リバース・クオモに会った

とても素晴らしい出来事があったので、書き残しておきたいと思い、綴りはじめてついに半年が経過してしまった。
なるべく簡潔に、記録として残しておきたいと思う。

2022/11/16
ここ最近はすごく機嫌が良い。なぜなら大好きなWeezerの大好きなRivers Cuomo(以下リバース)が奥さんとの里帰りで熊本へやってくる。さらにそのタイミングでスコリバのライブも決まっているからだ。

もちろんチケットは予約済み。今日もウキウキしながらリバースのディスコードサーバーでの皆んなのやり取りを眺めていた。
そこにリバースが現れるのは日常茶飯事なのだけれど、突然リバースから自分宛てにこんなリプライが届いた。

do you play an instrument?

かなりマイペースではあるけれど、一応音楽活動をしているので、ギターをやるよ〜と返事をした。
すると…

You're welcome to join us at Peano if you want

混乱した。
熊本の「ぺいあの」というライブハウスの事を言っているのに、「ピアノ」だと勘違いしてまう程度には混乱した。
なぜギターを弾くと言っているのにピアノで参加なのか?なんて脳がバグっていた。

落ち着いて内容を再確認、しっかりと返事をした。
もちろん答えはイエス。
興奮してニヤニヤが止まらない日々が始まった。

2022/11/19
19:00 リバースが我が家に到着した。

それはさらに前日のこと。ライブに向けた練習をしたい。というわけで我が家にリバースが来るという人生において間違い無く最大のイベントが、本人からのメッセージによりあっけなく決まったのであった。

正直に言うと、この後同じステージに立てた事よりも、このイベントが1番嬉しかった。いやもちろん、嘘みたいなマイペースとはいえ音楽をやっている人間としては、同じステージに立てた事も信じられないくらい嬉しい事だけど。
生きていて良かったと思った。
熊本に産まれてよかったと思った。
家を建てていて本当に良かったと思った。

着くなり彼は間違えて靴のままリビングに上がったのだけれど、すぐに慌てて靴を脱いでちゃんと揃えて置き直した。前日に行った流鏑馬体験で靴を揃えて置く作法を習ったばかりなのだとか。

練習を始める前にどうしてもお願いしたいことがあって、思い切って切り出した。自分の作業部屋の壁にサインを書いてもらいたい!
この申し出にリバースはあっさりと応えてくれた。このマッキーも捨てられない…

実はこれ、家を建てた時にひっそりと人生の(叶う訳が無い)目標にした事だった。まさか叶ってしまうなんて。

それから2人で曲を練習。
Pink Triangle
Homely Girl

自分の家で、目の前でリバースが歌っている。
正直ギターなんて弾かずに聴いていたい。もちろん練習に来てくれたんだから、弾かない訳にはいかない。もはやこんなチャンスは無いと、スコットのパートを歌ってハモったりもした。
この時、リバースの携帯で動画を撮っていたのだけど、結局今でもその動画を見た事は無い。次に会ったら、必ずデータをもらいたいと思っている。
(リバース、データ消さないでね!)

そんなこんなで、夢のような時間はあっという間に過ぎていった。
もう何かの間違えで、急に本番自分の出番が無くなってもそれで良いと思った。

初めて対面したリバースは、いろんな映像で見る通りの優しくて面白い、自分自身の思いに真っ直ぐである事が滲み出ている、そんな人だった。

2022/11/20
本番当日はリハーサルの為、一般のお客さんよりも随分早く会場入りした。
その昔、ライブハウスでよく演奏をしていた自分にとって、本番前のライブハウスの雰囲気そのものはとても懐かしかったのだけれど、今回は少し訳が違う。
そこにはリバースが居て、スコットも居る。
サポートのメンバーも皆んな海外出身の方達だった。
そしてなんだか多分偉い人も居る。

リハーサルは和やかに、時折り笑いも混じりながら無事終了。
自分はどのように振る舞えば良いのか分からないまま、あっという間とも長いともいえるような、不思議な時間を過ごした。

ステージが始まってまずはスコットの本編。実はこの日のライブはスコットの単独ライブにスペシャルゲストとしてリバースが登場するという内容なのだけど、冷静に考えて、そこにリバースが呼んだ謎の一般人が登場する(しかもラスト2曲)など、もしかしたらお客さんにとっては興醒めも良いところなのでは?という気持ちがだんだん膨らんでくる。

そうした恐怖心をなるべく気にしないように、頭の隅に追いやる事に成功したのは、ステージ傍から見るスコットの歌がすごく良かったからに違いなかった。その時間は単純にお客さんとして楽しむ事が出来た。

そしてリバースの登場。
この日リバースはインドネシアでのWeezerのライブに向けたインドネシア語のMCを披露。というか、会場のお客さんはその練習に付き合わされたような感じだった(笑)。
アットホームという言葉が適切かは分からないけれど、どこか熊本に帰ってきた彼を温かく歓迎しているような、そんな雰囲気をステージ傍から勝手に感じていた。

スコットとリバースがWeezerの曲やカバー曲など数曲披露したのち、ついに自分の出番がやってきた。

「僕のディスコードサーバーの友達、きょうへい君、お願いしまーす」
リバースの口から「友達」と紹介された。これを一生覚えていようと、ステージに出て行きながらそんな事を考えていたのを記憶している。
そしてステージでリバースと並んだ瞬間に、もう何も考えないで楽しくやろうと、そう覚悟を決めた。そんな感じだった。

実際にその時間はとても楽しく、純粋にバンドとしての演奏を楽しむ事が出来た。不思議と、リバースの事はあまり気にならなかった。いや、カッコつけて書いているけれど、実際はたくさんミスもした様な気がする。

お客さんもとても良い人達ばかりで、正直救われたような気持ちも多分にあった。
1曲終えて、ステージから捌ける。そしてアンコール、ぬけぬけとステージに上がってくる謎の一般人の自分にも、温かい拍手が向けられている事を感じて本当にありがたく思った。



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このとてつもない出来ごとは、しばらく自分の心を捉えて離さなかった。
ライブが終わってからの数日間は、言いしれぬ喪失感のようなものがずっと胸の真ん中に居座っていて、気分が上がるでも下がるでも無い変な日が数日続いた。

今でも部屋のサインを見ては、ニヤニヤしたり誇らしくなったり。
ここだけの話壁のサインに向かってたまに挨拶をしたりもしている。おやすみ、とか、ただいま、とか。

ステージで彼がそう表現して以来、自分はリバース・クオモの友達だと思うことにしている。
(友達のサインに挨拶するのはちょっと気持ち悪いけれど...)

いつかまた必ず会いたいし、多分会えると思っている。

それが音楽を続ける理由では無いけれど、また一緒に何かを演奏出来たなら素敵だなと思う。

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