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ラテンシンガー J バルヴィンのコンサート映画から見えるコロンビア社会 (Amazon primeビデオ)

Amazonの制作したJ・バルヴィンのコンサート映画を見ました。J・バルヴィンは南米コロンビアの出身のレゲエシンガーです。コロンビアは中米のパナマと陸続きで南米の入り口ですね。人口は5000万人強で失業率は15%程度、GNPはひとり当たり5,000USDほどと、決して裕福な国ではありません。南米のコカイン王のパブロ・エスコバルのネガティブイメージを持つ人もいるかもしれませんが、現在ではフェイアスブックやグーグルなど大手IT企業の投資も盛んになっているそうです。

この映画ではJ・バルヴィンのメキシコでのコンサートから始まり、最後はストライキで揺れるコロンビアの都市、メデジンでのコンサートで締め括られます。

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彼のいでたちは派手な服装、髪の色(金や緑、赤などカラフル!)、タトゥーなどかなり個性的です。様々なアーティストとコラボしていますが、多くのレゲトン・アーバンミュージシャンが成功すると居住を北米に移したり、英語の歌詞を多く歌うようになるのとは対照的にコロンビア、スペイン語と自身のアイデンティティを崩しません。コロンビアのメデジンという出自からゲットー(低所得で犯罪率の高い地域)出身かと思いきや、彼の父親は経済学者で、中産階級の出身です。彼の音楽はそのためかゲットー賛歌のようなものは少なく、「おばあちゃんでも楽しめる音楽」を目指しているそうです。彼の代表曲でGinzaのリンクを貼ります。歌詞も女の子をクラブで踊りに誘う内容で、とてもアップテンポないい曲です。

個人的には映画の中、メキシコツアーで印象的だった悲しげなメロディーのLA CANCIONがグッと来ました。プエルトリコ出の盟友バッド・バニーとのコラボ曲ですが、失恋ソングで哀愁漂います。

君のことは忘れたと思ってた
でも曲が聞こえてきて
酔っ払いながら二人で歌った
酔っ払いながら踊った
酔っ払いながらキスした曲が
(出典;https://jose-lesson.com/jp/)

この映画を見る前に同じくレゲトン・アーバンのシンガーのニッキー・ジャムのネットフリックスドラマを見ていました。ニッキー・ジャムはドラッグと貧困の中で育ち、若い頃にレゲトン業界のスター、ダディー・ヤンキーと共にスターダムにのし上がっていきますが、様々な困難・苦悩・トラブルに見舞われ表舞台から姿を消します。ドラッグと酒と女性に溺れて、落ちぶれてしまった彼を救ったのがコロンビアでした。コロンビアは落ちぶれたニッキー・ジャムをレゲトンのスターとして迎え、自信をやがて取り戻したニッキー・ジャムは華々しく復活を遂げます。ドラマになっているので演出も多少あるでしょうが、完璧な復活劇になっています。今回、Amazon Studioで制作されたJ・バルヴィンのコンサート映画と対比してみると、いかにJ・バルヴィンがニッキーとは違うバックグラウンドで育った人かということが垣間みえ興味深いです。メデジンで生まれ、メデジンで育ち、メデジンで愛される良家のお坊ちゃんのようなJ・バルヴィンはコロンビアの不安定な政治に振り回されながらも、素晴らしいものを届けよう、というエンターテイナーとして最高の気概を持っていると感じます。

コンサートが終わった後、群衆は帰って行くのですが、そこでコロンビアの人たちの生活が垣間見えます。見ている限り、スマホを持って余暇にコンサートに来る若者たち、闇社会のグループが暗躍していたパブロ・エスコバル時代に比べると、とても普通の社会のように思えます。興味のある方はNetflixでNarcosというシリーズをぜひご覧ください。




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