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「農業の就労人口の現状と未来」って結局、何なのよ!?

2019年9月のニュースですが、60歳以上の新規就農者が増加し、49歳以下の新規就農者は減少しているというニュース。政府の政策で特に有名な"農業次世代人材投資資金"の対象年齢も引き上げられている状況。

農林水産省は農業経営体数が減少している中で、法人化が進展とうたっているが、注意してもらいたいことは、法人と定義しているのは、"農業サービス事業体"が含まれていることである。"農業サービス事業体"とはいわゆる”農作業受託"を行っている事業体である。"農業サービス事業体"は既存組織を地域農業の活性化を目的とし、再編成する過程でうまれることが多いので「農業生産法人数が増加しております」なんて聞いても、注意してみないといけない。

✓法人が新規就農者の数を伸ばしていた

2010年から2014年まで49歳以下の新規就農者の数は順調に伸びていたが、2015年からは減少傾向にあると記事にはある。特に、重要なことは「雇用される新規就農者が減少に転じたこと」である。2010年から名だたる大手小売企業が農業事業に参入し始めた。2015年からの減少傾向は大手企業の農業事業への参入がひとまわりしたことにより、メディア等で取り上げられなくなったことが主要因であると筆者は思う。(というか、現在のメディアは農業系でも別の内容を取りあげている)。

✓49歳以上の新規就農者は増加している。ただし・・・

若い人が農業法人に就職していない事実とはウラハラに、農業に参入する49歳以上の先輩方が増加している理由は以下の通りだと筆者は考える。

1,そもそも農業法人の働き方に合わない(体力がついていかない)

農業法人の働き方の大半は悪い言葉で言うなら"作業要員"である。朝は6時から始まり、夕方は19時くらいまで作業をする。肉体労働をだ。49歳以上の方がそんな働き方ができるだろうか。夏場の暑い時期を考慮したならば、農業法人に就職し「農業のことを学ぼう」と考える人はかなり情熱のある人以外にはいないのではないだろうか。

2, 退職して家業を継いでいる

地方ではよくみる光景ではあるが、農家の息子が他業種で働いていて、親の高齢化により農業を継ぐ決心をすることである。私も農業をしていて、49歳以上の人に話を聞くと「公務員をやっていて早期退職して家業を継ぎました」「親が作っている農作物の素晴らしさを知り、絶やしてはならないと思い家業の農業を継ぎました」という話をよく聞く。

3,退職して田舎に帰る→農業参入

都会での生活でやることはやったので、自分の生まれ故郷に帰り地域のために働こうか(含む,農業参入)と考える場合だ。ここで大切なことは"生まれ故郷に帰る"ということで、生まれ故郷は知り合いも多いし、地域の文化が体に染み込んでいるので農業参入も比較的容易に進んでいく。

4,退職(脱サラ)して地方に移住→農業参入

かなり特殊な例であるが、メディアの後押しもありこういったケースが稀ではなくなってきていると感じる。仕事への行き詰まり、子ども、健康面等様々な理由で田舎暮らしを考え、「田舎で暮らすのなら農業だろ」という考えで農業参入する場合だ。農業参入といっても「田舎暮らし」がメインなので農業を行うというよりは、"農家"になるというイメージが良いのかもしれない。

✓どっちみち、49歳以下の農業就労人口は増えていない

結局、"若い人が農業にいない"という事実は変わらず、"基幹的農業従事者"の高齢化は49歳以上の方々が参入して、統計にはでない若干の若返りはあるものの、「バリバリ働いてこれからやってやるぜぇーい」なんていう若い人なんて皆無に等しい。「これから余生をどう過ごそうかなぁー」なんて考えている人が農業参入している始末なので、バリバリの衰退産業は否めない。農林水産省に至っては、"農業次世代人材投資資金"の給付条件を絞り、年齢対象を引き上げた。農林水産省としても、20代,30代のバリバリ働ける方々の農業参入はあまり見込めないとし、40代,50代,60代の農業参入に的をしぼったのではないかと筆者は考える。

✓とはいえ、働き盛りの人々が農業に参入してもらうためには・・・

20代,30代が農業参入する処方箋として農業法人の役割は非常に大きいと考えている。20代,30代は意欲に満ち溢れ、アイディアだってたくさんある。そういった勢いある人々が農業界に参入することは、会社が新入社員を募集する理由に近いものがある。しかし、彼らには資金や農業技術がないことがしばしばある。農業法人には給与収入があるし、作業要員としてでも農作業を毎日行うので自ずと農業技術は身に付く。農業法人で働くことは農業を行うという心のハードルを下げる。

農業界全体の就労人数は減少している危機的状況にはあるが、農業法人が果たす役目はますます大きくなっていくのではないかと筆者は思う。







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