スッキリした

 再発の可能性があると言われる直前まで聴いていた曲がある。曲名は伏せておくけど。
 いつも車の中とか昼休みとか無性に聴きたくなって聴いていた。
 なぜそんなに聞いていたかって?
 良い意味で人生が変わっていかないかな、てその頃思っていた僕の気持ちとリンクする部分があったから、本当ただそれだけだった。

 ただ定期の診察後、再発の可能性を指摘された頃からパタリと聞かなくなった。

 結局初発の治療から半年過ぎた位で再発し、すぐに入院する事になった。そして抗がん剤治療を数回受けて骨髄移植を受けた。その間いろんな事があった。生死の境も2回ほど彷徨ったらしい。でもそんなのは関係なかった。だって僕は死ぬ訳ないと思っていたから。だから医師とその時の話をすると驚かれる。その時の僕は処置にあたっている医師達に「眠いから寝ていいですか」と言っていた。もちろん止められたけど(笑)

 そして今はこれから今度は退院に向けて身体を戻していく時。
 そのタイミングで、その曲の歌詞が頭の中を駆け巡り聴きたくなった。

 曲名を表示させ前奏が始まる。
 そして少しして頭の中を駆け巡った歌詞がメロディに乗って流れた瞬間、これまで止められていた感情が、涙が一気に溢れ出した。そしてその波は何度も僕に押し寄せて来た。
 そしてその時目の前に浮かんだ画。
 一つはもう数十年前に亡くなったおばあちゃん。亡くなってからも何がある度にお墓参りに行って力も貸して欲しいと言っていたおばあちゃんの画がだんだん遠くに行っていくように見えた。
 もう一つは再発の可能性があると言われた時の自分の画。その画がだんだん真っ黒になっていく感じの画。
 その二つの画像が何度も浮かんだ後、それまでの思い出、良い事も悪い事も全てが遠くに行った。

 それを見ながら何も出来ずに、ただただ泣いているしか出来なかった。半日位泣いていた。

 夕方頃落ち着いて窓を見たら夕焼けだった。
 それを見ながら、なぜあんなに泣いたのかな、なんて思った。
 なんか怖かったのかな、本当は僕は。
 それをどこかカッコ付け、て感じでいたのかな、なんて思った。弱さを受け入れたら強い自分になれるから、とかそんな理由で怖がっていた自分じゃなくてね、本当に治療についても全てにおいて本当に心は幼子のように怖かったんだと思う。
 あとは分からない。
 理由なんてもしかしたら、これからの生活の中で分かっていくと思う。だから、これからの宿題だし人生の中での宝探しだと思う。

 ただハッキリしているのは、この涙のおかげで今はスッキリしている、これは確実に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?