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「〈共同〉のための事実」(の共有)とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「〈共同〉のための事実」(の共有) 【きょうどうのためのじじつ】

 「まず、〈共同〉の第一条件となる「〈共同〉のための事実の共有」であるが、それは構成員の間で、その「共同行為」が互いの〈生〉にとって重要であるという事実認識が共有されているということを指している。」 

上巻 261

 “遠心力”となる〈共同〉の負担を乗り越え、人々が十全な「共同行為」を成立させる“求心力”となる契機のひとつで、当事者たちにとって、その「共同行為」が自らの「利益」になることが事実認識として共有されていること。最も典型的には、その〈共同〉が互いの「〈生存〉の実現」にとって不可欠であるという事実が共有されていること。

 こうした認識は、人々がある種の意志に到達さえすれば、互いに進んで「共同行為」に向かうとする「積極的自由」の観点とは対立するが、「利益」を問題にすることは、本来恥ずべきことでもなければ、人間存在の利他性を否定するものでもない。

 むしろ、人の情けや善意というものを活かすためにも、われわれが細心の注意を払うべき事柄である。なお、こうした〈共同〉の求心力となる契機は、他にも「〈共同〉のための意味」の共有、「〈共同〉のための技能」の共有がある。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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