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再び動き出す時間

2023年3月、おかげさまで創業5周年を迎えたKBL。
あんなことも、こんなことも、みんながいたから乗り越えられた。
オーナー村岸が、今の想いを綴りました。
いつも応援ありがとうございます!


KBLは、2018年3月末に京都市下京区の高瀬川のほとりで開店し、この春、丸5年を迎える。その期間のうち実に半分をコロナ禍に翻弄された。生き延びて来られたのも、一重にお客さん、地域の方々、スタッフ、ブリュワリーや飲食店の仲間が苦しかった時期を支えてくれたからだと心底思う。5周年祭も無事に開催できる運びとなり、安堵とうれしさでいっぱいだ。

僕もいつのまにか「年月が経つのが早く感じる」年齢になってきた。しかし、時間とは人間の心の状態に応じて自在に伸び縮みするものらしい。オープン当初から無我夢中で動き続け、ちょうど3周年祭を盛り上げようと直前までスタッフのみんなと準備に奔走していた時、ロックダウンが一撃で世界を止めた。嵐が不意に止んだように、ビールの動きも、人の動きもまるでスローモーション。当時、僕は時間の流れがどんどん遅くなっていくように感じていた。

3周年祭は泣く泣く中止にした。スタッフやお客さんに断腸の思いで話をしたのを昨日のことのように思い出す。醸造したビールの一部を処分する事態にもなった。どれだけ精魂を込めてつくっても、飲み手がいなければ捨てる他ない。つくり手としての思いを届けることができない悔しさを痛烈に味わった。創業時から苦楽を共にしてきたスタッフも、この間に大勢が去っていった。僕とKBLの仕事のやり方、人とのつながりが大きく変わる中で、スタッフも人生を見直す時が来たのだろうと想像はできた。だが当時の僕には、みんなに十分な共感を示すことができなかった。僕自身もモヤモヤとした視界のきかない世界にいたように思う。

そして2023年、僕は新しい春の始まりの中にいる。京都にも人が戻り、これから特にビールの美味しい季節がやって来る。僕の時間は再びスピードを上げていくに違いない。時が止まったあの期間を超えて、ビールを真ん中にさらに多くの人々と一緒につくり出すKBLの第2章が、僕は今、楽しみでならない。

Love beer, Brew beer.

文/村岸 

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