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ある行旅死亡人の物語

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「ある行旅死亡人の物語」に関するnoteをまとめています。
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#共同通信

ストリップに心奪われた記者が抱き続けた初期衝動、観客からフォトアーティストになった軌跡とは

最初は、いつものサブカル趣味かと思った。 写真記者の松田優とは、2020年にとある記者会見場で初めて顔を合わせた。日本大学の映画学科卒と聞いて、大阪のミニシアターについて軽く話を交わした。レトロな純喫茶とラブホテルを巡るのが趣味だとも言い、トレードマークのボブヘアーが示すとおりのサブカル人、という印象を持った。 後日、再び取材現場で会ったときに「ストリップ劇場って行ったことあります?こないだ初めて行ってから、ハマっちゃったんすよ」と切り出された。純喫茶、ラブホテル、そして

きっと誰かが覚えている 記憶に残る生きた証 ー 「ある行旅死亡人の物語」(11/30出版)著者インタビュー【後編】

共同通信・大阪社会部の記者2人が、兵庫県尼崎市で亡くなった身元不明の高齢女性について取材し、その謎めいた人生をたどった記事が先月、「ある行旅死亡人の物語」として書籍化されました。 今回の note は筆者の伊藤記者と武田記者に聞くインタビューの後編です。2人は何を考えて、どう記事を書いたのか。名もなき個人の人生を報道することの意味や、公開に至るまでの葛藤、読者に伝えたかったこと。それぞれの思いを語ってもらいました(聞き手= note 担当・山本)。 ※インタビューは書籍の刊

私たちが名もなき女性の生涯を記事にした理由 ー 「ある行旅死亡人の物語」(11/30出版)著者インタビュー【前編】

「行旅死亡人」 あまり聞き慣れないこの言葉。身元が分からず引き取り手がない遺体のことを指す法律用語です。「行旅」という言葉が付いていますが、外出先だけでなく自宅で亡くなった人も含まれます。 今年2月、ある行旅死亡人の女性の人生を追った2本のネット記事が話題になりました。 兵庫県尼崎市のアパートの一室で亡くなっていたのは、1人の高齢女性。部屋からは彼女のものと思しき年金手帳が見つかったものの、身元を確認できる家族や友人は見つからず。住民票も既に消去されていて、市役所のデー