手汗治療体験記①手汗(手掌多汗症)とはどんな病気なのか?

こんにちは、きょうこと申します。

長年の悩みだった「手汗」を治療することにしたので、体験記を書いてみようと思い立ちました。

第1回は、手汗の基礎知識や、私が小学生の時から体験してきたこと、日常の手汗対策について書いていきます。お付き合いいただければ幸いです。

1.手汗(手掌多汗症)とは

手汗は、正式には「手掌多汗症」という病気です。

症状としては、自分の意思に関係なく手のひらから汗がダラダラ出てきます。すごく暑いとか、緊張している時でなくても汗が出ることがあります。

生まれつきの病気で、小学生くらいの頃から症状を自覚する人が多いそうです。私も小学校2~3年生の頃、テストの答案が手汗で濡れてしまったり、体育の授業でクラスメイトと手をつなぐ時に困ったりして、どうやら自分が特殊な体質らしいということに気付きました。

もっと小さい頃から手汗はあったと思うのですが、それが当たり前になっていて、「周りの人たちはそんなに手汗をかかない」とは気付かなかったのだと思います。

手汗は自然に治ることはないとされ、現在の医学では、手術をしない限り一生の付き合いとなります。

手術の適用になるほどの手汗は、100人に1人くらいだと言われています。手が湿る程度の軽い手汗も含めれば、25人に1人くらいいるようです。

手汗の原因は不明です。また、手汗が多い人は足の裏の汗も多いのですが、メカニズムは不明です。

手汗が直接寿命を縮めることはありませんが、QOLを大きく損なうため、疾患として扱われます。なので手術は保険適用です。

2.手汗(手掌多汗症)で困ることと対策

手汗の人は、日常生活の様々な場面で困っています。以下に、私が困っている(あるいは子どもの時に困っていた)ことと対策をリストアップしてみました。

●体育の授業などで手をつながなければならない
→子どもの頃は、腕相撲、フォークダンス、遊戯、組体操など、手をつながなければならない場面が多くて辛かった記憶があります。
対策としては、ポケットにハンカチを入れておいてこまめに手を拭くことと、相手にあらかじめ伝えておくこと。別にいいよと言ってくれる人もいます。気持ち悪いと言う人とはできるだけ組まないようにして、どうしても組まないといけない場合は綿手袋の装着を検討します。

●書き物をする時に紙が濡れる
→書き物をする時は、「分度器」が最強です。手の下に分度器を敷いておくのです。
テストなどで分度器を持ち込めない場合は、ハンカチでこまめに手を拭くしかありません。吸水性の高いタオルハンカチをよく使います。服装自由なら、手を拭ける綿の服を着るようにしています。

●ビニール手袋がなかなか入らない
→使い捨てのビニール手袋が、とにかく滑らなくて、つけるのに時間がかかります。「サイズが小さいんじゃないの?」と言われることもありますが、私は手が小さいので、小さい手袋でないとダボついてしまいます。
手を拭いてもすぐ汗が噴き出してしまうので、これといった対策もなく、看護師をしていた時はこれが一番困りました。手袋に苦戦していたら先輩に怒られたり、溜め息をつかれたこともあります。

●マウス、キーボード、受話器などが濡れる
→他の人が触る前にハンカチなどで拭きます。このご時世なので除菌シートを使うのも良いと思います。

●つり革や手すりが濡れる
→こまめに手を拭いても間に合わない場合、綿手袋を装着しています。慣れないと恥ずかしいかもしれませんが、感染対策や皮膚の保護のために手袋をしている人はたまにいますし、そもそも他人の手袋なんて気にする人はほとんどいません。

●読書の時に本が濡れる
→こまめに手を拭いても間に合わない場合は綿手袋をするのもありですが、ページがめくりにくくなります。利き手でないほうだけ綿手袋をするのは良いかもしれません。表紙が紙など水を吸ってしまう素材であれば、カバーをかけておきます。

●楽器(ピアノ、ギターなど)が濡れる
→使い終わったらタオルで拭きます。発表会など、次の人のことを考えて拭きたい場合、事前に先生に相談しておきます。

●スマホが濡れる
→さらさらと滑りやすい画面保護シールを貼り、水を吸わないカバーをかけています。革のカバーは絶対使えません。ガラケー時代はボタンの隙間に汗が入らないか心配でしたが、防水スマホが普及してからはその心配はなくなりました。

●おつりを受け取る時に手が触れると困る
→ハンカチか服でサッと手を拭く程度にとどめています。どうせお金は汚いし、店員さんは多くの人と接しているので手汗ぐらい慣れているのかなと思っています。最近は感染対策のためトレイでの受け渡しが増えたうえ、電子マネーで払うことがほとんどなので気にならなくなりました。

●裁縫で針が滑る、布が濡れて針が通りにくくなる
→地味ですが、かなり困ります。針を持つと緊張することもあり、こまめに拭いても間に合わないことが多いのですが、綿手袋は手先が鈍ってしまうので現実的ではありません。ひどい時は扇風機で手を乾かしながら作業します。

このように色々な対策を見てみると、
「ハンカチまたはタオル」
「分度器」
「綿手袋」
が必須アイテムであることがわかります。

3.手汗(手掌多汗症)への周囲の理解について

はっきり言って手汗の苦労を理解している人は少ないと思います。しかし、それは仕方ないことだとも思っています。

日常生活に支障が出るほどの手汗は100人に1人くらいなので、珍しいというほどではありませんが、しょっちゅう出会うものでもありません。せいぜい知人に1~2人、という人が多いと思います。

自分やごく親しい人が手汗でないと、調べようという気にはならないし、わざわざ深く考えないのが当たり前だと思うのです。

というのも、私は「左利き」の苦労を理解できていません。世の中のほとんどの物は右利きに都合が良いように作られており、右利きの私はその恩恵を受けているのに、当たり前すぎて気付かないのです。

今回、「当事者でないとどれくらい苦労がわからないのか」を実感するために、左利きについて調べました。

左利きは10人に1人くらいなので、重度の手汗の10倍ほどの人数です。もちろん手汗より知名度も高く、誰もが左利きの意味を知っています。

まず私は、左利きで困ることを考えてみました。出てきたのは、改札口、電子レンジ、マウス、キーボード、楽器、はさみ、横書きが書きにくい……くらいです。

その後、左利きで困ることを検索してみました。すると、想像もしていなかったことがたくさん出てきました。

自販機、片側に注ぎ口がついたレードル(おたま)、急須、缶切り、カメラ、ドアノブ、かぎ針編み、ゲームのコントローラー。結婚指輪が邪魔になりやすい。食事中に隣の右利きの人と肘がぶつかる。チェーン付きボールペンが右側に固定されている。講習会などで使われる「右側にサイドテーブルが付いた椅子」が異常に使いにくい。

これでもまだ一部でしょうが、私は考えたことがなかったのです。「自分も家族も右利きだが、ここに挙げた苦労を全て想定していた」という人は、まずいないと思います。

それならば手汗の苦労が理解されない、省みられないのは当然だと思うわけです。

私は手術をして手汗を治すと決めましたが、手術をしない限りは周囲と折り合いをつけていくことになります。できるだけ周囲の人を不快にさせないように対策をしつつ、手汗のことを説明して理解を得ていくのが大切だと思います。

この記事を読んでくださっている「手汗でない人」に一番お伝えしたいのは、手汗は本人の意思では制御できないということです。また、手術にしても他の治療にしてもそれなりに大変です。緊張しすぎるせいだとか、生活習慣を変えれば治るだろうとか、薬で抑えればいいとかは、思わないでいただきたいです。

次回は、手術を受けるクリニック初診時の体験記を書こうと思っています。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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