魂の10球 守護神からマウンド引き継いだNo.36

9月30日、2023シーズンも終盤に迫った埼玉西武ライオンズとの4連戦の初戦。
この日はどちらも譲らぬ戦いで4-4の引き分けで9回を迎えた。

マリーンズの投手は守護神の益田選手
益田はこの日、先頭の源田選手にヒットを浴びると、四死球で1アウト満塁のピンチを作った。
6番鈴木選手に対し、2ボールとなると、吉井監督がベンチから出てきた。
投手交代だった。
  
マウンドに上がるのは、背番号36の坂本光士郎選手。

浜田省吾の「愛の世代の前に」をBGMにしてマウンドに現れた。
“誰も皆 勝つことだけを信じて 賭けを続ける”
この賭けは坂本に託された。

一打勝ち越しとなるチャンスにライオンズのチャンステーマが響き渡る。
男性パートと女性パートから成るチャンステーマは合唱の様で、ライオンズを鼓舞し、マリーンズに緊張感を与える。

目の前に広がるこの大ピンチ
響き渡るライオンズのチャンステーマ
スタンド後方にある他球場情報は、CS争いを繰り広げているソフトバンクの勝利と、楽天の試合終盤でのリードを伝え、このピンチを更に深刻なものにさせていた。
今日負ければCS争いから転落しかねない。

一球投じてボール。3ボール
完全に後がなくった。

ストライクしか許されない次の一球。
見逃しのストライク。
マリーンズファンからは相手の応援を掻き消すような大きな拍手。

坂本の3球目。
投じた瞬間インコース高めに外れたと思われた球が相手のバットに当たりファール。
これで3ボール2ストライク

運命の4球目。
真ん中低めに投じられた坂本の直球は相手のバットをかわし、ミットにおさまった。
バッターアウト。
内野ゴロでも場合によっては致命的な失点となり得るこの状況で、坂本は最も理想的な取り方でアウトをとった。

2人目の打者は外崎選手だった。
とにかく次のバッターを抑えて欲しい。マリーンズファンは全員こんな気持ちだっただろう。そしてこの祈りが坂本の力になることを願う。

ストライクを取る毎に鳴り響く拍手。
ボールと宣告される毎に迸る緊張感。

カウント2-2となった外崎選手に対する坂本の6球目は、
またもバットをかわし、ミットに収まった。
2者連続三振
大ピンチを救った坂本は、派手なガッツポーズをするわけでもなく、飄々とマウンドから降りてベンチへ戻っていった。

どんな試合展開になるか分からない中で試合は進み続け、リリーフピッチャーはその陰で自分の投球の準備をして待つ。
間違いなく坂本光士郎は吉井監督の切り札の一枚だっただろう。

この試合は、この後石川慎吾選手のサヨナラ打で勝利しCS出場に望みを繋げた。

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