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祝モーツァルトソナタ全集リリース

待望の藤田真央くんのモーツァルトピアノソナタ全集が10月5日に届きました。
リリースおめでとうございます!発売日に手元に届くとは、さすが日本のamazonですね。
ワールドワイド版は明日10月7日に発売予定で、Fnacの予約販売にありました。

 フランス語の訓練のためにいつも聞いているfrance musique の番組で、数日前にこのモーツァルトのアルバムが取り上げられていました。K.332の3楽章とK.457の1楽章の録音が流れましたが、2曲の間には進行役であるエミリーとロドルフによるトークで真央君のことが紹介されました。フランスで紹介されるときは、「あのカントロフが1位だった時のチャイコフスキーで2位だった…」と枕詞のようについてきますね。 “だからフランスでは知られていなかったけれど“ モーツァルトのソナタを全曲弾いた素晴らしい音楽性の日本人の若いピアニスト、と認識されつつある様子。パリに縁のあるクララ・ハスキルのコンクールもフランス人は大好きで、パリのコンセルヴァトワールではむしろショパンコンクールより注目される傾向でしたから、クララ・ハスキルの覇者であることは非常に好印象になっているようです。番組ではモーツァルトのトルコ行進曲をヒット曲とするピアニスト、ファジル・サイが引き合いに出され「アプローチは2人とも全然違うけれど、即興的な面が好きという点では類似している」と。
「マオ・フジタは、“モーツァルト自身、即興しながら弾く奏者だった。楽譜に書いてあることだけを弾くとつまらなくなる、何か特別なことができる” と言い、モーツァルトのテクストを歪めることなくこれらのソナタを我が物とし、それがこの全集をこれほど成功させた」と、エミリーが結んでいました。
ベルリンに本拠地を置くSony Classicalと日本人ピアニストとしては史上初のワールドワイド契約を結び、録音から一年近く経ってようやく発売されるモーツァルトのピアノソナタ全集です。Fnacで見つけたらぜひご購入してみてください。

 昨日届いたCDはまだ2曲(K.333とK.457)しか聴いていないのですが、ブックレットを読んだところ、そもそもチャイコフスキーコンクールへの出場と、一次予選の古典でモーツァルトのK330を選んで弾いたことは、86年のホロヴィッツinモスクワのライヴ録画を幼少期にDVDで見ていたことがきっかけだったとか。そのK.330は86年の東京公演で、私は会場で聴いたはずなのです。

と言うのも、吉田秀和さんが『ひびの入った骨董品』と来日演奏を批評した83年のツアー以来、不調で演奏の場から退いていた巨匠ですが、86年には見事に甦り、4月にモスクワ、5月にベルリン、そして6月に東京での3公演を含むリサイタルツアーを行ったのです。大切に保管してあった当日のリサイタルのプログラム冊子を読むと、この時の公演(招聘元:梶本音楽事務所)はなんと来日1週間前の告知だったようです。そんなレアチケットでしたが、当時習っていた鷲見先生に貴重なチケットを一枚譲っていただき、幸運にも巨匠の東京公演を最前列の席で聴くことができました。当時私はまだ小学生、リサイタルについての記憶は朧げですが、昭和人見記念講堂での観客の熱狂ぶりと魔法としか思えないような音、1分たりとも退屈せず集中して聴いたこと…。ホロヴィッツの誕生日である10月1日に、SNS上に大量に流れてきた過去の映像を見ながら懐かしく思い返していた矢先でした。あの時に心に刻まれた「ホロヴィッツおじいちゃん!!!」の姿と、これから世界に羽ばたく藤田真央。この夏、どこかのフェスティバルの舞台に現れた真央君を、Mi-enfant, mi-vieux-sage(半ば子供、半ば年老いた賢者)と書いていた人がいたことを思い出して、あれは言い得て妙だったと今更感心しています。この全集が世界中のたくさんの人に聴いてもらえますように!

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