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監護実績を作るために子連れ別居するという言説について

 単独親権制度だから親権争いが生じ、父母双方が子の親権者になることを希望し対立が生じた場合に、監護実績を作るために子連れ別居すると言われることがある。しかし、子連れ別居の多くのケースで、別居時における監護実績には、圧倒的な格差があり、「監護実績を作る」という目的で主たる監護者が子連れ別居するということは生じえない。

 残念ながら、日本における子育ての負担はほとんどの場合母親に偏っている。母親には別居しなくても監護実績があるのだ。また母親の稼得収入は父親に比べて少なく、別居は貧困を招く。母親の子連れ別居は、親権確保が目的なのではなく、貧困さえ覚悟した動機によっているのが現状だ。その多くに、耐え難い婚姻生活、高度の葛藤・DV・虐待がある。こんな実態を歪め、子連れ別居の動機を残された親目線で問題視するのは、ジェンダー構造を無視した暴論だ。

https://note.com/kyodo_shinpai/n/nf8f405fec3e3

 結局のところ、「監護実績を作る」という目的で子連れ別居を敢行するのは、主たる監護者ではない側である。連れ去られた側は、適時に子の監護者指定及び引渡しの申立てを行うという手段をとることになるだろうが、このように加害者が嫌がらせで行う子の連れ去りは、主たる監護者から子どもの引き離すことを目的としており、原則共同親権制度を導入したところで抑制できるものではない。加害者による子どもの連れ去りを抑制するために、子連れ別居を禁止したらDVから逃れられなくなり、本末転倒の結果を招く。弊害が大きすぎると言えよう。
 現在、DV被害者に対して、「実子誘拐」「連れ去り犯」などという言葉をぶつける攻撃が横行している。これは、極めて深刻な事態である。「監護実績を積むために子連れ別居する」などという言説が、家族法の学者から語られることがあるが、攻撃的な別居親たちを勢いづかせ、DV被害者をおいつめていることに留意する必要がある。(kana)


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