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安倍元首相銃撃事件

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共同通信の記者がこれまでに書いた安倍元首相銃撃事件に関するnoteをまとめています。
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#旧統一教会

安倍元首相の事件を目撃した記者が旧統一教会の問題に感じた違和感の正体

8月31日の夕方のことだった。 国民民主党の玉木雄一郎代表が奈良市に来て、近鉄奈良駅前で街頭演説をするというので、僕はその日の作業をあらかた片付けてから取材に向かった。 駅前に着いた時にはもう演説の準備ができていて、仕事帰りと思われるワイシャツ姿の人たちが50人ほど集まっていた。しばらくすると近くに1台の車が止まり、中から玉木さんが降りてきた。拍手が起き、通りがかった人も目をやる。僕はリュックからデジカメとボイスレコーダーを取り出して取材を始めた。 マイクを握った玉木さ

“脱会支援”35年の牧師が語った言葉に込められた思い

こんにちは。大阪社会部の助川尭史です。 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけにクローズアップされるようになった世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会。政治との関わりだけでなく、高額献金によって生活が破綻した信者や、その影響で命を落とした家族など、深刻な被害が連日報道されています。 でも、安倍元首相の事件が起きるまでは、旧統一教会がどんな団体で、今までどんな被害があったのか、知らなかった人も多いのではないでしょうか。私自身もその1人です。 「名前は知っているけれど、何をし

『よく分からない』 宗教への遠慮で踏み込めなかった私たち

安倍晋三元首相が銃撃された事件から、1週間もたたない頃でしょうか。 ツイッターで「フランスではカルトの定義として10の基準を定め、カルトを取り締まっている」という趣旨のツイートを目にしました。 ちょうど事件の重要な背景事情として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の存在がクローズアップされ、宗教の問題をめぐる議論の渦が大きくなり始めていた時期です。 私はこのツイートを見て、ふと2018年にオウム真理教の幹部らの死刑が執行された時に感じた疑問を思い出しました。 オウム真

あの日から、私たちが書いてきたこと

7月8日に奈良市で起きた、安倍晋三元首相銃撃事件。発生からまもなく3ヶ月となります。 山上徹也容疑者は手製の銃で2回発砲し、最も権力のある政治家の一人がこの世を去りました。事件の動機として「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」への恨みがあったことが分かり、宗教が原因で家族が離散したという容疑者の生い立ちにも注目が集まりました。 一人の命が奪われたという事実の重み、「政治と宗教」の問題、新興宗教を信仰する親を持つ「宗教2世」の苦しみ、世論を二分したまま営まれた「国葬」―。