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【Clubhouse連動】RRRの次はRRTS⁉️最強通勤電車でデリーは東京超えのメガシティになるのか

はじめに

こんばんナマステ 💙❤️Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ✨

今日は先ほどClubhouse『インドの衝撃(インド大学)』で喋った、デリーの新しい通勤電車RRTSについてこちらでも書いていくよ。

交通インフラにおいて、インドが日本に少しずつ追いつきつつあるのは間違いないけれど、日本より優れていると思ったのは初めて。

これがあれば本当にデリーは東京を超えて世界一のメガシティになっちゃうんじゃないのか。

ということで書いてみることにした。

RRTSとはどんなものなのか。早速見てみることにしよう。

デリーに最強の通勤電車がまもなく登場

デリーから北東方向のガーズィヤーバードを経由してメーラトまで82kmに及ぶRRTS(Regional Rapid Transit System)のうちサヒババードからドゥハイまでの17kmで今月最終週に部分開業する見込み。残りの区間は2025年6月までに順次開業予定。

デリーのターミナルはアーグラー行き超特急ガティマンエクスプレスが発着するハズラトニザームッディーン駅に接続、この駅を含めて4駅でデリーの地下鉄デリーメトロに接続する。

最高速度180km/hで設計され、160km/hで走行。82㎞離れたデリーとメーラトの間を約50分で結び、加減速や途中駅での停車時間を含めた表定速度は約100km/h。5分から10分程度の間隔で運転される予定。急行運転の記述はないので各駅停車オンリーと思われる。

運賃はkmあたり2ルピーが予定されているが、建設費の償還のためもう少し高くなる可能性も示唆されている。運賃はQRコードの切符を買うこともできるが、自動徴収システムが導入され、切符を買う必要がなくなるという。

82kmというと東京ー小田原間とほぼ同じ距離で、東海道線の通勤電車なら1時間20分程度かかることを考えると相当速い。関西では大阪ー姫路間88kmを新快速が約1時間で結ぶので新快速をやや上回るスピードの通勤電車ができるという例えが関西の人にはわかりやすいといえる。

ウッタルプラーデシュ州ガーズィヤーバードはデリーから北東30kmほどの人口200万人を超える都市で、現在でもデリーメトロが通じているデリーの衛星都市。2019年にヒンドン空港が開港し、便数は少ないけれど一部行き先にはわざわざインディラ=ガンディー国際空港まで行かなくてもよくなった。

そこからさらに50km北東に向かったメーラトは人口150万人。1857年にインド人が初めてイギリス植民地政府に反旗を翻したセポイの反乱が起きた街として知られ、インドで唯一反乱について展示する政府自由民権闘争博物館は必見。

RRTSを運営するのはデリー首都圏の交通問題を解決すべく2016年に設立されたNCRTC(首都圏交通公社)で、連邦住宅都市省が50%、デリー連邦直轄領、ハリヤナ州、ラジャスターン州、ウッタルプラーデシュ州が12.5%ずつの株式を持つ。

デリーはメトロこそ年々路線網拡張されインドで一番どころか、世界でも有数の距離になりつつあるが、近郊電車に関してはムンバイなどと違って長距離列車と線路を共用しているため本数が少なく実用的とはいえず屋根の上に乗るような低所得者層の移動手段に留まっている。

そこで新線としてRRTSを建設することになり、その最初の路線がデリーとメーラトを結ぶ路線となった。

今後はデリーから南へ進んだラジャスターン州アルワルまでの164kmと北へ進んだハリヤナ州パニパットまでの64kmが整備される。

アルワルへの路線はインディラ=ガンディー国際空港や日本人が多く住むハリヤナ州グルガオンとラジャスターン州ニムラーナーを経由するため特に日本人に好まれるだろう。

その後も路線網をどんどん拡大していき、特に現在新国際空港を建設中のウッタルプラーデシュ州ジュワールへの路線は大きく役に立ちそう。

デリーの通勤圏は今後大きく拡大していくことになる。

通勤電車が都市をつくる

RRTSが整備されると何が起きるか、それはこれまではガーズィヤーバードなどデリーの隣接都市までは市街地が繋がっていても、そこから外へ行くと市街地は途切れていたところが市街化されていき、デリーを核にした都市圏がどんどん広がっていくことを意味する。まるで東京のように。

ここで都市と交通の関係を見ていきたい。

世界の都市の都心の大きさはどこへ行っても半径2km、直径4kmであるというのが知られている。例えば、秋葉原と新橋、梅田と難波がちょうど4kmにあたる。

これは人の歩行速度が4km/h程度であり、だいたい30分程度歩いて通勤するから。

路面電車ができると、表定速度が10km/h程度であることから、都心から半径5kmの範囲で市街化してくる。

近郊電車ができると、表定速度が40~60km/h程度になるため、半径20~30kmの範囲が都市化する。東京を中心に横浜、さいたま、津田沼、大阪を中心に神戸、奈良といった範囲。

さらに速度の速い関西の新快速やつくばエクスプレスは40~50㎞離れたところまでを有機的に結び付けている。高速近郊電車とでも呼ぶべきか。

これは日本や欧米の教科書的なケースであり、現実にはアメリカでは第一次世界大戦以降、その他は第二次世界大戦以降急速に自家用車が普及して、薄く広く市街化しているのが現実。

また様々な要因により通勤は長時間化していく。

江戸は元々人口が多かったうえに螺旋状に市街を増設していくシステムになっていて、最初は新橋駅近くにあった芝口御門が江戸のゲートだったのが、高輪に移り高輪大木戸となる。これが高輪ゲートウェイの由来。更に拡大して宿場町だった品川と完全にくっついてしまう。

このような淵源があるためか、東京では1時間を超えるような長時間通勤が当たり前になった。

しかし、少子化や土地価格の低下、都心の建物の高層化といったことで現在は急速に首都圏が萎んでおり、八王子や横須賀など郊外の都市が衰退の一途を辿っている。最終的には都心30分圏内まで萎んでいくだろう。

アメリカの大都市では住宅価格が高騰し過ぎて住宅の郊外化が加速、片道1時間以上の通勤が増えている。

そういう様々なケースはあるものの、近郊電車で30分程度の沿線が市街化していくということは普遍的。

この仕組みを確立したのは19世紀終盤にアメリカで誕生したインターアーバンで、電鉄会社が多数設立され、高速化された路面電車が低廉な運賃と頻繁運転で都市と都市を結ぶことで、沿線が一気に都市化していった。

この仕組みはキャナダ・メヒコを含む北米だけでなく、ヨーロッパや日本、戦前は先進国だったアルゼンチン、アジアで日本と共に植民地化されなかったタイへ波及していった。

しかし、前述したようにアメリカでは第一次世界大戦、その他では第二次世界大戦以後モーターリゼーションの波が起きたことで、アメリカでは大半が廃線に追い込まれ、ヨーロッパでは多くの路線が公営化され、ドイツのシュタットバーンなどの礎になっていった。

ところが日本では、この時設立された電鉄会社が独自に進化を遂げて現代に至るまで都市の主要なインフラであり続けている。

日本で最初のインターアーバンである阪神電車をはじめ、京阪、京浜急行、京成、京王というように都市と都市を結ぶネーミングがされているのはそのためで、名鉄の前身は名古屋と岐阜を結ぶ名岐鉄道といったし、国営化を経て現在はJRだけど阪和線も昔は阪和鉄道といった。

日本でインターアーバンが生き残れたのは、欧米と比べて人口密度が高いこと、地形が急峻で道路整備が遅れたこともあるけれど、

経営学でよく言われることとしてアメリカの電鉄会社がドメイン(事業範囲)をあくまで鉄道経営にこだわったことに対して、日本の私鉄は沿線で不動産開発や商業、バスやタクシーといった二次交通、エンターテイメント(遊園地、プロ野球チーム、宝塚歌劇団など)、生活サーヴィスといった様々な事業を取り扱うコングロマリット化したことが挙げられる。

日本の私鉄のビジネスモデルを確立するにあたって特に天才的な手腕を発揮したのが阪急の小林一三、それに続いて東急の五島慶太や西武の堤康次郎であることはよく知られているよね。

国鉄もまた私鉄を真似て東京や大阪に国電を走らせ、JRになってからは名古屋や福岡、札幌などでも近郊電車のサーヴィスを充実させている。

東京が今日において世界一の規模を持つメガシティとなっているのは近郊電車のシステムに依存するところが大きい。

デリーはRRTSで東京を超えるのか

デリー首都圏は現在約3,000万人で約4,000万人の東京、約3,500万人のジャカルタに次ぐ規模を持つ。

御多分に洩れず、鉄道整備より車の普及が先行して日々大渋滞を繰り広げているが、東京やジャカルタと比較すると都市圏の範囲が狭く、人口密度が高いという特徴がある。

東京は近郊電車が都市の範囲を広げ、ジャカルタは無節操に市街が拡大しているのに対し、デリーは非常に濃密で郊外の市街化が進んでいない。

RRTSはまさにこれまで市街化されていなかった地域と都心を短時間で結び、市街化を促すだろう。結果として、都市圏の範囲が広がることで世界最大規模のメガシティが誕生する可能性が高い。

都市は人類最高の発明(エドワード=グレイザー)という主張があるけれど、この論に依拠すればデリーこそ創造的な衝突が絶えず発生する世界で最もイノヴェイティヴな場所になっていくといえる。

しかしRRTSだけが突出していても、他のインフラが整っているとはいえないし、NCRTCはただ路線さえ造れば移動環境が改善されて富が呼び込めるくらいにしか考えていない節がある。

結局それだと点と点の移動だけが活性化され、そこに面的な都市が形成されていかず、実際JR西日本の新快速やつくばエクスプレスは沿線文化の醸成には至っていない。ただし、明石市や流山市の都市政策の評価が高いことと無関係ではないけれど。

デリーがRRTSを基軸にイノヴェイティヴな場を創り上げていくうえでは、沿線にもっと包括的なサーヴィスを提供して活性化させていく阪急の小林一三のようなヴィジョンが求められる。

要するに日本の私鉄による沿線ビジネスに倣ってほしい。

敷設は公営としても、民間企業に運行権を貸し出すかたちで沿線ビジネスを展開してほしい。当面はインドの企業と日本の私鉄やヨーロッパの鉄道オペレーター(ヨーロッパはインフラ保有と運行が分離されていて、運行のノウハウを持った会社が国を超えて請負競争をしている)と組めばいい。

先日東急の方とお話しした時に、ヴェトナムみたいにインドにも投資してくださいとお願いしたけど、まさに多摩田園都市をデリー郊外につくってほしいと思う。

またこれほどのシステムを持ちながら各駅停車のみの運転というのは非常にもったいない。

急行運転をして表定速度120〜130km/hになれば、デリー首都圏はもっともっと活性化する。

特にアルワルへの路線は160kmにもなるので、急行運転がないと効果は半減してしまうだろう。

おわりに

ハード面では素直に日本や欧米にないクオリティだと感じるRRTSだけれど、運用面ではまだまだ甘いなと感じる。

すごいもの造ったぞー、で終わらせず都市交通の先達達の歴史を学んで発展的な継承してもらえたら本当にデリーはものすごい都市になるだろうけど。

日本の企業も大きなビジネスチャンスと捉えて、是非RRTSを軸にした投資をしてもらえたら。

ちなみに上には上がいる、というか中国は北京天津間をはじめとして短距離の高速鉄道である「都市間鉄道」をどんどん整備していて、超絶なモビリティが生まれているけれど、しかしながらその沿線が都市化していくような感じがない。

例えば北京から天津まで約30分で約1,500円。これをタダ同然に思う人達がたくさんいることは承知しているけれど、平均所得は日本の3.5分の1程度であることを思うと5,000円を超え、北関東まで新幹線に乗るようなイメージ。

様々な階層の人が日常的に行き来できる水準じゃない。

そう考えるとRRTSは近郊電車という枠のなかでは世界最強といっていいけど、脇がまだまだ甘いね、ってとこかな。

それじゃあバイバイナマステ💙❤️暑寒煮切でしたっ✨


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