見出し画像

【読書感想文】チャンス大城 「僕の心臓は右にある」を読んでいたらガンズが聞こえてきた。


ここ最近面白い自伝本が続いてますね。チャンス大城さんの「僕の心臓は右にある」も最高に面白かったので少しの思い出を加えて感想文を書こうと思います。


季節は夏から秋へ。私は年に2回ほど自分で小さなフェスを開催するのが趣味で、この時期は毎年秋イベントの仕込みをしている。フェスなどと言ったがお客さんは知り合いが中心のアンダーグラウンドな集いだ。

もう何年前になるだろうか。誰に出演してもらおうかと考えあぐねていた時に友人の結婚式で見たチャンス大城さん(以下敬称略)の余興に衝撃が走った。

彼は壇上に上がりFIカーのモノマネを披露し、謎のグルーヴ感で会場をジャックし大盛り上がり。酔っていたからだろうか、私にはチャンス大城とFIカーが一体になったように見えた。

その年のイベントは温泉の宴会場で音楽とお笑いにしようと考えていたので、チャンス大城しかいない!と思い次の日、新郎に電話番号を聞き直接連絡をした。

一か月後の真っ昼間、温泉の宴会場は結婚式と違いファミリー層が中心だった。子供たちが大城の前に群がってFIのモノマネやイリオモテヤマネコの顔芸を不思議そうに見つめる。ネタの最後にナンをもって「ナンのことやね~ん」のキメ台詞がハマりなんだか不思議な、それでいて楽しい時間となった。

イベントには次の年もお呼びした。正直ネタは覚えていないのだが、宴会場でDJが掛けたガンズアンドローゼズのSweet Child O' Mineを「ええですね」と言っていたことを覚えている。どちらも地下の帝王としてブレイクするだいぶ昔の話だ。

「僕の心臓は右にある」は地下芸人時代よりも前、大城の出身地である尼崎編から始まる。関西で、いや日本国内でも一目置かれる街、尼崎。”その世界”のメジャーリーガーがきら星のごとく産まれる、曰く「とても濃ゆい町」だ。

そんな「尼」で幼少期から彼が揉まれたとんでもないエピソードが詰め込まれている。話の一つ一つが想像よりはるか上をいく展開となり、驚きと共に爆笑してしまう。電車の中で読むには極めて危険な本だ。

高校時代に大城はワダという人生で重要な人物と出会う。“人志松本のすべらない話”でも披露された、一緒に六甲山に埋められた(埋められた場所は別々)ワダだ。

本書ではすべらない話で披露できなかった当時の細かい部分にも触れられている。ページを追うごとに事態はとんでもなく異様な展開へ進む。私は仕事で建築資材を扱うのだが、急結剤を見るたびゾッとするようになった。

エゲツナイ話の中にも落ち着く場所はある。同じ高校編だがコダマさんというおっさんとのストーリーも大好きだ。定時制高校ならではの年が離れた奇妙な友情は、読んでいて心が落ち着く。

壮絶ないじめやとんでもない出来事をすべて爆笑エピソードとして昇華できる大城の人間力に圧倒される。

いじめられていた場所を抜けだし芸人となるべく東京編へと移るのだが、まったく違う世界へとつながっていく。晴れて芸人となり、尼崎編とはまた違った渦の中に巻き込まれる。

イベントから10年経っただろうか。いや、そんなには経っていないはずだ。調べればわかるが…この自伝を読んであの日のステージとSweet Child O' Mineがふわりと聴こえた。

まだ「闇営業」というヘンな言葉がない時代の話。またいつかやりましょう。

この記事が参加している募集

読書感想文

最後まで読んでいただきありがとうございました。お気に召しましたらサポートなんてしていただけると…飛び跳ねます!