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『人間性はどこから来たか』【新人読書日記/毎日20頁を】

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新人読書日記シリーズ、3冊目。
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#霊長類

排卵の隠蔽、家族の成立 【新人読書日記/毎日20頁を】(35)

 「人間性はどこから来たか」、121-140頁、読了です。  引き続き、「家族の起源」を巡る議論です。人間と動物の違いは、男女の性差による労働の分業の有無にあるそうです。狩猟採集社会では、男性が大型獣の狩猟など、より「汗をかく」仕事を担当するのに対して、女性は子どもの世話、植物の採集や小型獣の狩猟など、キャンプから遠く離れない仕事をするということです。ただ、現代社会では、男女による性的分業はほとんどなくなってきていますね。  最後の節に、「排卵の隠蔽」という議題が語られて

兄弟姉妹はなぜ大人になると離ればなれになる? 【新人読書日記/毎日20頁を】(34)

 「人間性はどこから来たか」、101-120頁、読了です。  日本の生態学者、文化人類学者である今西錦司により、「人間家族」になる必要な条件が4つにまとめられています。ここで著者は4つの条件の1つ「近親相姦の禁忌」(インセスト・タブー)について論じています。動物の世界でもまれではない現象ですが、その根本的な要因はやはり繁殖です。近親の結合で繁殖にとって様々な不利な状況が発生するからです。  インセスト回避の一例として、子ども時代を一緒に過ごした兄弟姉妹は、大人になって恋愛

なぜ集団生活をするのか 【新人読書日記/毎日20頁を】(32)

 西田先生はアリストテレス『政治学』を引用して第4章の議論を始めています。  本章は霊長類が集団生活を進化させた要因を探る章です。なぜ霊長類は集団を作る必要があるのでしょう。それは集団を作ることによって、捕食者に食われにくくするためです。人が多くて力を合わせれば共同で敵を退治することができますし、しかも、集団に入ると、自分を「目立たない」ようにすることができ、賢い捕食者対策になります。あらゆる所に脅威が潜んでいる原始社会だとすれば、理解できます。現代社会でも同じ生存ルールが

霊長類学者が書いた文明社会啓示録 【新人読書日記/毎日20頁を】(29)

 「人間性はどこから来たか」、1-20頁、読了です。  おそらく、「狼少年」のことを誰しも一度は聞いたことがあるでしょう。狼に育てられた狼少年は作り話ではなくて、実在すると信じる人も少なくないのではないでしょうか。実際、私はずっと信じ込んできたのです。とはいえ、本書の冒頭から、西田利貞先生は辛辣な言葉で、理性的な考えで反対の姿勢を示しています。著者は人間と動物の違いについて、まだまだ知る必要があると感じて本書を執筆したとのことです。  西田先生は人間の本性を探るため、狩猟