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Zippar〜自走という矛盾

こんばんナマステ💙Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ⭐️

昨日は世界で唯一広島市にしかないスカイレールを取り上げた際に、

Zipparという乗り物を引き合いに出した。

このZipparについてこれから見ていきたい。

まず、既存のロープウェイは支柱同士にロープを張って、そこにゴンドラをぶら下げて走らせる。

走らせるというよりは、ロープの力で引っ張ってゴンドラを移動させていく。

考え方はこれと同じで、実は紀元前から人や物をこうやって移動させていた。

最初は人がやり、動物にやらせ、水力や油圧などを使うようになり、そしてディーゼルや電気の力で動かすようになった。

人類がレールを使い始めるのは16世紀なので、鉄道よりずっと大先輩なのだ。

しかし、レールはロープより遥かに優れたパフォーマンスを発揮した。

大量輸送や高速輸送はもちろんのこと、カーヴや分岐を自由に設けることができ、多種多様なルートを設定して鉄道網と呼べるものができた。

ロープウェイは支柱間にカーヴを設けられないし、分岐を設けることもできず乗り換えになる。

それならロープウェイは鉄道に取って代わられたのかというとそうでもない。

レールは傾斜に極めて弱いし、原則は地面に沿って敷くから弱いし、地面に沿って敷けば敷設コストも非常に高い。また車両が自走するために動力コストも高い。

だから、ロープウェイも引き続き用いられたし、速度や輸送力などでは改良もされている。横風に弱いという欠点もロープを二重にするフニテルという方式が発明されてから、並みの鉄道より強くなった。これらはレールというライバルがいなければ考えられなかったかもしれない。

一方でロープとレールは対立ばかりではなく結婚もした。

ケーブルカー、あるいはフニクラーと呼ばれる乗り物がそれで、ケーブルの力で引っ張るという意味でロープウェイだけれど、レールの上に車両を乗せることで鉄道に類する輸送力を実現している。

ロープウェイからすれば鉄道の輸送力を求め、鉄道からすればロープウェイの傾斜を乗り越える力を求めて結婚したということ。

ちなみに日本の鉄道事業法では鋼索鉄道といって、鉄道と索道(ロープウェイ)の分類でいうと鉄道の方に入れられている。

昨日取り上げたスカイレールもロープとレールの結婚事例。

ロープをレールの中に這わせることで、ロープで引っ張りながらロープウェイ、ケーブルカーではできなかったカーヴを設けることができた。

また、駅ではリニアモーターを使って自走する。

ケーブルカーはロープウェイと鉄道のいいとこ取りだけれど、スカイレールはロープウェイに鉄道の要素を取り込んで進化したという感じかな。ただし、モノレールの敷設コストに近くなってしまいロープウェイのメリットが失われる。

なお、モノレールの一種として鉄道事業法では定められていて、やはり索道ではなく鉄道ということになる。

しかし、ケーブルカーやスカイレールは分岐線が造ることができず、ネットワークを形成できない。

ではZipparはどうか。

ロープを使うけれども、ロープとゴンドラが分離していて、ゴンドラはバッテリーで自走する。

だからカーヴも分岐も自由に設置できる。

それってさ。

走るのがレールじゃなくロープってだけで、ロープウェイじゃなく鉄道なんだよ。

そして実は新しいものではなく前例が存在した。それも遠い国ではなく日本に。

高知市にあった五台山ロープモノレールがそれで、1969年開業というから恐れ入る。

ロープの力で引っ張るのではなく、ゴンドラがロープを伝って自走した。当時は今ほどバッテリーが進化してたわけじゃないからディーゼルで自走した。

ロープモノレールを名乗ったのは実際、ロープウェイじゃなくモノレールに類するものだからだけど、それと同時にモノレールに取って代わるものを考えていたから。

モノレールは敷設コストが極めて高いので、それよりもロープモノレールなら安上がりですよ、と。

言ってることはZipparとほとんど一緒。

ただ、カーヴや分岐という発想はなく、横風にも弱かった。

Zipparはカーヴや分岐をする時はその部分だけレールを使うようだし、

前述のフニテルが発明されたのは五台山よりもっと後の話なので仕方がない。

五台山は1978年に休止に追い込まれ、結局は廃止になってしまう。

また、国内外の特許を取ったのに、結局他に波及することがなかった。

坂本龍馬の如く未来を先取りした乗り物なのに、どうしてうまくいかなかったのか。

それは観光アトラクションにしかなれなかったことに尽きる。

五台山に行く人しか使わないルートだからねぇ。

奇を衒わずに普通のロープウェイにしたら今でも残っていた可能性がある。

なぜなら、ゴンドラが自走するということは鉄道とランニング=コストが変わらないから。

どうしても自走式にしたければ、もっと恒常的に需要が取れるところ。つまり市街地に適用すべきだった。

だけど、それはできなかったんじゃないかと。

何故ならカーヴを設けられないから。だからはりまや橋や高知駅まで入っていけない。

それでも高知市南部は浦戸湾で市街地が二分されているから、ロープモノレールに適しているとはいえ、例えば路面電車の終点である桟橋通五丁目から浦戸湾を突っ切って十津、仁井田方面へ敷設していたら利用された可能性はあると思う。

うまく歯車が噛み合えば、自走式だから通勤通学時間帯とその他の時間帯で輸送力を調整できる、といったメリットは注目されたかもしれないし、国内外の色んなところに波及したかもしれない。

そうなれば、スカイレールやフニテルが発明された史実をトレースするかたちで、ロープモノレールも曲がったり、分岐できたり、横風にも強くなれた可能性はある。動力もディーゼル車から電気式に替わっていただろう。つまりZipparに近いものが前世紀には実現していた可能性がある。

Zipparの人もこういう前史を知らないはずはないし、十分にそのケーススタディを織り込んでいるはず。

また、ロープモノレールの特許を持つ東京索道へのヒアリングもしているだろう。

それでもやっぱりオートでランニングするだけにランニング=コストはロープウェイよりは高くなってしまう。

それを収益化するためには需要のある都市空間に入ること、つまりカーヴ、分岐の設置は絶対なのだ。

言い換えれば自走とカーヴ、分岐の設置は不可分な存在ということにもなり、それができなかった五台山の意志を受け継ぐのがZipparなのだともいえる。

Zipparは実は自分にとっても他人事ではない。

ネパール🇳🇵のポカラで真っ先に導入されることになるだろうから。

ポカラは首都カトマンドゥの次に日本人が多く訪れるところなんだから、必ず日本人旅行者がZipparに乗ることになるし、その時まだ日本では実現していないかもしれない。

その時、Zipparについて理解している南アジアを対象にした旅行屋は自分しかいないんだから。

それじゃあバイバイナマステ💙暑寒煮切でしたっ✨

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