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世界遺産から仰天計画まで🚞インドの山岳鉄道🇮🇳④西ガーツ山脈の山岳鉄道

はじめに

ここまで3日間連続で書いてきている #インド山岳鉄道 の話、4日目を書いていきます‼️

ここまでの記事はこちら。

なお、今回の記事は先週月曜日に #Clubhouse#インドの衝撃 ( #インド大学 )』でしゃべった話が元で、そちら既にポッドキャストになっているので宜しければ聞いてみてくださいませ。(約49分)

全体的な流れは、 #山岳鉄道 の概論〜インド山岳鉄道について概説〜インド山岳鉄道の未来、

前回からはインド山岳鉄道の概説に突入して今回はその2回目。

前回、インドには山岳鉄道と呼ばれる路線が5つあると書いて、そのうち最も古く、最も著名な #ダージリンヒマラヤ鉄道 について取り上げたんだけど、今日は完成の時系列的には2つ目と4つ目を取り上げる。

なんで1つ飛ばすのかというと、分量のバランスの問題。 #世界遺産 登録されてるものとされてないものではインプットできる資料に差があるの。なので、今回と次回は世界遺産の山岳鉄道と世界遺産じゃない山岳鉄道をセットで書いていくことにする。Clubhouseの方はちゃんと順番に話してるよん。

ではでは、出発進行💨💨💨

ヒマラヤだけがインドの屋根じゃない

今回取り上げる山岳鉄道は世界遺産の #ニルギリ山岳鉄道 と世界遺産ではない #マテラン丘陵鉄道

このどちらも、ヒマラヤ山脈とは関係のないところを走っている。インドってヒマラヤ以外は平地中心みたいに思われてるけど、実は他にも山脈があって特に有名なのがマハラーシュトラ州からケーララ州まで西部を南北に貫く #西ガーツ山脈 。アラビア海の海岸線は平地が少ししかなくて、いきなり西ガーツ山脈になる。

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わざわざ西ってつけるくらいだから東ガーツ山脈もあって、インド亜大陸のかたちに沿って西ガーツ山脈とはVの字になっている。両ガーツ山脈のVの字に囲まれたのがデカン高原で、ベンガルールやハイデラバードがそこにある。

なぜ西ガーツ山脈が有名なのかというと自然遺産として2012年に世界遺産になったから。

その価値を簡単に書くと、西ガーツ山脈にはアフリカの動植物がたくさんいる。

どーしてかというとインド亜大陸は元々ユーラシアではなくアフリカと地続きの #コンドワナ大陸 という大陸だった。インドだけでなく南米も豪州も南極も一緒だった。それが1億3千万年前からアフリカと別れて旅に出る。そして5千万年前にユーラシアにドッキング。この時の衝突で隆起してできたのがヒマラヤ山脈。もちろん今でもプレートは動き続けていて、2015年にネパールで起きた大震災はこれが原因。これを機にネパール人がどんどん日本にやってくることになって、そこら中に「インネパ」ことインド・ネパール料理店ができる。

そんなことを3月1日20:00〜、Clubhouseで話すよん🇳🇵🇮🇳

だいぶ話のプレートが動いてしまったけれど💦、元がアフリカだから西ガーツ山脈にはアフリカの動植物が豊富にいて、アジアの動植物と混在する生物多様性がある。

西ガーツ山脈は自然遺産なのでニルギリ山岳鉄道やマテラン丘陵鉄道はもちろん含まれはしないけど、標高2,000m級の西ガーツ山脈があるからこそ2つの山岳鉄道が成り立つということを知ってほしい。

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世界遺産ニルギリ山岳鉄道について

では早速ニルギリ山岳鉄道( #NilgiriMountainRailway )について書いていこうと思う。例によって #NMR と略して書いていくことにする。

NMRはタミル=ナードゥ州南部の150万都市コインバトールにある #メットゥパラヤム 駅(標高326m)と #ウッティ にある同名の駅(標高2,200m)までの1,874mの高低差を46kmの道のりで結ぶ。まさに #急坂46 。ふと思ったのはもし延長があと2km長かったらNMR48になったんだろうか。

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ウッティは西ガーツ山脈の #ニルギリ丘陵 にある避暑地で、正式には #ウダガマンダラム というんだけど最早誰もがウッティと略して呼ぶ。

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#ニルギリ はダージリンやアッサムほどではないけど、紅茶の産地として有名で、インド3大紅茶のひとつ。ダージリン同様noteで「ニルギリ」と検索すると紅茶の話がほとんどになる。

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ニルギリはタミル語で「青い山」を指すので、英語でブルー=マウンテンとも言われるし、ニルギリ茶は「紅茶のブルー=マウンテン」ともいわれる。

分け入っても 分け入っても ニルギリ by 種田山頭火

ちなみに南インドは所謂コーヒー=ベルトに位置していて、愛国が持ち込んだ紅茶よりコーヒー☕️の方がずっと古くから栽培されていたし、人々もコーヒーをよく飲む。

日本の南インド料理店の大半が、インド人がやってても日本人がやっててもチャイはあってもコーヒーがないか、日本のどこにでもあるようなコーヒーなのがまったくもって不満。南インドのコーヒー文化が日本で知られずインドといえばチャイ、になってしまってる風潮に加担していることに気付いてないんだろうか。バスマティ=ライスの使用と並ぶ日本の南インド料理店の大罪だと思う。

とりあえず北は紅茶、南はコーヒーというのは是非とも知ってほしい。それでもイギリス人はニルギリの涼しさに目をつけて紅茶の栽培を始めた。

涼しいウッティは避暑地としても人気が出て、その輸送のために1899年に開通したのがNMR。というかダージリン、ニルギリを含めて5つのインド山岳鉄道のうち4つは涼を求めての敷設だったりもする。インドは猛暑だからもーしょーがない💦

先立つこと1999年に世界遺産になっていたダージリン=ヒマラヤ鉄道の拡大登録というかたちで2005年にDHRも世界遺産登録される。したがって世界遺産の物件名も「ダージリン・ヒマラヤ鉄道(Darjeeling Himalayan Railway)」から「 #インドの山岳鉄道群 (Mountain Railways of India)」に改められた。

世界遺産ニルギリ山岳鉄道の特徴

NMRは1,000㎜の #メーターゲージ が敷かれていて、インドの標準価格である1,676㎜のインディア=ゲージよりは狭い。ただしこれはダージリンと違って、急カーブを曲がりやすくしたり建設費を抑えたりすることが目的ではなく、その当時はマドラス(現在のチェンナイ)からメットゥパラヤムまでの鉄道もメーターゲージだった。

線路の幅は広ければ広いほどたくさんの人や物を運べるし速く走れる。だけどメーター=ゲージはそれなりの大量輸送もできるし、速度的にもまあまあ出せる。現在の最速はマレーシア国鉄の140km/h。だからメーター=ゲージ以上、1,435㎜のスタンダード=ゲージ未満の線路はナロー=ゲージ(特殊狭軌)ではなくミディアム=ゲージ(狭軌)と呼ばれて区別されるし、メーター=ゲージは東南アジアや欧州、南米、1,067㎜のケープ=ゲージは日本、台湾、豪州、南アフリカ共和国で今でも都市間輸送、通勤輸送に使われている。

英領インドにおいては現在のパキスタンはインディア=ゲージだったけれど、現在のインドとバングラデシュではインディア=ゲージとメーター=ゲージが混在していた。

バングラデシュではこの状況が今でもほぼ放置されていて、一部では共用できるようにレールを3本敷いたデュアル=ゲージ(三線軌条)が使われているけれども、

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インドでは分離独立時はインディア=ゲージとメーター=ゲージがほぼ拮抗していたけど、メーター=ゲージを積極的にインディア=ゲージに改めていった結果現在は94%にまで政策的に統一されてきている。

昨日のダージリン=ヒマラヤ鉄道でもシリグリにおいてこの話を書いたんだけど、チェンナイからメットゥパラヤムにおいてもそれは同じことで結果としてNMRがメーター=ゲージのまま取り残されたことになる。チェンナイ方面がメーター=ゲージだった90年代はチェンナイからウッティまで直通列車も走っていた。

このあたりの話は、こちらでもしてるのでどーぞ。(約40分)

また、NMRの非常に大きな特徴としてはメットゥパラヤムからクーヌールまでの区間ではインド最急83.3‰の勾配を越えるため、 #アプト式 #ラックレール の蒸気機関車🚂を連結する。

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観光列車としてはダージリンもそうだし、インドの色んなところで走っている蒸気機関車だけど、一般列車として走る蒸気機関車はインドでここだけのはず。蒸気機関車、ラック=レールともにインドでここだけ。

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一昨日書いたようにラック=レール、なかんずくアプト式は日本では1963年までの碓氷峠、現在では #大井川鐵道井川線 🇯🇵で使われているけれど、

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「昔碓氷峠でも使われてたのをご存知ですか❓今は静岡県の大井川にあるんですよ❗️」なんて説明してくれるインドの日本語ガイドはいないと思う。もし添乗員さんがこれを読んでたらしっかり説明してあげるとお客様みんな喜ぶと思うよ。

茶畑+蒸気機関車+アプト式。ニルギリはまさに「  #南インドの川根 」だし、南インド人に大井川を「日本のニルギリ」って紹介したらウケるはず。昨日、ダージリンの時にあえて「北インドの」って書いたのはニルギリのことがあったから。

なお、クーヌールからはディーゼル機関車に付け替えてウッティへ向かう。

世界遺産ニルギリ山岳鉄道の見どころ

NMRの始発駅メットゥパラヤムはコインバトールからの近郊電車が多数発着するが、NMRの列車が発着する朝と夕方は雰囲気が一変する。レールの幅が違うNMRは専用ホームが設けられているほか、駅構内にNMRの博物館がある。

メットゥパラヤムから次のクーヌールまではインド最急勾配83.3‰を登るためにアプト式ラック=レールの蒸気機関車を連結する。途中給水や #スイッチバック のために何度も旅客扱いをしない駅に停車するのも面白い。次の駅といっても約3時間半の長い道中になる。なお、登りの場合は客舎の後ろ(メットゥパラヤム寄り)に蒸気機関車を連結して、客車を押して登るかたちになる。

クーヌールでディーゼル機関車に付け替え、客車も増やす。この10分の停車時間で日本人は碓氷峠を登りきった軽井沢駅を思い出すんだろうか。クーヌールから先は本数もあるので、どうせならランチがてら列車を降りてしまって乗ってきた列車を見送るのもいい。

クーヌールから先はニルギリ丘陵の緑を楽しみながらの1時間の旅になる。決してスピードは速くないが、それでもクーヌールまでの道中に比べたら随分すんなり進むように感じるだろう。

1998年に公開されたヒンディー語映画『ディル=セ』のロケで使われ、NMRの屋根の上で「チャイヤチャイヤ」と歌うシーンは有名で、NMRの存在が北インドで一気に知れ渡ることになる。

このシャー=ルク=カーンって俳優は昨日ダージリンの時に取り上げた「ラジュー出世する」にも出てたので、山岳鉄道に縁があるというかなんというか。

ストーリー自体はアッサムに向かってるんだけど、たまたまロケに使われたのはNMRだった。

南インドの人が北インドの映画に興味を持つことはあまりないけど、

この映画はロケ地がタミルってこともあり、タミル語に翻訳された。

この映画が公開された翌年にダージリン=ヒマラヤ鉄道が世界遺産登録されたことを思うと、それならNMRもいけるんじゃないか、って機運が出てくる引き金になった可能性はある。

世界遺産ニルギリ山岳鉄道のダイヤ

普通列車パッセンジャーのみで、全線通し運行は毎日1往復、クーヌールからウッティまでは区間運行が3往復加わり4往復となる。また、酷暑で避暑需要が激増する4〜5月には全線通し運行が増発される。

全線通し運行はウッティ行きがメットゥパラヤム7:10発ウッティ11:15着。クーヌールには10:30に到着して機関車を付け替えて10:40に出発する。ウッティからメットゥパラヤムまでは距離的には全体の半分強だが、所要時間は全体の8割にもなる。メットゥパラヤム行きはウッティ発14:00でクーヌール15:05着、15:10発でメットゥパラヤム17:30着。下りの方が露骨に速い。

ちなみに例えば碓氷峠では廃止直前で登り18分、下り23分だったので、登るより安全に下る方が余程大変。登りの方が遅いというのはNMRの機関車はパワーが無さ過ぎるんだと思う。

チェンナイとメットゥパラヤムの間を結ぶ夜行快速急行「ニルギリSFエクスプレス」がメットゥパラヤムで全線通し運行と接続、余程遅れない限りはメットゥパラヤムでNMRの博物館を観る時間は充分取れる。

この列車は、チェンナイ方面がメーター=ゲージだった時代にチェンナイとウッティを直通していた列車の名残り。一昨日書いたようにスイスでは平地のスタンダード=ゲージと山岳鉄道のメーター=ゲージを直通できる車両を開発しており、NMRでも導入されるかもしれない。その時は83.3‰程度ならば、アプト式に頼らずチェンナイから来た機関車がそのまま登ってしまいそうだ。世界遺産としての価値をどう遺すかという議論になる。

世界遺産ニルギリ山岳鉄道へのアクセス

メットゥパラヤムの最寄りは #コインバトール空港 で、インド各地やシンガポールとの間に路線がある。このほか前出の「ニルギリSFエクスプレス」でチェンナイからアクセスしてもいい。

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ウッティはカルナータカ州境に近く、古都マイソールまで125km、州都ベンガルールまで280kmなのでベンガルールからのアクセスも悪くない。ウッティからマイソールまでは西ガーツ山脈の世界遺産に含まれるタミル=ナードゥ州のムドゥマライ、カルナータカ州のバンディプールの森の中を通る。

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さらにこの沿線は西ガーツ山脈を越えれば、ケーララ州となりコーチンなどへ抜ける旅行者も多い。

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チェンナイ、ベンガルールに日本からの直行便ができて一気に行きやすくなった。

マテラン丘陵鉄道について

マテラン丘陵鉄道( #MatheranHillRailway )は #マテラン登山鉄道 という意訳も普及しているのだけど、ここでは逐語訳とさせてもらう。というかこの先は例によって #MHR って書くんだけどさ。

ちなみにインド山岳鉄道全体をHill Trainっていうんだけどね。

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マハラーシュトラ州の #ネーラル (標高39m)から #マテラン (標高800m)の21kmを結び、西ガーツ山脈の一部を成す避暑地マテランへのアクセス路線としてインドの山岳鉄道としては4番目の1907年に開通した。

インド政府は世界遺産「インドの山岳鉄道群」への拡大登録を画策して2014年に暫定リストに掲載したのだけど、ユネスコからこれ以上路線を増やさぬよう勧告を受けてしまった。

というか一路線ずつチマチマやらずに箱推しできなかったのかなぁって。

マテラン丘陵鉄道の特徴

ダージリン=ヒマラヤ鉄道と同じインド最狭610㎜のナロー=ゲージが採用されているので、おもちゃ箱のような列車は小回りがきき路面電車並みの直角カーヴも難なく走れる。

マテランはそれほど高いところではないけど、50‰の急勾配を攀じ登る。1982年に蒸気機関車の運行は終了、ダージリン=ヒマラヤ鉄道の中古蒸気機関車を導入して観光促進という構想もあったけど実現していない。世界遺産になれなかったため集客力が弱いのは否めないよね💦

マテラン丘陵鉄道の見どころ

短距離ながら、崖っぷちから森の中、鉄橋から青々とした丘陵など変化に富む。カーヴでは超徐行運転になるので風景も楽しみやすい。走るおもちゃ箱は下界の喧騒をあっという間に忘れさせてくれる。

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マテラン丘陵鉄道のダイヤ

各駅停車パッセンジャーのみ、1日6往復しており乗りやすい。登り2時間、下り1.5時間程度でやはり露骨に下りが速い。

マテラン丘陵鉄道へのアクセス

2004年に世界遺産になったムンバイの #チャトラパティシヴァージーターミナス 駅からカルジャット、コーポリ行きの近郊電車が1時間に1〜2本出ていて1時間半ほどでネーラルに着くから、日帰りピクニックが可能。

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ムンバイからターネーまではアジアで初めての鉄道路線でもあり、始発駅も含めて歴史を味わいたい。

プネーから急行列車や快速急行列車で2時間弱でネーラルに行くこともできるけど、運行本数を考えると日帰りは難しそうだ。マテランで泊まる計画になると思う。

おわりに

明日はインド山岳鉄道ラスト2路線の概説をしていくよ❣️

ただ、明後日のClubhouse講義の準備もあり、それ以外でも仕事の締め切りもあるので、どーなることやら💦

明後日の講義がこちら。

20:00から北京オリンピック便乗企画をやっていくので、是非聴いてね⛷🏂



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