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『人間性はどこから来たか』【新人読書日記/毎日20頁を】

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新人読書日記シリーズ、3冊目。
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#人間性

脳の「Homunculus」【新人読書日記/毎日20頁を】(41)

「人間性はどこから来たか」、241-260頁、読了です。 本章「知能の進化」の「道具仮説」という節に言及されている「脳のホモンキュラス(Homunculus)」に惹かれました。図版の画像はどこかで一度見た記憶がありますが、どういう意味か今日初めてわかりました。簡単にいえば、体の個々の部位の感覚が、脳のどの部分に対応するのかを見える化した人間の脳の「地図」です。アメリカ、カナダの脳神経外科医であるワイルダー・ペンフィールドによる脳電気生理学での発見です。初めての方は、ぜひ調べ

言語が表れたきっかけ 【新人読書日記/毎日20頁を】(40)

 「人間性はどこから来たか」、221-240頁、読了です。  言語がなければ、本は存在しない。言語がなければ、現代社会も成り立つことは不可能です。ただいま読んだ「言語の起源」の本題に触れる節で、情報を伝えるために、言語ができたと、著者は主張しています。スマホもインターネットもない原始社会で、食べ物のある場所を親族に教えるには、声を出し、言語で伝えることしかできませんね。昔々、暮らしを便利にするために、人間はいろんな道具を作りました。同じように、情報伝達を即時できるようにする

仲間を殺せば殺人、敵を殺せば英雄 【新人読書日記/毎日20頁を】(36)

 「人間性はどこから来たか」、141-160頁、読了です。  高校時代初めてジョン・レノン(John Lennon)の歌「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」(Happy Xmas (War Is Over))を聴いた時、よくわからないものに心を動かされました。気分が上がるメロディー、かわいい子どもたちのハーモニー、何もかも気に入って、ネットでジョン・レノンに関して色々検索しました。彼の反戦精神や、反戦のために行なった活動の関連記事を読み、戦争を体験したことのない私ながら

排卵の隠蔽、家族の成立 【新人読書日記/毎日20頁を】(35)

 「人間性はどこから来たか」、121-140頁、読了です。  引き続き、「家族の起源」を巡る議論です。人間と動物の違いは、男女の性差による労働の分業の有無にあるそうです。狩猟採集社会では、男性が大型獣の狩猟など、より「汗をかく」仕事を担当するのに対して、女性は子どもの世話、植物の採集や小型獣の狩猟など、キャンプから遠く離れない仕事をするということです。ただ、現代社会では、男女による性的分業はほとんどなくなってきていますね。  最後の節に、「排卵の隠蔽」という議題が語られて

年賀状と人間の互酬性 【新人読書日記/毎日20頁を】(33)

「人間性はどこから来たか」、81-100頁、読了です。  第5章「互酬性の起源」では、霊長類から人間社会まで、互酬的行為や協力のパターンが論じられています。利他行動と利己行動は血縁関係に限らず、普遍的な人間関係にも大きく影響を及ぼしていると感じました。著者は日本における年賀状のやり取りを例として挙げて、人間の互酬性を語っています。年賀状を出したのに、相手からは来なかった場合、大体翌年は年賀状書きません。それは相手のことを「お返しをしない人」だと認識したのです。同じように、霊

なぜ集団生活をするのか 【新人読書日記/毎日20頁を】(32)

 西田先生はアリストテレス『政治学』を引用して第4章の議論を始めています。  本章は霊長類が集団生活を進化させた要因を探る章です。なぜ霊長類は集団を作る必要があるのでしょう。それは集団を作ることによって、捕食者に食われにくくするためです。人が多くて力を合わせれば共同で敵を退治することができますし、しかも、集団に入ると、自分を「目立たない」ようにすることができ、賢い捕食者対策になります。あらゆる所に脅威が潜んでいる原始社会だとすれば、理解できます。現代社会でも同じ生存ルールが

霊長類学者が書いた文明社会啓示録 【新人読書日記/毎日20頁を】(29)

 「人間性はどこから来たか」、1-20頁、読了です。  おそらく、「狼少年」のことを誰しも一度は聞いたことがあるでしょう。狼に育てられた狼少年は作り話ではなくて、実在すると信じる人も少なくないのではないでしょうか。実際、私はずっと信じ込んできたのです。とはいえ、本書の冒頭から、西田利貞先生は辛辣な言葉で、理性的な考えで反対の姿勢を示しています。著者は人間と動物の違いについて、まだまだ知る必要があると感じて本書を執筆したとのことです。  西田先生は人間の本性を探るため、狩猟