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J2視覚化計画2023〈第37節〉

#J2視覚化計画2023

◎今節のアナリスト◎丹生賀 育太郎

J2通(=J通)の間では非常に重要な節目として認識されている第37節。マラソンで例えると37キロ地点。この節を終えると、リーグ戦はいよいよ“残り5試合”の最終盤を迎えるからだ。

今シーズンは、自動昇格チームも、プレーオフ争いも、残留争いもまだ何ひとつ確定しないまま佳境を迎えている。

残り5試合。マラソンで例えれば、残り5キロ地点。

ここまで来ればシーズンでの力関係はほぼ決まっている
37節走ってきて上位に残ってるチームにはそれなりの理由があり、蓄えてきたモノが急に失われることはない。何より、ここまで積み上げてきた勝点は減らない。
なので、力のあるチームがそのままラスト5試合を走り切ってしまえば、ここから大きな順位変動が起こるものでもない。

ただし、失速はある。その隙を突いて、最後の逆転劇が起こるかもしれない。J2における残り5試合、マラソンにおける残り5キロが面白いのは、どこかにそんな期待があるからだろう。

過去の昇格争い“残り5試合”はどうだったのか。プレーオフのあった直近3シーズン(2022年、2019年、2018年)の昇格争いチームの動向を見てみよう。

2022シーズン昇格争いのラスト5試合の動向(※印→未消化試合)
☆新潟(74→84)=+10 ☆横浜(71→80)=+9 ◇岡山(66→72)=+6 ◇熊本(61→67)=+6 ◇大分(57→66)=+9 ◇山形(55→64)=+9 仙台(59→63)=+4 徳島(52→62)=+10 東京(46→61)=+15 千葉(52→61)=+9
2019シーズン昇格争いのラスト5試合の動向(※印→未消化試合)
☆柏(72→84)=+12 ☆横浜(64→79)=+15 ◇大宮(66→75)=+9 ◇徳島(61→73)=+12 ◇甲府(58→71)=+13 ◇山形(64→70)=+6 水戸(61→70)=+9 京都(62→68)=+6 岡山(60→65)=+5
2018シーズン昇格争いのラスト5試合の動向(※印→未消化試合)
☆松本(69→77)=+8 ☆大分(66→76)=+10 ◇横浜(63→76)=+13 町田(68→76)=+8 ◇大分(63→71)=+8 ◇東京(63→71)=+8 福岡(64→70)=+6 山口(51→61)=+10 甲府(52→59)=+7

37節以降に未消化分を消化した場合もある(2022山形1試合と東京V1試合、2019大宮1試合、2018町田2試合と山口1試合)が、それらを含めて「ラスト5試合」を表示している。

まず、サンプルで挙げた直近3シーズンでは、37節時点で首位にいたチームはそのまま優勝している。

逆転での自動昇格例は2019横浜FC。3位(※2位とは同勝点)からラスト5を全勝して大宮を差しきった。大宮はラスト5を2勝3分0敗《勝点9》、未消化分を含めると《勝点12》と決して失速した訳ではなかったが、全勝には敵わなかった。

ラスト5を全勝したチームは、横浜FCの他には2022東京V。ちなみに昨季の東京Vは38節の前の未消化分も勝って6連勝している。「残り全勝」は上位といえど難易度が高いことがおわかりいただけるだろう。

順位が入れ替わる場合、やはりどこかの「失速」に起因する場合が多い。象徴的なのは昨季・2022仙台。ラスト5を1勝1分3敗《勝点4》と失速し、大分や山形にかわされた

2019は37節時点でプレーオフ圏外いたチームが2つ(徳島、甲府)も逆転進出したシーズンだった。失速したのは5位にいた京都で2勝3敗《勝点6》。42節柏戦の歴史的大敗が語り継がれるが、38節・39節を連敗したことで立場を悪くしていた。6位にいた水戸も差しきられた格好だが、3勝2敗《勝点9》で決して失速という数字でもない。

2019は逆転進出した徳島が《勝点12》、甲府が《勝点13》を叩き出しているが、首位柏が《勝点12》、前述した横浜FCが《勝点15》とラスト5があまりにもハイペースな高速決着となった。

2018は37節時点で1位~7位の顔ぶれがそのまま最後まで自動昇格とプレーオフを争ったシーズンで、1位勝点も2位勝点も最も低かった。首位松本に加え町田、大分、東京Vが《勝点8》とスローペースだったが、4位だった福岡が1勝3分1敗《勝点6》でプレーオフ圏内からすべり落ちた。

上記3シーズンを見てきて、プレーオフ以上に残ったチームは《勝点8(=2勝2分相当)》以上を挙げているチームがほとんどで、《勝点6》は他クラブに差しきられる数字になる。2019の山形、2022の岡山と熊本は《勝点6》だったが、37節時点でのアドバンテージが効いて、プレーオフに残った。

残り5試合の傾向としては
・上位勢は平気で4勝くらいする
・逆転劇はあまり多くない
・2勝《勝点6》は差しきられる数字と思え
・プレーオフ以上は《勝点8》が必要

今季は2位の勝点が伸びておらず、勝点80を下回り、2018シーズンに近い自動昇格ライン(=2位の勝点)になることが予想される。2019シーズンのような高速決着にはならないのではないか。
一方でプレーオフ進出ラインは3位と6位が開いてきており、形としては昨シーズンに近いだろうか。数字は昨季(=64)より少し上がりそうで、70には届かず、60代後半あたりか。

自動昇格争い勢はとにかく《勝点12》(=4勝)以上がマストとなる。2位を掴めなかった3チームがプレーオフに回って、おそらく残された椅子は1つ。当然争いは熾烈で、プレーオフ争いは《勝点10》(=3勝1分)以上を取らないと生き残れないのではないか。ここから先、2つ負けたチームから脱落、である。

「実力+自信×勢い」が試される“ラスト5”。今季も痺れるようなドラマが待っているはずだ。

丹生賀 育太郎(にぶが・そだてたろう)
1979年和歌山県生まれ。気まぐれ文筆家。大学時代は朝ドラ社会学を専攻。座右の銘は「J2でしか見えぬものがある。J2でしか育たぬ者がいる」

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