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J2視覚化計画2023〈第22節〉

#J2視覚化計画2023

◎今節のアナリスト◎富嶺 織布音

みなさまごきげんよう。
6ポイントマッチという言葉がございますわ。
昇格や残留において重要な直接対決で、自らが勝点3を奪うこと+ライバルの勝点3を0にすることを重ね合わせて、その一戦には「6ポイントの価値がある」…ということですわね。

今節は、下位同士の直接対決がありました。
22位大宮アルディージャvs 21位いわきFCは、双方にとって“絶対に落とせない一戦”です。けれどこの両者の場合、厳密に言えば6ポイントマッチではありませんの。残留ラインを挟んで20位vs21位ですとか、20位vs22位ですとダイレクトに残留圏との差が詰まりますので6ポイントマッチになりますが…。ですが細かいことはよいとしましょう。

こちらのゲーム、序盤から「ボールを繋ごうとする大宮」vs「それをプレスで破壊しようとするいわき」という構図でした。いわきが早い時間に先制して、25分には追加点を奪うのですが、どちらも大宮が攻め込んだ・攻め込もうとした直後。チャンスの直後に警戒が甘くなるのは今の大宮の大きな課題ですわね。

39分のいわきの3点目はオウンゴールでしたが、心理的に余裕があれば出なかった失点かと思いますの。視点を変えれば、いわきの球際の寄せの厳しさやテンポの速さが相手から冷静な判断力を奪ったとも言えますわね。前半戦は結果こそ出ませんでしたが、球際に寄せる速さや強度は元々いわきが持っていた魅力。激しく奪ってシンプルに前向きに走る…というベースの部分はブレてませんわ。

後半に入って55分のいわきの4点目は、完成度の高いセットプレーでしたので大宮には致し方ないものでした。しかし0-4という状況になっても大宮はラフなボールを前線に放り込んだりはせず、「ボールを繋ぐ、ビルドアップを試みる」ことはやめませんでしたの。そして75分に生まれた大宮の得点は、美しいサイドへの展開から始まるきれいなゴール。“4点差からのきれいなサッカー”に対する見解は、観る方々のサッカー観で異なるかと思います。

繋ぐサッカーを貫く大宮は、83分にGKからの繋ぎを狙われて5失点目を喫します。今季はJ2もJ1も、ボールを保持する・繋いでビルドアップするチームがハイプレスに苦戦を強いられておりますが、そういったことを象徴的するようなゲームになってしまいましたわね。

今節は20位栃木SCvs19位レノファ山口FCの直接対決もあり、こちらが引き分けでしたため、いわきは残留圏との差を「2」まで縮めましたわ。監督は交代しましたが、「戦う姿勢」「バトルする」という部分は変わりません。ひとつ自信を得て、これから迎える夏本番、タフに走れることはアドバンテージになると思います。

一方、大宮は残留圏まで「8差」。原崎監督に交代後、1分5敗という成績は誤算ですわね。ボールを保持しながら相手を崩したい狙いは伝わるのですが、プレスに対して脆弱なのは致命的ですし、パスを繋いだ先の出口が用意できていないようにも感じます。20節藤枝戦の後半に見せたような食い下がる気迫が感じられなくなったのも気がかりです。

大宮にとっては荒れても仕方のないような惨敗劇でしたが、試合後、大宮ゴール裏に向けて一礼したいわきの選手たちに対し、大宮ゴール裏の皆さんが拍手を送っていたのはとてもよい光景でした。誰しも敗者になろうと思って敗者になる訳ではありませんが、敗者がいかに振る舞うかは、とても大切なことなのだと思います。

富嶺 織布音(ぷれい・おふね)
1983年福井県生まれ。マスコットを入口にJリーグに興味を抱き、いつのまにやらJ2箱推し。好きな卵料理はプレーンオムレツ。座右の銘は「プレーオフは豪華なおまけ」。

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