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「おのれの人生の主人公」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「おのれの人生の主人公」 【おのれのじんせいのしゅじんこう】

 「なぜならここでは、人々はかつてのように、生まれや育ち、イエや慣習、身体的差異や経済力といったものに縛られることがなく、あらゆる局面において個人の自発性と自由選択が尊重され、その結果、開放的で多数性に富んだ「村」になることが保障されているからである。象徴的な言い方をすれば、そこでは人々は「おのれの人生の主人公」となること、「自由な個性の全面的な展開」が約束されているのである。」 

上巻 257

 日本のマルクス主義、およびマルクス主義に強い影響を受けた人々が好んで用いた表現で、イエや伝統、世間の慣習に加え、国家権力を含むあらゆる権力関係や権威など、人間存在が自らを規定し、拘束してきたさまざまな要因から解放されることで、自らの人生を自らの意思によって主導的に実現していくことを指している(「自由な個性の全面的な展開」とも表現される)。

 本書では〈自己完結社会〉の成立から、その延長線上にある「脳人間」に至るまで、「意のままにならない他者」「意のままにならない身体」からの解放を通じて、この“夢”が着実に実現されてきたことを受けて、皮肉を込めつつ、敢えてこの表現を用いている。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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