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福田翁随想録

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十数年前のことになる。師事していた方から「好きにしてよい」と、かなりの分量の原稿を託された。早速この随想を一冊の本にするべく、編集し、企画書をつくり、当時関わりがあった出版社数社…
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2023年8月の記事一覧

福田翁随想録(10)

 銀河鉄道の車窓から 「遺言書」はいつも正月に書き換えているが、今年はそれとは別に「死亡…

福田翁随想録(11)

 人生邂逅のご縁  人生途上にあって、人と人との邂逅から得がたいご縁に恵まれるというのは…

福田翁随想録(12)

 知らない人に救われている  先日眼科で診てもらったところ、白内障と宣告を受けた。  白…

福田翁随想録(13)

 好意は時に悪意に転ず  長く患っていた叔父に元気をつけてあげたくて、青木繁の代表作であ…

福田翁随想録(14)

 生きるも独り、死するも独り  私のツツジ好きは母からの遺伝らしく、今も狭い庭ながら色と…

福田翁随想録(15)

 なにが人を幸せにしてくれるのか  誰もが幸福、無事、平安を希(こいねが)っているだろうが…

福田翁随想録(16)

 大地に根づいた古老の訓え  散る桜 残る桜も 散る桜  良寛禅師の辞世の句と伝えられているが、この句意を私なりに味わっている。  私の引退時、関係していたある事務局の幹部がお昼に招いてくれて別れの食事をした。   現役時には事務所に威勢よく出入りしていただけに、ただの人になればさぞかし私の姿格好が寂しそうに映るのかもしれない。いつも明るく冗談を交わす仲だったが話は弾まず座は湿っぽかった。  私はまだカナダの入国ビザの見通しが立っていなかった。相手はこれからどうやって暮ら

福田翁随想録(17)

 禍福はあざなえる縄のごとし   世の中一寸先は分からないというのは、政界だけに限ったこ…

福田翁随想録(18)

 眼で聴き、耳で視る   吉野山の麓に住んでいる越智直正氏からの手紙に「山を歩いているう…

福田翁随想録(19)

 「影法師」にみる死生観   昭和史の超一級の資料といわれる『昭和天皇独白録』に、私の郷…

福田翁随想録(20)

 感懐も人も十人十色   八十年という風雪を潜ってくると、それなりに心に深く刻まれている…

福田翁随想録(21)

 カナダ先住民の死の美学   悪いことしているように年を取り  敬老の日だけ長生き許され…

福田翁随想録(22)

 捨てきれぬ生への執着   結婚五十年という節目の「金婚式」にこれといった改まったお祝い…

福田翁随想録(23)

 上には上、下には下がある   胃潰瘍で胃袋の大半を失ったせいで痩せ姿になった。どうにか元の標準体型に戻らないものかと、浅はかな考えで食欲もないのに無理に押し込んだのがいけなかった。腸閉塞で何度も入院する羽目になった。  入院するたびに次から次へと何種類もの検査を受けさせられ、その拷問のような恐ろしさと苦痛に耐えなければならなかった。近ごろになってやっと、いまさら格好をつけることもあるまいと悟ったおかげで体調の方は落ち着いている。  わが身が非常事態に陥れば、さすがの憂国の