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世界遺産から仰天計画まで🚞インドの山岳鉄道🇮🇳③世界遺産ダージリン=ヒマラヤ鉄道

はじめに

月曜日に #Clubhouse#インドの衝撃 ( #インド大学 )』で喋った #インド山岳鉄道 のはなし、今日からやっとインドの話に入っていっくよ〜🇮🇳

ここまでの2回はこちら💜

音声版はこちら❗️(約49分)

話の流れは、 #山岳鉄道 の概論→インド山岳鉄道の概説→インド山岳鉄道の未来、で今日からインド山岳鉄道の概説が始まるということなんだけど、

ここまで2日間かけてインドと関係のない山岳鉄道の話を書いてきたのは、今日からの話を理解しやすくするため。

読んでくれた人も、ここから先の話を読んで意味がイマイチわからないところがあれば、昨日までの話を読み返してみてほしい。隣のタブにそれを置いとけばいいかもね。

ではでは早速、出発進行💨💨💨

インドは世界に冠たる山岳鉄道大国

インドには山岳鉄道と呼ばれてる路線がひとまず5つあって、しかもそのうちの3つは #世界遺産 に登録されている。

山岳鉄道の世界遺産自体がインド以外では、1998年に世界初の鉄道世界遺産に登録されたオーストリアの #ゼメリング鉄道 🇦🇹と、

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2008年に登録された #レーティッシュ鉄道 🇨🇭🇮🇹、

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それに昨年世界遺産登録された #イラン縦貫鉄道 🇮🇷が一応入るのかな。

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今回はインドの山岳鉄道特集ということで5つの路線を概説していくことにする。

これに限らずインド🇮🇳の鉄道のダイヤって流動的なことも多いから、自分で実際乗る時は鵜呑みにせずきちんと調べてね。

今日はそのうち1路線について書いていく。勿体ぶってるわけではなく、分量がまあまあ多いのよ。このnoteだけ書いてるわけじゃないので😅

誰かが毎日万単位で記事に対して寄付してくれたらこれを専業にできるけど😜

世界遺産ダージリン=ヒマラヤ鉄道について

今日取り上げていくのは、インドを代表する山岳鉄道として、インドや鉄道にそんなに詳しくない人でももしかしたら聞いたことあるかもしれない、 #ダージリンヒマラヤ鉄道 ( #DarjeelingHimalayanRailway )‼️

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現地では略して #DHR と呼ぶから、本稿でもそれを使おうと思う。

ちなみに和訳するとヒマラヤンではなくヒマラヤなんだよね。日本語は名詞を並べるだけで「〜の」って意味がついてしまうってことかな。

インドの逆三角形の右上、ウエスト=ベンガル州を走る鉄道で、始発駅はシリグリという街にある #ニュージャルパイグリ (標高114m)、終着駅は #ダージリン にある同名の駅(標高2,073m)、高低差1,959mを88kmで結ぶ路線。

ダージリンっていえばもちろん紅茶でめちゃめちゃ有名。noteでもダージリンで検索するとほぼ紅茶の話で、たまーにダージリン旅行記が出てくる。その多くはDHRに部分的でも乗ってるよね。

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北緯30度台の日本ではお茶って静岡とか鹿児島とか温暖な所で栽培されてるイメージだけど、北緯10〜20度台のインドでは涼しい高地で栽培される。それが山岳鉄道とも関係してくることになる。

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ダージリンはヒマラヤ山脈のなかにある高地で、紅茶の栽培と避暑地として賑わっていた。というか今もそうなんだけども。

なので、紅茶の輸送と避暑地へのアクセスを目的に1881年にDHRが建設されることになる。

アジアで初めての山岳鉄道で、1872年に新橋(現在の汐留)から横濱(現在の桜木町)まで日本初の鉄道路線が開通した9年後ということになる。

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ちなみにアジア初の鉄道路線もインドで、ボンベイ(現在のムンバイ)と近郊のターネーを結んだのが1853年のことだった。

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何故かDHRを語るにあたって日本では世界最古の山岳鉄道というデマが流布されている。アジアの一員として誇りたい気持ちは嬉しいんだけど、残念ながら世界は広い。

恐らくアメリカの #ワシントン山コグ鉄道 🇺🇸の1868年が最古なのかな。この路線こそ世界遺産の価値がある気がするんだけど、アメリカは鉄道を世界遺産に推薦しようなんて思わないのかもね。

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一昨日書いた通り、山岳鉄道自体に厳密な定義がないから、それよりも早くそれなりの山岳地帯を走る路線はあったんだろうけど、ひとまずDHRは米国のそれと比較してもそんなに時は経っていない。

これに限らず、英領インドって欧米の最新技術がいち早く導入されて「アジア初」であるものが矢鱈多くて、ある意味でアジアの産業発展における日本のライバルだったんだなぁと思うことが結構ある。そんな時系列を頭に入れておいてほしい。

何はともあれ1999年にユネスコ世界遺産に文化遺産として登録された。前年のゼメリング鉄道🇦🇹に次いで鉄道としては2例目。

それまでのインドの文化遺産はぜーんぶ遺跡か建造物。同じ山岳鉄道のゼメリング鉄道🇦🇹が推薦されたのを見て、もしかしてDHRもいけるんちゃう❓って思ったんだろうね。

世界遺産ダージリン=ヒマラヤ鉄道の特徴

ではでは、DHRの特徴を見ていこうと思う。

まずレールの幅は610㎜しかない #ナローゲージ (特殊狭軌)。そのため車両もめちゃ小さくてかわいいから、 #トイトレイン と呼ばれている。というかインドの山岳鉄道は全部トイ=トレインって呼ばれてるんだけども。

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参考までに世界の鉄道の6割は1,435㎜のスタンダード=ゲージ(標準軌)、日本の大半は1,067㎜のケープ=ゲージ、インドの大半は1,676㎜のインディア=ゲージなので、比較対象を見れば610㎜というのがいかに狭いかわかると思う。

このへんの解説はこちらでもしてるので宜しければ聴いてみてね💙(約40分)

最急勾配は56‰、 #ループ線 5ヶ所、 #スイッチバック 7ヶ所。何のことだっけって思った方は昨日の記事を読んでね。

そして、滑落を防ぐために線路に砂を撒くサンド=マンがデッキに待機している。普通は極力そういうものを取り除いて、円滑に走れるようにするものだけど、DHRは真逆で少しでも摩擦を増やしたいってわけ。

現在はディーゼル機関車が主流だけど、観光用に『きかんしゃトーマス』そっくりのカラーリングをした蒸気機関車も観光用に走っている。というかみんな蒸気機関車の写真ばっかり撮るから、その印象ばかりがこびりついてしまう🚂

でも基本はこっちよ👇

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みんな大好きリアルきかんしゃトーマス

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観光用にきかんしゃトーマスをガチで走らせている大井川鐵道とは茶畑というところでもダージリンと共通点あるんだよね。

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日本人にダージリンを紹介する時は #北インドの川根 、北インド人に川根を紹介する時は日本のダージリンとでも言っておけばいいのかな。

世界遺産ダージリン=ヒマラヤ鉄道の見どころ

始発駅のニュー=ジャルパイグリはシリグリの街の南にあり、インド北東部とインド全土を繋ぐだけでなく、バングラデシュ🇧🇩から国際列車も走る。鉄道はないけど、シッキム州やネパール🇳🇵、ブータン🇧🇹の人も行き交う超国際的なターミナル。分離独立後、東パキスタン(現バングラデシュ)を通てアッサム方面へ行くルートが自由に使えなくなってから交通の要衝化した。

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当時のアッサム方面の路線は1,000㎜のメーター=ゲージで、シリグリ=ジャンクション駅をターミナルにしていたんだけど、インディア=ゲージの路線がシリグリに伸びてくるにあたってニュー=ジャルパイグリ駅がターミナルになった。

しばらく南北のターミナルが鼎立していたんだけど、アッサム方面への路線がインディア=ゲージに改められることになり、ニュー=ジャルパイグリにターミナルが統一されることになる。

これに伴って、シリグリ中心部にあるシリグリ=タウン駅をターミナルにしていたDHRもニュー=ジャルパイグリに乗り入れることになった。なお、DHRについてはインディア=ゲージにはならずナロー=ゲージのままになった。ニュー=ジャルパイグリでは独立したホームがちょこんと置かれていてローカル線感がすごい。

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ニュー=ジャルパイグリからはかつての始発駅シリグリ=タウン、その次のシリグリ=ジャンクションまでの2駅はシリグリ市街地を走る。アッサム方面の路線と共用するけどレールの幅が違うため、異なるレールが単線ずつ敷かれているところもあれば、単線分の橋を渡るためにレールを3本敷いて双方の列車走行を可能にしたデュアル=ゲージ(三線軌条)の区間もある。秋田新幹線の大曲ー秋田間のような趣きだけど、あちらは1,435㎜と1,067㎜。こちらは1,676㎜と610㎜で約2.5倍幅が違うから誰でもわかりやすい。

アッサム方面の線路と分かれて、3駅目のスクナを過ぎると #マハナンダ野生動物保護区 の森の中を走るため、動物や野鳥の姿はないか注意深く見てほしい。知らないと森の中を走ってるなーで終わってしまうけど、ここにわざわざサファリ列車まで走るほどなのよ。

4駅目のラントンを過ぎるといよいよ山道となり、ループ線やスイッチバックが続く。風光明媚な区間もあるけれど、市街化された区間を路面電車のように走るところもあり、極めて低速のため駅のないところ、自宅や職場、学校の前を飛び乗り・飛び降り・タダ乗りしている地元民を見かける。

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また、インドの他とは異質なチベット仏教のお寺も見かけるようになるだろう。10駅目のクルセオンや13駅目にして最後の途中駅グームには簡単なDHRの資料館がある。

終点ダージリンの手前にある #バダシアループ は撮影スポットとして有名だが、一般列車は特に徐行もせず(元々激遅だが)抜けていく。観光列車ならグームで20分、バタシア=ループで10分の停車サーヴィスがあり、資料館や眺望を楽しむことができる。

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ニュー=ジャルパイグリから乗り通してきた場合、約7時間半を経て終点ダージリンに到着する。高原都市なので下界と比べて随分涼しく(季節によっては非常に寒く)感じることだろう。

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これは『インドの衝撃』のリスナーに教えてもらったことだけど、1992年公開のヒンディー語映画『 #ラジュー出世する 』にDHRが出てくるらしい。というかあらすじに「ダージリンの大学を卒業して」ってあるわな。

ちなみに邦題がついてるくらいなので日本で1997年に公開されたんだけど、インド映画としては史上3番目なんだって。なおこの次の来日インド映画が『ムトゥ踊るマハラジャ』でここからはそれなりに日本にインド映画が上陸してくることになる。

その2年後にDHRが世界遺産になるわけだから、「あー、あれか❗️」って思った日本人は多いのかな。

2007年公開の『 #ダージリン急行 (The Darjeeling Limited)』ってアメリカ映画もあるのね。日本人的にはこっちの方が観たって人多いんだろうな。ただ、ロケ地は北東のウエスト=ベンガルではなく北西のラジャスターンなんだけど💦

ちなみにDarjeeling Limitedなんて列車はインドにはない。Limitedってアメリカ英語だからね。これを真に受けたのが日本の特急列車の訳語Limited Expressだけれど、大半の外国人にとっては❓だよね。今のJRでは事実上急行列車は廃止されたのだから、Expressでいい。新幹線はSuper Expressとアナウンスしてるんだから整合性もある。

Darjeeling Limitedに一番近いインドの列車は、この後書くDarjeeling Mail。Mailは英国的な言い方で急行列車を指す。情報伝達を早めるために、郵便列車は一般の旅客列車よりも速く走るために小さい駅を通過したのが始まり。インドでは結構なんとかメイルという列車が走ってるけど、その後でなんちゃらエクスプレスが次々出まくったので今では遅い部類に入る。

ダージリン=ヒマラヤ鉄道のダイヤ

地元民が乗る一般列車はパッセンジャーと呼ばれるディーゼル機関車の普通列車のみで、全線通し運転とクルセオンーダージリン間の区間運転がそれぞれ毎日1往復ずつ走るため、クルセオン以北では双方向での通勤通学が可能。

全線通し運転はダージリン行きがニュー=ジャルパイグリ10:00発ダージリン17:20着、ニュー=ジャルパイグリ行きがダージリン9:00発ニュー=ジャルパイグリ16:15着となっている。

またコルカタの都心にあるシアルダー駅とニュー=ジャルパイグリを結ぶ夜行列車「ダージリン=メイル」と接続しており、「ダージリン=メイル」が遅れた場合パッセンジャーは接続待ちをする。多くの列車が発着するコルカタのメイン=ターミナル、ハウラー駅発着でないことに注意。

観光列車は4種類が走り、観光客に一番よく知られているのがダージリンからグームまでひと駅を約2時間かけて往復してダージリンに戻る「ジョイライド」で、蒸気機関車とディーゼル機関車が毎日4便ずつ、あわせて8便が運行されている。

「レッド=パンダ」は蒸気機関車で、クルセオン14:00発ダージリン17:45着が火曜・木曜・土曜、ダージリン9:15発クルセオン12:30着が日曜・火曜・木曜、クルセオンからひと駅のマハナディまでが土曜・日曜の11:15発で走る。以前はニュー=ジャルパイグリ発のパッセンジャーの時刻が早かったためクルセオンで「レッド=パンダ」に乗り継げたけど、現在は乗り継げなくなっている。これは元に戻してほしい。また、「レッド=パンダ」自体の運行が流動的。

「ヒム=カニャ=エクスプレス」は土曜・日曜のみ運転されるディーゼル機関車で、ダージリン8:30発クルセオン11:00着とクルセオン13:15発ダージリン16:05着となっている。ダージリンから乗れば、クルセオンでニュー=ジャルパイグリ行きのパッセンジャーが来るまで30分ほど時間ができるので資料館を見ることはできる。

「スチーム=ジャングル=ティー=サファリ」はシリグリ=ジャンクション14:45発で、ラントンまでを往復してマハナンダ野生動物保護区のなかで動物を捜す蒸気機関車で毎日運行している。ニュー=ジャルパイグリには乗り入れないので注意。

総じて停車時間を含めた平均速度は10km/hほどで死ぬほど遅い。砂撒いてるくらいだしね。したがって一般列車は過疎運転で、観光列車にとても力を入れている。

並行して走るバスはシリグリとダージリンを3〜4時間で結ぶから、単純な都市間移動では勝負にならないのだ。

世界遺産ダージリン=ヒマラヤ鉄道へのアクセス

シリグリ近郊にある #バッグドグラ空港 が玄関口で、ダージリンには空港がないのでやはりバッグドグラが最寄りになる。

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インド各地から航空便が発着する比較的大きな空港で、現在国際便拡充に向けた拡張も行われている。流石に日本からの直行便はできないだろうけど、バンコク線が出てくれると日本から行きやすくなる。

バッグドグラ空港は夜着く便がなく恐らく夜間駐機ができない空港なんだと思う。そのため、日本からはどーしたって翌日にならないとバッグドグラには辿り着けない。

また、コルカタからダージリン=メイルに乗るのも日本出発当日では難しい。

ダージリンからの「ジョイライド」なら日本出発翌日に乗れないことはないけど、ニュー=ジャルパイグリから全線通しにガッツリ乗りたければ最速でも翌々日になる。

ダージリンからは更に北上してシッキム州へ向かう旅行者が多い。以前はシッキム州に空港がなく同じ道を戻ってこなければならなかったけど、2018年にパキョン空港が開港して便利になった。

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現在、ニュー=ジャルパイグリからシッキム州ランポまで鉄道を建設中で、これができればシッキムからの行きはDHR、帰りは新線といった違った車窓を楽しむ旅もできるようになる。

おわりに

明日もインド山岳鉄道を深掘りしていくよ❗️

Clubhouse『インドの衝撃(インド大学)』では次回2月15日20:00〜、インドのスキー場☃️の話をしていくのでそっちもよろしく❄️❄️❄️

ってか、こっちの内容もそろそろ練らなきゃいけないのね💦







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