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建国大学を知っていますか?

Kenkoku University and the Experience of Pan-Asianism:
Education in the Japanese Empire

「建国大学と汎アジア主義の経験」
By: Yuka Hiruma Kishida
October 2019 (Bloomsbury Academic)

1938年、満州国に創設された建国大学。「民族協和」を目指してつくられた建大には、日本、中国、朝鮮、台湾、モンゴル、ロシアの各国から優秀な若者が入学し、次代の満州国を担うリーダーとなるべく、先進的な教育が施された。

1938年といえば、前年には日中戦争がはじまり、39年には日本は国際連盟を脱退して、戦争への道をひたすら突き進んでいこうというきな臭い時期。
そんなときに信じられないことだが、建国大学ではどの国の学生も平等に扱われ、自由な議論ができた。学生たちは、みな熱心に勉学に励み、活発な議論をかわし、そこには強いきずなが生まれた。

私は、それまで「建国大学」のことをまったく知らなかった。この本ではじめて満州国にそういう大学があったことを知った。

その後、あるツイッターで「五色の虹 満州国建国大学卒業生たちの戦後」という本を知った。

あ!あの「建国大学」だ!
さっそく買って読んでみた。

著者の三浦英之さんは、朝日新聞の記者で、部分的に連載記事にしたところもあるそうだ。でも取材をはじめたのが2010年だから、すでに建大卒業生はかなり高齢になっている。それに、あちこちに散らばっているから、話を聞きに行くだけでも大変だったことだろう。
そのなかでも、元中国人学生のヤン・ツオンチへのインタビューの場面は圧巻だった。建国大学のことや日本軍の蛮行については自由に話せたのに、中国政府に都合の悪いことを話し出したとたん、インタビューは強引に打ち切られる。そしてヤンさんともその後二度と会えなくなってしまう。。。
そんなことが今の時代に?というのは、いささかおめでたいぐらい平和ボケした反応なんだろうな。。。

でもこの本は、知らなかった建国大学について、それがいかに魅力的な大学だったか、そこに集まった人たちがいかに真剣にそれぞれの国の未来を考えていたか、理想に燃えていたか、日本の敗戦によって、その輝かしい夢がいかに無残についえていったか、それを丹念な取材と執念ともいえるインタビューによって克明に描き出している。

Yuka Hiruma Kishidaさんの研究書は、目次を見ると、Japanese Students' Experiences at Kenkoku Universityと書いてあるので、やはり卒業生の証言や一次資料などを含んでいるのだろうか。三浦さんの本と読みくらべてみたい気がする。

いま、日本は中国や韓国と外交的な緊張関係がつづいているが、そんなときだからこそ、「民族協和」を唱えた建国大学という大学があったことを、多くの人に知ってほしいと思う。

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