見出し画像

J2視覚化計画2023〈第21節〉

#J2視覚化計画2023

◎今節のアナリスト◎丹生賀 育太郎

2023シーズンのJ2も今節をもって折り返し。なお、ルヴァンカップの影響で甲府、磐田、清水、秋田の消化試合数は1少なくなっている。

さて首位・町田の勝点はシーズン折り返し点で46に達した。2位、3位とのは、数字の順位表で見るよりも上記のように視覚化するとわかりやすい。過去10シーズンと比べても、2014年の湘南の60(最終勝点101)、2021年の磐田の47(最終勝点91)に次ぐペース。
さすがに「当確」を打つのはまだまだ先だが、この状況から自動昇格を逃す可能性は小さいと思わざるをえない。

赤→自動昇格/橙→プレーオフ進出/青…自動降格(水色…入替戦)

上の表は過去10シーズンの21節終了時点の勝点分布を横に並べたものである。ここから様々な情報を読み取ってみよう。

折り返し時点の首位は7割が自動昇格

21節終了時点の首位チームは最終的に自動昇格が7、プレーオフ行きが2。2020北九州は最終5位なので通常のシーズンならばプレーオフ圏内。2020年はイレギュラーすぎるので除外してもいいのかもしれない。つまり前半戦首位は70%が自動昇格、プレーオフ以上は100%である。

ポイントは3位との勝点差

首位の目線で自動昇格を測る時、重要なのが3位との勝点差。2014湘南の17差はさすがに異次元だが、2013ガンバが10差、2015大宮が9差で続く。2017福岡の7差が、3位を最もリードしていたものの自動昇格を逃した例となる。
今季の町田は3位と【9差】あり、過去10年と比べても上位ランクのアドバンテージを持っている。

実は少数派、1位チーム独走展開

21節時点で首位チームが単独でリードを広げていたのは2014湘南があるが、今季の町田は【2位と6差】。2015大宮も2位と6差だが、実は折り返しで首位が独走していた例はこれくらい。勝点の分布的にも今季は2015年に似ているかもしれない。(大きく違うのは大宮の順位・・・)

ワンツーフィニッシュが決まった例は意外と少ない

折り返し時点の1位・2位がそのまま自動昇格枠を占めたのは2013年と2015年、2021年で10シーズン中で3例だけ。意外と少ない。折り返し2位はデータ的には確実性がないと言えるだろう。

明暗分かれる押し返し2位

折り返し時2位チームの最終成績は振れ幅が大きい。自動昇格できたのは4例で、プレーオフ進出が2例(うち2016セレッソはPOで昇格)。7位以下に落ちた“失速”が4例もある。半数は昇格しているが、大きく失速した例も多いのだ。

逆転自動昇格の最大勝点差は?

自動昇格チームの中で、21節終了時の段階で自動昇格ライン(2位)と最も離れていたのは2016清水で9差。2017長崎と2019横浜FCが8差、2020福岡が6差で続く。つまり逆転での自動昇格の記録は【9差】。今季、奇しくも9差は6位の清水(※1試合未消化)ある。

自動昇格(2位以上)を逃した最大勝点

前半戦は好調だったものの、自動昇格を逃したチームの21節最大勝点は2020北九州の44。43取っていて3位以下となったチームは複数あるが、ほとんどはプレーオフには引っ掛かっている。記憶に新しい失速例は2021琉球で、43→65(最終9位)までしか伸ばせなかった。

プレーオフに入った最低勝点

折り返し時点で最も少ない勝点からプレーオフ進出したのは2013徳島の【26】。プレーオフも制して昇格したので、前半戦最少勝点からの昇格例も2013徳島(勝点26)である。
ただし、当時はまだJ2の上位と下位で力差が大きかったため、あまり参考にはならない。昨シーズン大分の28あたりが逆転でのPO進出の目安となる最低ラインか。

プレーオフ進出は6位ラインから5差以内!?

折り返し時点の6位から最も離れた勝点からプレーオフ進出した例は、こちらも2013の徳島【8差】である。それ以外の全てのプレーオフ進出チームは、21節時点での6位と勝点4差以内に付けていた。PO圏入り争いは関与するチーム数が多いため、派手な逆転劇は起こりいくい。多めに見積もっても6位と5差以内ではなかろうか。

最少勝点から残留セーフだったチームは?

降格なしの2020年を除き、入替戦なしでJ2残留できたチームの最少勝点は2017讃岐&山口の【13】。前半戦最下位から無条件で残留できた例はわずか1例で2018愛媛【勝点15】のみ(2013岐阜は入替戦が行われず)。今季最下位ターンの大宮【勝点14】には厳しいデータだ。

21節で最も多い勝点を持ちながら降格した例

最終的に自動降格となったチームの折り返し時点での最大勝点は【22】。2015栃木、2018熊本、2021松本の3チームが該当する。過去の例を見れば、勝点23以上持っていれば残留の見込みは高い…ということになるが、さて。

重要なのは自動降格ライン(21位)との差

異なるシーズンの勝点を絶対値として比べるのではなく、降格ライン(21位)との差(相対値)を比べよう。過去最も降格ラインからリードを持っていたにも関わらず降格したチームは、2018熊本と2021松本で勝点差は【6】。つまりデータ上は降格ラインから【7差】以上あれば残留安全圏ということになる。ちなみに今季ならば、勝点24以上となる。

降格ワンツーフィニッシュはレアケース

折り返し点からの自動昇格ワンツーフィニッシュは3例だったが、21位・22位がそのまま自動降格となった例は昨シーズンの1例のみ。前半戦終了時点での21~22位チーム18例(※2020は除外)のうち自動降格したのは6例(+入替戦で2)だけで、10例/18例が生き残っているという見方もできる。

レースの混戦度を見る

表の左側のイエローのラインは、21節時点での首位から最下位までのレース展開の長さを表している。これが短いほど混戦傾向で、2018シーズンと2019シーズンが首位から最下位まで25差となっている。今季は首位から最下位の差が【32】。町田の快走もあって、例年よりも縦長な展開となっているが、2位以下および残留争いは混戦気配だ。

まとめ(今季に適用してみると…)

★町田の自動昇格はかなり確率が高い

★現時点での2位(大分)は半々の可能性

★2位と9差以内(6位清水まで)は逆転昇格可能圏

★6位から5差以内(13位藤枝から上)ならばプレーオフは狙える
 ※ただし6位磐田・7位清水が1試合未消化なので今季は6位ラインが未定/14位秋田も未消化試合次第

★勝点23以上から降格した例はない(18位水戸から上)

★降格ラインから7差以上は降格していない(17位千葉から上)

★前半戦最下位チーム(大宮)は危険信号。悪い前例を覆せるか

とはいえJ2は数々の予測不能のドラマを巻き起こした魔境。過去10年のデータが簡単に覆えるほど甘くはないかもしれないが、後半戦はデータを超える“何か”を見せてくれるかもしれない。とりあえず夏の移籍期間(7月21日~8月18日/登録は~9月8日)で状況は変化するはず。次週から後半戦。いきなり大宮vsいわきの血みどろ決戦も組まれている。

丹生賀 育太郎(にぶが・そだてたろう)
1979年和歌山県生まれ。気まぐれ文筆家。大学時代は朝ドラ社会学を専攻。座右の銘は「J2でしか見えぬものがある。J2でしか育たぬ者がいる」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?