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J2視覚化計画2023〈第8節〉

#J2視覚化計画2023

4人目のアナリストは、静かなる随筆家・荘家久まどかさんです。

◎今節のアナリスト◎荘家久 まどか

桜前線が駿馬のように駆け抜け、あっという間に桜が咲いて、あっという間に今年の桜は散ってしまいました。

J2では、大輪の花を咲かせて果実を穫ることができるのは、22チームのうちたったの2チームです。今年はもう1チーム増えて、3チームですね(来年からは20チーム中3チームになります)。

高嶺の頂に咲くというその大きな花の果実のために、J2の民たちは毎節毎節、喜びと悲しみ、憤りや虚無を繰り返してゆきます。22チームのうち、19~20チームは積み重ねた努力が報われることはありません。叶わぬ夢となってしまいます。だからJ2は美しいのだと、私は思います。

42節のストーリーがハッピーエンドになるのは昇格していくチームだけですが、それでは前の年に紡がれた物語は幸せな結末だったのか?というと、必ずしもそうではありません。たいていのチームは前年に失敗をして、屈辱を味わい、そこから這い上がって頂上へと歩を進めていくのです。

そうなのです。J2という物語には必ず、敗北を前提にした成功があるのです。それは年をまたぐかもしれませんし、あるいはシーズン中にも起こるかもしれません。今シーズンも開幕4連敗(1得点8失点)で勝点0だったツエーゲン金沢がそこから3連勝(10得点4失点)。今節はロアッソ熊本相手に敗れてしまいましたが、この敗北もきっと次に立ち上がるための糧になるでしょう。

今節、3連勝していたV・ファーレン長崎を破って3連勝を飾ったザスパクサツ群馬も、開幕3節の段階では2分1敗(2得点4失点)スタートでした。昨シーズン20位で開幕前には降格予想をされる方が多かったと記憶しています。

金沢も群馬も、基本的にゲームの主導権は握らないのですが、奪ってからの切り替え、縦への速さには目をみはるものがあります。今、J2を面白くしているチームですね。開幕後に調子がふるわなくとも、ほんの7~8節で大きく変わりました。

なので、シーズン序盤にすこし躓いたくらいで「今季はもうダメ」とか「降格を覚悟した」とか、結論付けてしまうのはちょっと早いのかな、と思います。

どん底でもがき苦しむということは、いつの日かそれを糧にして飛翔するチャンスがあるということでないでしょうか。ただし、敗戦の糧をどれだけ積み上げても天上のJ1界へと架かる橋になる訳ではありません。糧は貯め込んでしまっても腐ってしまうだけ。来季こそは…!と誓い続けて14年目とか15年目とか、そういったチームたちが実際にある訳ですし(腐っていく姿も、それはそれで美しいですね…!)。

勝者よりも敗者の方が多いJ2の世界だからこそ、敗北から何か希望の欠片を拾い集めたいのです。ゴミに見えるかもしれないその欠片が、輝く星へと思わぬ変身を遂げるかもしれません。

星の色は移りにけりな たまさかに
  わが身J2にふる ながめせし間に  (まどか)

荘家久 まどか(しょうかく・まどか)
1996年島根県生まれ。報われない者がもがく文学作品をこよなく愛す。陽キャは苦手。座右の銘は「犬が2部向きゃ尾は1部。昇格まだか?」

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