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【棋書レビュー】攻めて強くなる戸辺流中飛車

こんばんは。虚海と申します。棋書レビューの記事も3回目になりました。過去2回は両方とも詰将棋の本でしたので、今日は定跡書について書きたいと思います。なんか詰将棋ばかりだとつまらないですしね(笑)。

その前に私のことを書かせていただきますが、私は極端な中飛車党です。対局の9割以上で中飛車を採用します。それ以外は角交換四間飛車や右四間飛車もたまに指しますが、先手でも後手でもほぼ確実に中飛車です。

なんで?と言われると困っちゃうんですが、中飛車ってやはり自分から攻めることができる戦法ですし、シンプルに強いと思うんですよ。相手に合わせて飛車を自在に振り直し、最適な攻撃態勢を引くことができます。囲いも最低でも片美濃囲いにはできますから、そこそこしっかりしていますしね。

で、今日は中飛車を指してみたい方が最初に読むのにオススメしたい本として、「攻めて強くなる戸辺流中飛車」をご案内してみたいと思います。

【出版社】株式会社ルーク
【タイトル】攻めて強くなる戸辺流中飛車
【著者】戸辺誠七段
【初版】2017年7月刊行

株式会社ルークってあまり聞かない会社かもしれませんが、この本以外にも詰将棋の本も出していたりします。以前は戸辺先生の動画にルークの鈴木さんという方が共演されたりもしていましたね。この本は中飛車入門として、一と言って二とない素晴らしい本ですので、以下でご案内していきます。


1.この本の特徴

この本はなんといってもDVDが付いていることが最大の特徴の1つと言えます。滅多にDVD付きの棋書なんてありませんから、これだけで貴重です。

初心者が棋書を読む上での最大のハードルになるのが、「棋譜を追う」ことだと思います。頭の中だけで棋譜を追うのは、たいていはわかんなくなって終了です。また、盤に並べるのが面倒…という方も多いでしょう。そもそも棋譜を読むのが不慣れな方であれば、盤に並べることすら大変です。

その点、210分以上の大ボリュームのDVDが付いていますので、これを観るだけで駒の動きがハッキリとわかります。駒の動きを動画で見ることで、手の流れなんかをイメージとして目に焼き付けることができます。

また、戸辺先生と藤田綾女流が解説してくれますので、映像と音声の両方で頭に叩き込まれていきますので、本当に理解しやすくて覚えやすいです!

さらに、本の部分は次の一手問題で定跡を追っていく形になっております。俗に言う「指しこな本」形式ですね。ただ定跡を並べて書いているだけの解本と違って、1問1問考えて問題を解きながら進んでいきますし、構成上一気に何手も進むことがほぼ無いので、とても覚えやすいのが特徴です。


ここで「指しこな本」形式について説明しておきます。普通の定跡書って定跡と解説が1から手順を追って書かれている感じですよね。1ページで数手から十手以上進むものも珍しくなく、頭の中だけで追うのが大変! また、目で追って読むだけなので印象に残りにくいものが多いです。盤で並べながら読むのがオススメですが、分岐がある変化の解説なら、分岐点まで戻って並べ直すのもなかなかに面倒だったりします。

「指しこな本」形式も定跡を1から追って説明してくれるのですが、問題→解答・解説の繰り返しで少しずつ定跡が進んでいく形式ですので、ただ読むよりも印象に残りますし、普通の定跡書ほど一気に何手も進むことはほぼ無いので、盤駒無しでも読めるんです。私も今でこそ普通の定跡書を読めるようになりましたが、以前は「指しこな本」形式でない棋書は全然理解もできず、覚えることもできませんでした。「指しこな本」形式は初心者や級位者の方にこそオススメの形式ですし、公共機関を使う方にも移動中の教材として理想的なものになると思います。


2.この本の形式

上記の通り、大ボリュームのDVDと「指しこな」本形式という形になります。DVDも本もほぼ全く同じ内容のものになっておりまして、DVDを見てから本で復習するような勉強スタイルが考えられます。1ページの上3分の1が前問の解答・解説、1ページの下3分の2が次の問題になっています。

また、この本は4章構成になっているのですが、

・1章:先手5筋位取り中飛車
・2章:先手角交換型中飛車
・3章:後手ゴキゲン中飛車
・4章:相振り飛車

という内容になっています。相手が穴熊とか右玉とかそういうのは扱っていませんが、後手番の時や相振り飛車までカバーしてくれていますので、もうほぼすべての戦型に対応しているといっても過言ではありません。これって初心者用の本としてとても重要だと思っていて、相手がどんな形に持ってきてもほぼすべてに対応できますので、中飛車を始めるにあたって本当に安心できると思います。

ただし、幅広くいろいろな戦型を扱っているので、1つ1つについてものすごく詳しく変化を挙げてくれているわけではありません。それはページの都合もあるでしょうし、まったく仕方が無いと思います。それよりもほぼすべての戦型を扱っているメリットのほうが、ずっと大きいと考えます。

また、それほど難しい問題や変化がガンガン出てくるわけでもないです。それは初心者向けの本なので、あまり難しいことには触れていない所もこの本の長所なのかなと、少し贔屓目に見てそう思います(笑)。

3.この本の難易度と対象

上記の通り、それほど難しくありません。中飛車を始める人や、自己流で始めているけどきちんと基本的な中飛車の定跡を勉強した人向けの本だと思いますから、難易度もそれに合わせて低めに抑えてくれています。

ズバリ対象は、3手詰めが解けるようになって、何か定跡を覚えたいと思っている方にピッタリの本です。1級くらいの方でも中飛車の経験が少ない方であれば、役に立つことが多々あるかと思います。さすがに有段者の方であれば、すでに知っていることの方が多いんじゃないかなと推測されます。

4.総合評価

・はじめて中飛車を勉強する級位者:Sランク!
・はじめて中飛車を勉強する段位者:Aランク!
・中飛車を勉強したことがある段位者:Bランク!

正直、有段者にはあまりお勧めできません。どうせ知ってることが多いと思います。でも、ある程度詰将棋も解けるようになって、さあ何か定跡を覚えようと思っている人や、中飛車を覚えてみたい級位者の方であれば、自信を持ってオススメできます。網羅的にすべての戦型を抑えているのもこの本の素晴らしいところ。反復して身に付ければ、相手がどんな形できても対応することができます。この本で戸辺流の攻める中飛車を覚えてみませんか? 

上のリンクから買っていただけると私にも紹介料が入るそうなので、ご興味がお有りの方は、ぜひそちらからお願いします(笑)。もちろんそうでなくてもけっこうです。ぜひ立ち読みでもいいので見てみて下さいね♩


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