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J2視覚化計画2023〈第10節〉

#J2視覚化計画2023

◎今節のアナリスト◎丹生賀 育太郎

まだ序盤…と思っていたJ2も10節を終了。今節でほぼ全体の1/4の日程を消化したことになる。
ひとつの目安となる第10節。ここで日程君は2位町田vs首位大分の直接対決をマッチング。結果は町田が「超絶デザイナーズCK」など前半で3点を奪い、反撃は1点に抑えての快勝。町田が首位に返り咲いた。

首位町田は第8節秋田戦を落としてから、壁にぶち当たった印象もあったが、ズルズルと行かずわずか2節で復調。長いシーズン、好不調の波は必ずやってくるが、いかにして不調を引きずらず、壁を打破できるか。自動昇格を目指すチームに課せられるドリルである。町田の場合は「セットプレー」がひとつの解答だった。

2位大分は、やや攻撃寄りだが攻守のバランスが良く、組織力も個の力も併せ持つ。特定の個に頼りすぎていないのも特徴だ。活躍する選手が試合毎に違うのも総合力の高さを物語る。その分、今節のようにハマらない試合で大敗を喫することも。敗北後のメンタルの建て直し方は町田同様に「昇格の神様から課せられたドリル」となる。

3位東京Vも上昇傾向だったが、今節は千葉に敗北。第8節清水戦で大怪我を負った梶川諒太の離脱があまりにも痛いが、それをも選手の一体感を高めるファクターにしたい。15年ぶりのJ1復帰への視界は決して悪くない。

10節までのサプライズは4位秋田6位群馬8位藤枝、9位金沢だろう。それぞれにストロングポイントを持っていて、吉田監督、大槻監督、須藤監督、柳下監督と個性の強い監督が率いられているのも面白い。映画やドラマの名作には大抵クセの強い脇役が出てくるように、J2を楽しませてくれる存在になっている。

とはいえ、10節の段階で今後のシーズンが展望できるほど、J2は平易な世界ではない。
過去5シーズンの、昇格チーム(1位・2位)と降格相当の21位、22位チームの10節時点の勝点を表にして図解してみた。

過去5シーズンの自動昇格チーム+21位・22位チームの10節時点の勝点(順位)。
※2020年は降格なし、2021年は降格4チーム

過去5シーズンの昇格チームの中で、10節の段階で最も勝点を稼いでいたのは昨季(2022)の横浜FC。最も低かったのも横浜FC(2019)で勝点14(=12位)。10節の段階で自動昇格圏に入っていたのは10例中3例だけというのも興味深い。ただし10例中9例、90%はこの時点で一桁順位である。

表はぼんやりと眺めて浮かび上がってくるのは、【勝点19~15】あたりが自動昇格のボリュームゾーンであること。特に優勝チームは、4年連続で10節時点ではこのゾーンにいた。今季ならば東京V、秋田、長崎、群馬、甲府、藤枝、金沢がここに該当する。

一方で、降格相当となる最終順位21位以下のチームは、10節の時点で既に成績がふるっていなかったことが見てとれる。2018シーズンの熊本(勝点17)は例外中の例外だが、残り9例はこの時点で勝点11以下で順位は17位~22位。つまり試合数×1以下のペースならば、残留争いを覚悟しなければならないということ。
降格ボリュームゾーンは【勝点7~9】で、過去5年の半数の例がここに入っている。今季は千葉と栃木が該当する。また、10節の時点で20位以下だったチームは、毎年必ず1つは21位または22位でシーズンを終えている。


11節以降になると、各チームの戦い方の分析が進み、対策も整ってくる。戦術的に深まっていくチームと、そうでないチームの差も開いていく。ここが踏ん張りどころだ。今季は5月に2度の連戦があるものの、例年ほどの過密さはない。折り返し点となる第21節は、6月17日・18日。まだ本格的な暑さを迎える前で、気候的にもまだ快適なこの《第11~21節》は非常に大事なターンになる。

チームはナマもの。予期せぬ出来事も次々に降りかかりつつ、シーズンはどんどんと進んでいく。ひとつ確実に言えることは、J2で伸びるチームは、勝っても負けても引き分けても、大抵ポジティブなのだ。ポジティブな雰囲気を作る人が、どこかにいる。昨シーズンの千葉和彦(新潟)のように、それは選手かもしれないし、監督・コーチかもしれない。あるいはフロントかもしれないし、スポンサーやファンの発信や行動が良い流れを作れることだってあるかもしれない。戦力“のみ”では測れないから、J2は面白い。

丹生賀 育太郎(にぶが・そだてたろう)
1979年和歌山県生まれ。気まぐれ文筆家。大学時代は朝ドラ社会学を専攻。座右の銘は「J2でしか見えぬものがある。J2でしか育たぬ者がいる」

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