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軽井沢じゃなくて尼崎

こんばんナマステ💙❤️🖤💛💚Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ⭐️

先週木曜日10月13日に起きたクラブツーリズム(以下、クラツー)さんのバス=ツアー事故の件、

ひとまずドライヴァーの力量に問題がある可能性を書いたけれど、

その後は案の定、いつものダンピング叩きが始まった。

価格競争だったり、ドライヴァーの過酷な労働環境だったりはなくはないだろう。ましてコロナ禍で旅行会社もバス会社も疲弊していて藁にも縋る思いもあっただろうし。

文春砲も着弾したけど、そもそも事故を起こすバス会社はきっと労働環境が悪いに違いない、というステレオタイプのもとに取材してる。

だけど、富士スバルラインではなくふじあざみラインを使ったのが通行料金のせい、っていうのは言いがかり。

飯能駅から富士スバルラインを経由して行くスバルライン五合目とふじあざみラインを経由して行く須走口五合目までの所要時間はほとんど変わらないのに対して、

両五合目から沼津へ行く時間はスバルライン五合目の方が須走口五合目より30分も長い。

単純に富士山の五合目へ行く、という目的を果たしてから沼津へ行くという場合、ふじあざみラインの方が合理的なの。通行料金がどーのこーのではない。

ということで、当日のツアー行程のアイテナリィを見てみたいと思う。

車庫を6:28に出庫して狭山市駅を7:30に出発している。

美杉観光バスは埼玉県行田市や東京都板橋区にも営業所があり、板橋区は埼玉県に隣接しているので埼玉県出発ツアーの配車権を持つけれども、位置的に考えて埼玉県飯能市美杉台にある本社を兼ねた車庫から出発しているはず。

美杉台から狭山市駅だと40分程度なので、7:10前後には到着しており、ここでは問題なく定刻前後には出発していると思う。

前後というのは、ツアーの場合は当地出発予定のお客様が全員揃えば定刻より前に出発するし、逆に遅刻するお客様がいる場合5分程度は待つから。

ちなみに高速乗合バスは全員揃おうと揃わなかろうと定刻出発が原理原則。電車や飛行機と同じ公共交通機関だから。

発展途上国には時刻表がなくて満席になったら出発するバス、乗合ワゴンといったものがあるけど、日本では認められない。それが本当にいいことなのか、海外でこういうの乗ってるときはいつも考えてた。

狭山市駅の次は入間市駅を7:50発で、20分しかないからかなりタイト。15分くらいはかかるからね。

ここに関しては遅れてくるお客様を待たないと思う。どうしてかというと、その次の飯能駅とは西武池袋線に乗れば約10分で到着する。出発時間に5分遅れてくるお客様を待つなら、そのお客様を飯能駅に誘導した方が早いためここでは待たない。

飯能駅は8:20発。これも30分というのはギリギリの時間。尚更、入間市駅では遅れてくるお客様はお待ちしないだろうね。

この先のスケジュールはこうなっている。

ふじあざみラインの車窓を楽しんで富士山須走口五合目で50分間の自由散策をして10:40頃に出るという。

ということは9:50頃に須走口五合目に着いてるわけで、飯能駅から須走口五合目までは1時間30分で走破する必要がある。

飯能駅から圏央道青梅ICまでは下道を走るのが最速とみられるけど、渋滞がなくても2時間程度はかかる。

どーゆーこと😨

そして須走口五合目を10:40頃に出発したバスは、沼津で50分間食事をして12:10頃に出発する。つまり沼津到着は11:20頃で須走口五合目からは40分ということになる。

食事をする場所は多分ここ。万葉の湯が経営してるドライヴ=インで沼津ICを下りてすぐのところにある。

須走口五合目からは渋滞なしで40分はかなりギリギリ。ふじあざみラインを慎重に下りていくことも考えると1時間はほしい。

今度は三津浜に向かい、内浦湾のクルーズをやる。約25分と案内しているのだけど、このツアーでは15~20分の乗船時間となっていて明らかに短い。

要するにこれクラツーさんで貸し切ってるんだってことがわかる。

上記のサイトに載っているなかで、どの船を使っているのかはわかりかねるけど、2~5台のバス=ツアーのお客様をまとめて載せているのは確か。

当該バスツアーは狭山市・入間市・飯能出発だけれど、同じツアー=タイトルで少なくとも新都心・武蔵浦和出発、小山・栃木出発、所沢・川越出発があることはネット検索から調べがつき、

これを書いてる時点で新都心・武蔵浦和出発のものしかアイテナリィを見ることができないんだけど、沼津の昼食からクルーズまでの時間はまったく同じに設定されている。

さて、12:10頃に竜宮海鮮市場を出て、三津浜で15~20分のクルーズを終えて出発する時刻が13:40頃だから船に乗るのに1時間10~15分くらいということになる。

竜宮海鮮市場から三津浜までは空いてて30分、混んでて1時間くらいなので、ここである程度時間調整ができる算段なんだね。

ここで答え合わせ。

バスはふじあざみラインで11:10頃に横転しており、それは須走口五合目から10分程度下ったところというから11:00頃に須走口五合目を出発している。

このことから須走口五合目には10:10頃に到着していることがわかり、飯能駅を定刻に出ているとすれば1時間50分かけている。

定刻からは20分押しだけど、これは定刻が間違っているのでそもそもこんなものだと思う。

だけど、これドライヴァーと添乗員にはかなり心理的な負担になったと思う。

このまま事故を起こさず走ったとしたら竜宮海鮮市場に着くのは11:50頃かな。慎重に下りてきて40分で走るのは難しいので、10分押しと計算。

12:40に竜宮海鮮市場を出発できたとして、道が空いてたら13:10頃に三津浜に着けるけど、混んだら13:40頃になる。

クラツーさんで船を貸し切っているのだから、この程度の遅れなら許容されなきゃいけないけれど、ドライヴァーと添乗員にはプレッシャー。

添乗員は須走口五合目を出るとき、つい「遅れてるので急いでください」とか言っちゃった可能性がある。

添乗員は旅程の進行状況を、旅行会社の担当者に逐一報告するんだけど、担当者から「船に遅れないように」みたいなお達しがいった可能性もある。

あかんて、それは。

これは旅程の組み方がそもそも間違ってるよ。

まず、飯能駅と入間市駅は同じ西武池袋線にあってしかも近いのだから、両方でお客様を拾う意義が見出せない。入間市駅と狭山市駅が近いことを考えると、飯能駅での出発設定は削るべきだった。

そして入間市駅の方が車庫に近く、車庫から狭山市駅に行くのに入間市駅の近くを通ることを思えば、入間市駅で先にお客様を拾うべき。

車庫から入間市駅まで約30分、入間市駅から狭山市駅は約15分。

狭山市駅から須走口五合目までは空いてて1時間50分。

須走口五合目から竜宮海鮮市場までは安全のために1時間見ておきたい。

竜宮海鮮市場12:10出発、三津浜でのクルーズ乗船を終えて13:40出発という設定は残しておくとすると、

竜宮海鮮市場11:20着とすると須走口五合目は10:20発、

須走口五合目着は9:30になるから、狭山市駅出発は7:30、入間市駅出発は7:10としておいた。

7:00出発だと6時台に入間市駅に着いていなければいけず、お客様としては早すぎると感じてしまう。7:10発なら7:00頃に入間市駅に着いていればいいから心理的な負担が減る。ツアー=プランニングは心理戦なの。

車庫を6:30頃に出発することは変わらないから、出発場所を1つ削った分だけ安全と定時性確保のための冗長性を持たせることができるってわけ。

ツアー=プランニングの初心者はついつい、1日のなかに色々盛り込みたくなってくるのね。

だけど本当は第一にお客様の気持ちになって、第二に添乗員やドライヴァー、バス=ガイドの気持ちになって作んなきゃいけない。

自分の場合は、単純に自分の行きたいなと思うツアーしか作らない、というより作れない。

だから、旅行業界に向いてないと言われたことが何度もある。

んで、クラツーさんや●●●●●社さん(ご想像にお任せします)は詰め込みツアーを作ることで有名。

今までそれは自分としては好きじゃないし、ファスト=ツアーと呼んできたけど、限られた時間のなかで色んな所をつまみ食いしたい人もいる以上、求めている人と提供している旅行会社のニーズは合致しているんだったらいいのかな、くらいには思ってきた。実際リピーター多いでしょ。

北インドのゴールデン=トライアングル=ツアーはそのノリでやってしまうと過酷過ぎてリピーターにならないから批判しているわけで、国内日帰りならどうぞご勝手に、添乗員さんはかわいそうね、くらいの感じではあった。

だけど、その詰め込みがツアーの安全性に響いていたんだとしたらそれは話は別。あえて悪い言い方すれば殺人ツアーだよ、それは。

これに近いのは2005年に兵庫県尼崎市で起きた福知山線脱線事故だよ。

あの事故の背景を思い出してほしい。

事故を起こしたのは宝塚発同志社前行きで、尼崎で神戸方面→大阪・京都方面の電車と隣同士のホームで接続するために遅れが許されなかった。

また、ダイヤが乱れるとそのドライヴァーに対して日勤教育という罰が下された。恐怖による支配はプレッシャーを生むだけ。スポーツでもそういうチームは短期的に強くなる可能性はあるけど、長期的には弱くなる。

JR西日本は競合する私鉄への対抗策として、本来定時性や安全性を確保するために必要なバッファの時間(余裕時分)を削った。

極めつけは阪急に対抗するために中山寺駅に快速を追加停車させたのに対して走行速度が上がってないのにもかかわらず所要時間は変わらなかった。実際には30秒遅くなったけど分単位では表に出ないようにした。1駅追加停車で30秒しか遅くならないのは、明らかにバッファを削った結果。

そしてドライヴァーは出だしで遅延が起きていたためパニックになり、途中駅でオーヴァー=ランを繰り返した挙句、カーヴに速度超過で突っ込んで大惨事を招くことになった。

2013年にはスペインの聖地サンティアゴ=デ=コンポステーラへ向かう列車が速度超過で脱線して大事故になったけれど、これも祝祭に向けて超満員で遅れまくっていた列車で起きたことで、やはり遅れを取り戻そうと無理をした可能性がある。(特殊な構造ゆえに信号機を察知できなかったなどの欠陥もあるのだけど)

無理しちゃダメなんだってば。

鉄道には回復運転というものがあって、遅れた時はバッファ時間を使って本来のスピードを出すのね。でもそれは回復できる度合いは決まってるの。

ツアー=プランニングと旅程管理にしても同じ。工夫次第で遅れを回復できる場合とできない場合がある。

例えば駐車場から見どころまではゆっくり歩くと10分かかります。バスは11:30に必ず出発させていただきますので、見どころを遅くても11:15には必ず出発してください。というようなアナウンスを立ち寄り先の手前できちんとしておくことで、お客様が遅れて戻ってくることを防げるのね。

だけど、新幹線の時刻に間に合わないとか、夕陽に間に合わないとか、施設の最終入場時刻に間に合わないとか、そういう特段の事情がない限りは、立ち寄り先の滞在時間を減らすとか、立ち寄り先自体を削るなんてことはやっちゃいけないし、バスに違法なスピードを出させる、なんてことはどんな理由があろうとやっちゃいけないし、それは旅程管理ではない。

今回のバス事故の原因はまだわかんないよ。

だけど、タイト過ぎるアイテナリィとそれによって案の定生じた遅れがドライヴァーと添乗員に過度なプレッシャーを与えた可能性は否定できない。

ドライヴァーさんが常に命を預かっている仕事であることは当然だけど、我々旅行屋だって一歩間違えば人を殺す仕事をしているということは肝に銘じないと。

無事に解散場所に着く。これ以上のツアー=プランニングや旅程管理はどこにも存在しないんだよ。

こういう告発こそ文春砲に期待したいよ。

それじゃあバイバイナマステ💙❤️🖤💛💚暑寒煮切でしたっ✨











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