去り際を大きな虹と葦の花 ふけとしこ

「椋」2022年2月号より。

立つ鳥跡を濁さず。去り際は美しくありたいと、そう思わせるのは1980年10月の山口百恵引退コンサートが令和になっても伝説として語り継がれているからであろう。

先日女性アイドルの音楽番組を観ていたら、10代のメンバーが山口百恵のことを「ちびまるこちゃんの漫画によく出てくるすごいスター」と言っていて、まさしく私もそういうふうに山口百恵を知ったので少し笑ってしまった。そう、まるちゃんの大好きな人。平成の子どもたちに山口百恵を教えたのはさくらももこであると私は勝手に思っている。

掲句は素材の〈虹〉と〈葦の花〉の奇妙なバランスに心惹かれる。西洋イメージの〈虹〉、日本の平安時代からの素材の〈葦の花〉。このまるごと感は「いい日旅立ち」「さよならの向こう側」に象徴される、日本の原風景も異国の空も歌う山口百恵にやはり似ていないか。

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