを連れだしてくれます。今日は東京。次はどこへ行きましょうか。

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○コロタイプとは○
一般的な印刷方法であるオフセット印刷では色や濃淡を小さな網点の密度で表現しますが、コロタイプでは連続階調で表現するため、写真のようにより本物に近い緻密なディテールで表現することができます。
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