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著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)←この意味

1.契約書でよく目にする(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)

成果物を制作したり開発したりしてクライアントに納品するタイプ(「請負」といいます)の業務委託契約書などの「著作権の規定」で、下記のような文言をよく目にします。

成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、成果物の納品完了時に、乙から甲に移転するものとする。

▶乙(開発者)が甲(クライアント)のために開発した成果物(ソフトウェアなど)の著作権のすべては、乙が甲に納品した時点をもって甲に帰属することになる。

このような意味ですが、

(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)という文言をわざわざ入れるのは、どうしてでしょうか?

契約書の専門家がわかりやすく解説します。


2.著作権法第27条と第28条

著作権法第27条第28条を確認する際、これに関連する著作権法第61条もあわせて確認する必要があります。

条文では、下記のようになっています。

▮著作権法
第二十七条
(翻訳権、翻案権等)
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

第二十八条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~十の三 〔略〕
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
十二~二十四 〔略〕
2~9 〔略〕

第六十一条(著作権の譲渡)
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
以上


3.それぞれどういう意味か

第27条では、著作権法上の権利として「翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案」などすることができる権利があることを規定しています。

著作物に変更を加えたりすることができる権利のことです。


第28条では、著作物の「二次的著作物」を利用することができる権利があることを規定しています。

「二次的著作物」は、第27条にあった“変更を加えたりすること”によって新たに創作された(二次的な)著作物のことです。


第61条2項で、「著作権を譲渡する契約で、(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)などと記載されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と規定しています。

“譲渡した者”というのは、冒頭の甲(クライアント)・乙(開発者)でいうと、乙(開発者)の方です。


3.明示が無いと、譲渡の対象にならない

今回の著作権について考える際には、上記の第61条2項で“推定する”となっているところがポイントです。

この推定規定があるため、契約書で「著作権を全部譲渡する」と規定していても、著作権法27条・28条の権利の譲渡について明記されていないと、これらの権利の譲渡はなされていないものと考えられてしまいます。そこで、「著作権(著作権法第27条・第28条に規定する権利を含む。)」と明記する必要があるわけです。

とはいえ、契約書に著作権法27条・28条の権利を明記していなかった場合の救済方法もないわけではありません。

上記著作権法61条2項はあくまでも推定規定ですので、「推定を覆すような事情」を主張立証できれば、著作権法27条・28条の権利も含めて著作権の譲渡がされたものと認定してもらうことが可能です。

判例もあります。

知財高裁平成18年8月31日判決(判例時報2022号144頁)
▶事実関係
ソフトウェアのプログラム開発委託契約で、「開発されたソフトウェアの著作権は発注者に帰属する」とする著作権の帰属条項はあったが、プログラムの翻案権の譲渡については明記されていなかった。
▶認定の要旨
発注の前提として、プログラムの改良や翻案をすることが当然の前提となっているという「交渉の過程」(メールのやり取りや、取り交わした仕様書などの記載内容)が残っており、これを重視して、翻案権も含めて著作権の譲渡されたものと認定した。

ただ推定を覆すとなると主張立証するのに時間も費用も労力もかかります。

以上から、著作権が譲渡、移転される内容を含む契約を締結する際は、(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)という文言を盛り込むか否かをしっかり検討する必要があります。

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