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アビスパサポーターの僕がタダ券を貰ってサガン鳥栖の試合に行ってみたら絶句した話

つい先日、招待をいただいたということに加えて予定がばっちり合ってしまったのでサガン鳥栖の試合を数年ぶりに観戦することになりました。

その前日にはアビスパ福岡の試合を観戦しており、その試合があまりにエンターテインメントとして見た時に質が低いことに対して危機感を覚えていたところでしたので、勉強と割り切って試合に向かうことにしました。


雨の中で約1万5000人の観客

正直に言って驚きました。

かなり雨も強くなってきている中、そして気温もかなり落ち込んでおり、雨に濡れつつ震えながら観戦するような試合でしたが、それでも約1万5000人という観客が駅前不動産スタジアムへと足を運んでいました。これだけの人数がスタジアムに駆けつけると、スタンドの端などを除いてほとんどの席が満席。空いてる席を探すことすら難しい状況でした。

前日のアビスパ福岡は快晴で土曜の14時キックオフの試合なのにも関わらず、たったの5,000人しか観客を集めることができていない現状と照らし合わせると大きなショックと驚きを隠せなかったのは言うまでもないかもしれません。

その1万5,000人の観客に見守られながらの、非常にレベルの高いサッカーの本気でのぶつかり合い。お互いにこの試合だけは絶対負けられないという気持ちと気持ちのぶつかり合い、ゴール裏を埋めるサポーター集団はその与えられた応援スペースを埋め尽くし、コアゾーンから離れた人も飛び続けている姿がありました。

チームがピンチの時にはゴール裏はそれを支えるべく飛び跳ね続け、カウンターでチャンスを作るシーンではスタジアムが揺れるようにチャントを響かせ、それを後押しすべくメインとバックのスタンドが拍手で会場に一体感を持たせます。

僕がその前の日に観たサッカー観戦とは訳が違いました。僕は大好きなアビスパを否定する訳ではないですが、事実としてエンターテインメント性では完全に負けていました、それも圧倒的な敗北。アビスパ福岡を長年応援し続けている僕は勉強と割り切っていたのですが、初めてサッカー観戦をする人がどちらに魅力を感じるかという要素の面では鳥栖の方が上回っているのではないかと感じました。

試合に怒る鳥栖のサポーター

サッカーの内容を見ても、さすがは去年のリーグ王者である川崎フロンターレと言わんばかりのパスワーク。ただパスが上手いだけではなくて、

ボールを持っていない選手がボールを引き出すためにコースを作り、相手選手を引きずり出すような形をおとりにドリブルで自らが空いたスペースを使う・・・

といったように、チーム全体の共通認識、これを難しい言葉でフレームワークという表現をすることもありますが、その共通理解ができているのでしょう、パスを出した後に再度ボールを貰えるような動き、パスを受ける前のトラップの位置、味方がボールを持っているときにおとりになるようなダイアゴナルラン(斜めの動きで相手のマークをかき乱す動き)など、個々の選手のやるべきことが明確になっていました。

そういったフレームワークさえ作ってしまえば、それぞれに振り分けられた仕事をこなしさえする最低限を定めたうえで選手の特色が出しやすくなります。シュートが今にも入るかもしれないエリアの非常に攻撃的な位置のことをアタッキングサード、アタッキングエリア、ファイナルサードなどと呼んだりしますが、そのアタッキングサードでは川崎の選手たちはそれぞれの個性を出し合いながら、フレームワークに乗っ取りボールを持っている選手の選択肢を広げるべく前半から後半までただひたすらにボールを持っていない選手たちが足を動かしていました。

パスでボールを繋げるチームは、ボールを持っている選手のボールコントロール能力はもちろんですが、ボールを持っていない選手の動きも非常に重要であると勉強させてもらいました。

そして、そういったチームに対してハードに向き合い続けたサガン鳥栖も非常に立派だったと思います。川崎は「鳥栖のディフェンスをいかにして崩すか」ということを分析班が解析してチームに伝達、チームは1週間の中でコンディションを調整しつつ、チームとしてのやりたい事を実行する上に、対戦相手の情報までを含めたトレーニングを積むことをするチームなので、過去の映像から鳥栖のディフェンスの穴を十分に理解した上で試合に臨んできます。

実際に試合を観ていると足元のコントロールにやや不安の残る鳥栖の右サイドバックを担当している原選手がボールを持った時には川崎の選手たちは他の選手に比べてやや厳しくプレッシングに走っていました。ただ、そういった中でもゴール前で根性でボールをはじき出し、ボールを奪うと前線の金崎選手を中心にカウンターからチャンスを作り出し、あと一歩合わないというところで得点の機会をものにすることができなかったりという場面が何度もありました。

ハイレベルな試合であると同時に、これがJ1最下位のチームの試合なのかと唖然としてしまいました。

サガン鳥栖は負けはしたものの、エンターテインメントとして非常に面白くエキサイティングなサッカーを見せてくれました。サポーターも勝ちに行くために必死に声援を送り続けていましたし、チームが厳しくなるかもしれないというタイミングで爆心地が「ドンッ」と響くような声量でチームを後押ししている光景は印象的でした。これは福岡とはスタジアムの構造上の違いとなってくるはずですが、それでもチームが攻めあがるときのプレースピードの速さ、それに付いていくサポーターの声量を生で観ていると、「またスタジアムに行ってみたい」とさえ思うようになることは自然だと思いました。

それなのにも関わらず、サガン鳥栖のサポーターは怒っているのです。

エンターテインメントとしてめちゃくちゃ質の高い試合を見せてくれたのにも関わらず怒っているのです。僕の応援しているクラブはバックパスをしてゴールキーパーが前に蹴って取られるというサッカーをやっているので、これだけの試合を観られるなんて幸せあだろうと思ったのですが、

めちゃくちゃ怒っているのです。

スタジアムでも声を荒げる人もいました、そしてツイッターで観ても批判の声は大きく僕の目にも入ってきました。

なんというか、逆にこれだけの試合に満足できないなんて不幸なのかもしれないと本質から逸れたことを思ったりもしましたが、うちの応援しているクラブとの差を歴然と見せつけられた気がしました。

アビスパ福岡が進むべき道

正直に言って、最近のアビスパ福岡は少し迷走しているように見えます。

もちろん個人レベルで観ると、荒れ狂ったようにゴール裏で飛び跳ねる若者が先陣を切り、それに負けるものかとベテランの方々もゴール裏を爆発的に盛り上げていることは見ていて本当に胸がわくわくします。

ツイッターを観ていても、めちゃくちゃ面白い創作物を世に発表する人もいれば、とてつもない経験と才能を余すことなす発揮する人もいたり、王国民の皆さんも絶えずアビスパ福岡を応援してくれていますし、それをとても楽しんで人生の生きがいの一つとして取り入れてくれるような方が増えていることに嬉しさを感じていたりします。

しかし、一方では井原現柏レイソルヘッドコーチ、昨年の途中に解雇されたトゥーリオ・デ・メロ元選手、衝撃の期限付き移籍を見せた現在サガン鳥栖に所属する俺たちの岩下兄貴ののぼりが我らのホームに向かうための道中である空港に飾られてあったり、最新のポスターが張られていない飲食店などをよく見かけます。

クラブが発売するグッズでも、「一体誰がターゲットなのでしょうか?」というようなグッズが散乱しているのではないかと思っています。一体「アビスパ部」とは急に出てきたものの、何だったのかといつも疑問に思っています。デザインが可愛いからと完売したようですが、急に出てきた謎のアビスパ部ジャージを販売して、ホームの試合で2試合連続でパーカーを発売して山のように売れ残っている光景を試合後に見た時に、何か悲しいものを感じました。

この会場に来て、初めてサッカーを観に来た人は

「またサッカーを観に来たい!次の試合はいつ?」

と言ってくれるのか不安でたまりません。

ツイッターを観ていると地獄のようにつまらない試合をした時でも、一緒に来た友達がまた来たいと言ってくれたという報告は見かけますが、前節の来場者数が5,000人を記録したことから、そう思っていない人が多数だったと推測することができます。

チケット代金や諸々を込めて数千円を払ってまで来たいと思ってもらえる会場作りはできているのでしょうか。そういう雰囲気をスタジアムで作ることができているでしょうか。

僕はもしかするとまだまだ足りていないのではないかと駅前不動産スタジアムに行って思いました。そう考えると、とても良い勉強になったので、ぜひこの記事を観た皆さんも一度「エンターテインメントとしてどれくらいの差をつけられているか」を観に行ってみるといいかもしれません。

福岡の県民性が・・・という議論はよく見かけますが、それ以前の問題だと思っています。サッカーに全然興味のない人が、アビスパ福岡に対してお金を使って観に行ってみようという動機は現在非常に乏しいのではないかと思います。

じゃあどうするかの具体策

アビスパ福岡株式会社さんのことは僕が何かを言ったところで内部のことは分かりませんし、特に何も生まれないと思うので、サポーターという立場からできる具体策を提案してみようと思います。

サポーターとして出来ることはもちろん限られていますので、結論としては内部と外部を繋ぐような役割を果たしていく「サポーター+α」のような役割を担当できればいいなあと思っています。

というのも、サポーターという存在はお金を払っているのでクラブからすると顧客という立ち位置になります。しかし、サポーターもクラブがあることで生きがいとなり、時にはコミュニティーとして、時には教育・育成機関として、人生をより豊かにしてもらっている立場にあります。つまり、「応援していると同時に、応援させてもらっている」のです。クラブで働いている人がいるからクラブは存続しているのであって、そういった給料もそこまで高くない中でもクラブ愛を持って仕事をしてくれる人がいるからこそ、僕たちは愛すべきチームを応援することができているので「応援させてもらっている立場」という呼び方は語弊があるようで、僕はその意識があったりします。

ということは、サポーターはお金を払っている立場でありながら、ただクラブから何か利益を享受するだけではなく、クラブの為になることに取り組んでいくべきはないでしょうか。

「どうしてお金を払ってるのに働かなきゃいけないんだ」と思うのが自然です。普通のお金の流れなら、その理屈が正論中の正論です。しかし、この特殊なスポーツという世界では、本当にチームを支えたいという「サポーター」という言葉通りの意味で受け止めれば、顧客であるはずの僕たちさえもチームの為に自信の持つリソースを割いていく必要があるのではないかなあと自分では思っています。強制なんてとんでもない、僕がそうしたいだけです。

そのリソースの割き方はその人の考え方次第です。シンプルにチームにお金を落とすために少し高いチケットを買う、グッズを買う、クラブのスポンサーになるという形で資金的リソースを割いてもよいでしょう。

他にはチームのユニフォームを着て善行に励む、チームの名前をより多くの人に知って貰うべくマラソンでユニフォームを着用する、インターネットで初めてくる人のハードルを下げるというような善意的なリソースの割き方も素晴らしいですね。

試合に来る、アウェイの試合に行く、ゴール裏で声援を送る、スタンドで拍手をする、それだけでも立派な時間的・体力的なリソースをチームに貢献できていると思います。本当にそんなレベルでも「サポーター+α」なのです。

僕がこれからしてみようと思っていることを一覧にしてみました。

試合終了後のスタジアム周辺のゴミ拾い(最近ツイッター上で話題になっているのが気になったので地域の方に好かれるクラブに少しでも近づけるため)
佐世保からアビウォーク〈佐世保からレベスタまで歩く〉(より多くの人にアビスパ福岡の存在やスポンサーを知って貰うことに加えて、試合の存在に気付いてもらうということを目的に)
少しでも周りの友達を巻き込んでスタジアムに連れていく(やはり行かないと分からないスタジアムの魅力に気付いてもらいたい、クソ試合はやめてください)
応援集団がチャンスシーンで盛り上げてくれる時にはメインスタンドで手拍子で乗る(周りの人たちが手拍子をするハードルを下げてスタジアムの一体感を出すため)

こんなところです。

せっかくサポーターをしているのであれば、自分なりの色々な「+α」をしていけばいいと思います。

僕はこの駅前不動産スタジアムに行った衝撃とショックが本当に大きかったので、この差をこれ以上広げないため、さらにはこの差を埋めるためにやれることをやろうと思います。

このようなボトムアップの形ではまとまりがなく、様々な行動が点在してしまうからこそ大きな一本筋になりにくいので、公式が指揮をとってトップダウンの形で協力を要請する形をとればさらに個性豊かなアビスパ福岡サポーターの皆さんの力を借りることができるのではないかと思っています。

開幕前に行った「#博多の森開幕」の企画のように、公式がサポーターをもっと生かす企画には僕も全力で乗っかりますので、博多の森開幕の時のように

・自撮りをしようにも重要な試合情報が腹の位置にあって自然な自撮りができない
・一週間前に発表+参加できる人数も急遽天神に来られる人といった限定的なやり方ではなく遠方に住む人も参加がしやすい形を採用
・公式がリツイートなどをして盛り上げる(これマジでやれ)
・公式が飽きるな
・公式が一週間ツイートしろと言ったくせに、お前がしないって何様だ
・トレーナー貰ったのにツイートしてなかった人いたぞ

というような課題もありました(途中は純粋な悪口になってしまっていましたが)。これらを改善したバージョン2を楽しみにしています。

鳥栖の記事だと思って開いた鳥栖サポーターの皆さん、途中でくるりと回れ右をしてアビスパの話に移ってごめんなさい。許してください、なんでもしますから。

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