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『人間性はどこから来たか』【新人読書日記/毎日20頁を】

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新人読書日記シリーズ、3冊目。
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#365日積読崩しチャレンジ

人間とチンパンジーの共通祖先の謎 【新人読書日記/毎日20頁を】(42)

 「人間性はどこから来たか」、261-280頁、読了です。  約460〜510万年前、人間とチンパンジーの祖先が分岐したとわかりました。人間とチンパンジー属の最後の共通祖先が森林で生活を展開していた可能性が高いと語られています。なんとなく、自然や植物に親近感が湧くのは、古い森への記憶が遺伝子に残っているからかもしれません。また、人間の祖先はどんなきっかけで直立二足歩行になったのか、効率説、性淘汰説といった様々な仮説がありますが、決定的なものはありません。宇宙人に教えられた可

文化とはなんでしょう 【新人読書日記/毎日20頁を】(37)

 「人間性はどこから来たか」、161-180頁、読了です。  「文化の起源」をめぐって議論する章です。学習の種類や定義から文化情報の伝達までさまざまな角度から紹介されています。文化は「知識・信念・芸術・道徳・法律・習慣、そして社会のメンバーとして人間によって獲得される他のあらゆる能力と習性を含む複合的な全体」とは19世紀の文化人類学者エドワード・タイラーによる文化に対する定義です。著者はそれを引用し、「文化」は人間社会に限らず、動物世界にも存在すると指摘しています。文中挙げ

仲間を殺せば殺人、敵を殺せば英雄 【新人読書日記/毎日20頁を】(36)

 「人間性はどこから来たか」、141-160頁、読了です。  高校時代初めてジョン・レノン(John Lennon)の歌「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」(Happy Xmas (War Is Over))を聴いた時、よくわからないものに心を動かされました。気分が上がるメロディー、かわいい子どもたちのハーモニー、何もかも気に入って、ネットでジョン・レノンに関して色々検索しました。彼の反戦精神や、反戦のために行なった活動の関連記事を読み、戦争を体験したことのない私ながら

排卵の隠蔽、家族の成立 【新人読書日記/毎日20頁を】(35)

 「人間性はどこから来たか」、121-140頁、読了です。  引き続き、「家族の起源」を巡る議論です。人間と動物の違いは、男女の性差による労働の分業の有無にあるそうです。狩猟採集社会では、男性が大型獣の狩猟など、より「汗をかく」仕事を担当するのに対して、女性は子どもの世話、植物の採集や小型獣の狩猟など、キャンプから遠く離れない仕事をするということです。ただ、現代社会では、男女による性的分業はほとんどなくなってきていますね。  最後の節に、「排卵の隠蔽」という議題が語られて

兄弟姉妹はなぜ大人になると離ればなれになる? 【新人読書日記/毎日20頁を】(34)

 「人間性はどこから来たか」、101-120頁、読了です。  日本の生態学者、文化人類学者である今西錦司により、「人間家族」になる必要な条件が4つにまとめられています。ここで著者は4つの条件の1つ「近親相姦の禁忌」(インセスト・タブー)について論じています。動物の世界でもまれではない現象ですが、その根本的な要因はやはり繁殖です。近親の結合で繁殖にとって様々な不利な状況が発生するからです。  インセスト回避の一例として、子ども時代を一緒に過ごした兄弟姉妹は、大人になって恋愛

年賀状と人間の互酬性 【新人読書日記/毎日20頁を】(33)

「人間性はどこから来たか」、81-100頁、読了です。  第5章「互酬性の起源」では、霊長類から人間社会まで、互酬的行為や協力のパターンが論じられています。利他行動と利己行動は血縁関係に限らず、普遍的な人間関係にも大きく影響を及ぼしていると感じました。著者は日本における年賀状のやり取りを例として挙げて、人間の互酬性を語っています。年賀状を出したのに、相手からは来なかった場合、大体翌年は年賀状書きません。それは相手のことを「お返しをしない人」だと認識したのです。同じように、霊

満員電車に痴漢が絶えない理由は… 【新人読書日記/毎日20頁を】(30)

 「人間性はどこから来たか」、21-40頁、読了です。  第1章「現代人は狩猟採集民」では現代人のいろんな特徴や習慣、また病気は昔々の狩猟採集民時代から受け継いできた遺伝子型や本能から生じた文明社会不適応性だと主張されています。  今読んでいる第2章にもこういった主張に触れています。本題に入る前にまず、人間性研究の歴史が紹介されています。様々な分野の国内外の学者の研究努力と成果を概観することができます。まるでバイキングのように、人類の進化に関する面白い議論を一気に満喫でき

霊長類学者が書いた文明社会啓示録 【新人読書日記/毎日20頁を】(29)

 「人間性はどこから来たか」、1-20頁、読了です。  おそらく、「狼少年」のことを誰しも一度は聞いたことがあるでしょう。狼に育てられた狼少年は作り話ではなくて、実在すると信じる人も少なくないのではないでしょうか。実際、私はずっと信じ込んできたのです。とはいえ、本書の冒頭から、西田利貞先生は辛辣な言葉で、理性的な考えで反対の姿勢を示しています。著者は人間と動物の違いについて、まだまだ知る必要があると感じて本書を執筆したとのことです。  西田先生は人間の本性を探るため、狩猟