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少人数私募投信の特徴と留意点(その4)-約款の内容等を記載した書面の交付が必要

また、少人数私募投信では、約款の内容等を記載した書面(以下「約款内容等記載書面」といいます)の交付も必要になります。

金融商品取引業者(投資信託委託会社)は、原則として、約款内容等記載書面を交付しなければなりません(投信法5条1項本文)。

もっとも、目論見書に約款内容等記載書面に記載すべき事項がすべて記載されていれば、当該書面の交付は不要になります(同項1項ただし書)。

公募投信では、この規定を使って約款内容等記載書面の交付を省略しています。

どの投資信託のものでもいいので、お手元にある請求目論見書を見てみてください。必ず末尾に投資信託約款が添付されていると思います。

請求目論見書に法定の添付書類はありません。
投資信託約款が添付されているのは、約款内容等記載書面の交付を省略するためなのです。

なお、目論見書には交付目論見書と請求目論見書がありますが、交付目論見書に約款内容等記載書面の記載事項のすべてが記載されていなくても、請求目論見書に残りのすべてが記載されていればよいと解釈されています。

また、請求目論見書の本文に書きこまなくても、請求目論見書に投資信託約款そのものを添付すればよいと解釈されています。

請求目論見書への約款添付は、実務で定着していることもあって、約款内容等記載書面との関係があまり認識されていないように思いますが、このような意味を有しています。


一方、適格機関投資家私募は、約款内容等記載書面の交付義務が免除されています(投信法施行規則10条1号)。

こちらは、運用報告書と異なり、投資信託約款において約款内容等記載書面を交付しない旨を定めていなくても、適格機関投資家私募であるというだけで法律上当然に免除されます。

実際、適格機関投資家私募の実務においては、投資家に対し、タームシート、商品概要書その他の説明資料を提供することはありますが、約款内容等記載書面や投資信託約款そのものが交付されることは、筆者の認識する限り、ありません。


これらとの対比で、少人数私募投信を見ていきたいと思います。

まず、少人数私募は、適格機関投資家私募と異なり、約款内容等記載書面の交付は免除されていません。

また、私募であるため、目論見書が作成・交付されません。
目論見書がない以上、目論見書に投資信託約款を添付することもないわけで、公募投信で用いられている免除規定を適用することもできません。

たちが悪いのは、適格機関投資家私募では(投資信託約款に何らの定めがなくとも)法律上当然に免除されており、また、公募投信では請求目論見書への約款添付が実務で定着し約款内容等記載書面との関係があまり認識されていないため、約款内容等記載書面を交付する義務があることの認識がないまま少人数私募投信を取り組み、法令違反を犯してしまう可能性が少なからず存在するという点です。

このようなリスクを避けるため、説明資料の末尾に投資信託約款を貼り付けて投資家に交付している社もあるようです。





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