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もーっと遠距離変愛#2

※この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、その他の物は架空のものです。現実とは異なります。

手紙の嗜好性

この前、手紙を送ったメークインからはまだ返事が来ない。
彼女が返事をしてくれないわけではなく、世界から見て、手紙が重要でなくなったことによるインフラの停止が主な原因だ。
だいたい手紙を出すと、届くまでに何年もかかる。だから手紙愛好家の間では、返事が来るまでコールドスリープする人も少なくないと聞く。それは、特権階級の楽しみなんだとか。

ぼくの世界


ぼくは、下流のロボット整備工場で働いている。
僕の住むここは、ロボットと共に暮らす街。整備の仕事は後をたたないが、低賃金だ。いつか、中流階級のロボット整備工場で働き、上流階級のロボットを触るのが夢でもある。整備工場で働く人は、だれでもこの夢に向かって働いているのではないだろうか。

遠くから、サイレンの音が聞こえる。
レジスタンスと政府でいざこざがあったのだろう。レジスタンスは、人民の自由を求めて戦っているらしい。なんでも、ロボットに支配?されているのが納得いかないとか。
生産されているロボットは、どれもぼくたちの生活に欠かすことのできない色々な役割を担っている。ロボットが動かなくなったとき、ぼくたちは何を目的に生活すればいいのか。ぼくにはそれがわからない。

愛しのメークイン様江

一筆申し上げます。

風薫るさわやかな季節となりました。お元気でお過ごしのことと存じます。
グローバル化の進む昨今ではありますが、変わらず手紙を交換できることに喜びを感じております。
昨日、けたたましいサイレンの音と共にレジスタンスがロボットモールを襲撃したと、デバイスリンクから通達がありました。ぼくの働いていないモールで行われたのが不幸中の幸いでしたが、罪もないロボットたちが虐げられたことに変わりはなく、大変痛ましく感じております。
そちらはご無事でありましたか、それだけが気がかりでなりません。
この季節、ぼくの国では藤という花がきれいに咲いていたと聞きます。この花は、古くから女性らしさの象徴と考えられていたそうです。正に、メークイン様に格別合うと考えました。記憶媒体に保存して送りますので、窓から垂らして(こちらの国では、藤棚に吊るすのがよいそうです)鑑賞してみてくださいね。


この手紙は、メークイン様からお手紙が届いたときのために書き溜めておきたいと思います。
立て続けのお手紙になりますが、お話しし足りないほどです。
どうぞ暖かくしてお過ごしください。

かしこ



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