見出し画像

もーっと遠距離変愛#1

※この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、その他の物は架空のものです。現実とは異なります。

ぼくの世界

夢に見たことはあるだろうか。車が空を飛び、過去に旅行に行ける世界。ロボットが街で働き、人は豊かな暮らしをする。
ぼくの生まれた世界は、そんな夢物語が現実にある。国から支給された小型デバイスによって、人は地球上どこにいてもつながることができる。グローバル化の最終地点だ。

ぼくの趣味は、文通だ。手書きの文字を、封筒に入れて回収ポストに投函する。最近回収ポストが国によって徐々に撤去されているので、この趣味ともそのうちお別れをしないといけないと思った。
今日も、手紙を書いていこうと思う。

愛しのメークイン様江

一筆申し上げます

花冷えの日が続いておりますが、お元気でお過ごしのことと存じます。
グローバル化の進む昨今ではありますが、変わらず手紙を交換できることに喜びを感じております。
メークイン様から届いたお手紙のお返事、遅れてしまい大変申し訳ありません。それもこれも、近くにあった回収ポストが撤去されてしまったためであります。回収ポストも年々箇所が減り、手紙を出すことが難しくなってまいりました。ですが、完全撤去されるまでは送り続けたいと思いますので、ご安心くださいね。
昨日、友人とデバイスモールで買い物を致しました。今は家にいても外に出られるようになり、人と物理的に接触することが減ったことが、少々悲しく感じます。ぼくが物好きなだけかもしれませんが、こんなにサクラが咲いているならば、古き良き風習である お花見 をしたいものと考えるばかりです。今ではサクラの本数も少なくなり、天然記念物博物館に保存されているサクラのライブ映像を見るばかりになってしまいました。記憶媒体に保存して送りますので、ぼくの住む国に思いを馳せてくださると幸いです。

そちらは春がないと聞きました。温かくして、お過ごしください。

かしこ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?