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補正のチカラ


着物を着た時に 綿やら
タオルでぐるぐる巻きにされて
しまって もう嫌だ、という人は
少なくない。

普段着の着物はできるだけ
補正は少なくして楽に
着れば良いと、
わたしはは思っている 。

しかし 礼装の場合は
いかに補正でその人の着姿を
美しく仕上げることができるか
それが腕の見せ所になる。

そして 着付けの一番の
難関でもある。

補正の名手であるわたしの
先生のひとつのエピソード。

2年ほど前の冬。
結婚式場の着付け室に
入ってきたお母様は
若々しくでお綺麗な方でした 。

その方は コートを脱ぎながら
「私病気で体が歪んでいるんです。
だからきっと着物は綺麗に着られないと思うのですが
よろしくお願いします。」 と
おっしゃった。

その方の背骨は大きく湾曲し
左右の肩の高さも違い
背中の右左の高さも違っていた。

先生はにっこり笑って
お任せください 、と言った。

高さの違うところにはタオルや
綿をすれば一見うまくいくようだが
実はそんなに簡単なものではない 。

やはり左右のバランスが
同じ人はいないのでどうしても
着ているうちに体の癖で
襟がずれたり 肩がずれたり
していってしまうのだ 。

左右が大きく違う方は尚更。
なのでその方の体の動きを
見ながら少しずつ少しずつ
調整していかなくてはならない。

そして仕上がった黒留袖姿は
全く 骨の湾曲や 体の歪みを
感じさせない すっきりとして
美しいものだった。

その方は 嬉しそうに出て
行かれた。
大切なお子様の結婚式に
きちんと整った着姿で
出席できることは
きっと大きな喜びであったと思う 。

それ以外にもお年で
背中が曲がった方を
そう見せない補正などなど
教わったが、
まだまだ 先生の域に達する
のはかなり先になりそう
である。

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