エッヒミッヒのタイムカプセル
オオカミの娘「ココにも、もうじき大きな冬がくるわ。もしかしたら誰も目覚めることはないかも」
キツネの青年「うん、だけど不思議と落ち着いてるんだ。きっと、とおい昔にも同じようなことがあったんだ」
オオカミの娘「はあ・・・ふふっ。キツネさん、あなたってむつかしいことが好きなんだから」
キツネの青年「複雑ぶるのが好きなんだ」
オオカミの娘「100年後も1000年後も、きっとお元気でいてね」
キツネの青年「うん」
オオカミの娘「あなたのくるっとしたくせ毛に栗色の瞳。きっと忘れないわ。きっと、きっとよ」
キツネの青年「もうじき冬がくるんだね。動物たちは冬ごもりの準備をしてるだろうね。でも冷たい季節は永遠じゃないよ。次に芽を出す時期がくるのをじっと待って、そしたらまた戻ってくるよ」
オオカミの娘「あなたがやってくる次の秋には、きっと狼としての私はいないはずだわ。だけど血は巡るもの。きっとまた会える。それだけはしっかりと分かるの」
キツネの青年「手、つないでいいかい?」
ー黙って手をつなぐ。しばらくの沈黙ー
オオカミの娘「はあ、もうじき冬がくるわ」
キツネの青年「平気さ」
オオカミの娘「ふふ・・」
キツネの青年「さようなら」
オオカミの娘「うそつき」
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