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晩夏

ここ一週間ほど、夜になるたびに大雨が降っている。
本当に、バケツをひっくり返しくらいの土砂降りで、我が家は窓がたくさんあるので、割れやしないかとひやひやしてしまう。時々、あまりの強い雨音に起きることもある。

でも、雨が降った翌朝の、窓をあけた瞬間に感じる涼しさは、本当に素晴らしい。もわっと籠った夏の熱気とは違う、ほんのり秋の訪れのような。

さて、夏について。

私が、夏と聞いて真っ先に思い出す光景がある。
それはヴェスパに乗った大学生だ。

たまたま東京外大の近くを歩いていて、その日はうだる様な暑さで、心底うんざりしていた。外大の近くは、緑ゆたかな住宅地でひろびろとしているが、そのぶん日差しもふんだんに浴びるようで、焼けた肌が熱かった。

そんな折、ふいにヴェスパに乗った大学生と思わしき青年が、のんびりと私を追い越していった。
心もとないビーチサンダルに、膝上丈のベージュのパンツ、タンクトップ。なんて、夏らしいのだろうと。思わず見とれてしまった。くるくるの巻き毛もよかった。

夏の盛りのなかでは、あれくらい颯爽としているほうがいい。
私はビーチサンダルも、膝上丈のパンツも持っていないが、心から憧れる。

ここ数年ファッションのトレンドが、ロング丈ということもあり、クローゼットにはロング丈もしくはミモレ丈のスカートしかないけれど。
ふたたび、短い丈のボトムスが流行っているらしいので、来年は短いパンツで猛暑を乗り切ろうと思っている。

夏が来るたびに、あのヴェスパの青年を思い出す。
颯爽とした服装と、けだるげな表情で追い越していく様子も、のんびりしたスピードも。すべてが、夏を凝縮したものだった。

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