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評⑨別役実『あーぶくたった、にいたった』新国立小劇場当日1650円

 別役実『あーぶくたった、にいたった』(演出:西沢栄治)@新国立小劇場、当日Z券1650円。1時間45分くらい(休憩無し)
 「不条理劇」という訳が合うのか知らないが、別役実氏は昨年2020年3月、82歳で死亡。
 ※不条理という和訳が正しかったどうかに論があるのは知っている

 1650円なので、観る前から元はとったはず。新国立の「こつこつプロジェクト」という一年間かけて稽古して作品を育てていくプロジェクトの成果だし(コロナ禍で少し延期されたが)。ま、税金が入ってますからね。

 役者は5人。男3人、女2人。放浪後文学座(新劇)上がり、新国立劇場演劇研修所第一期生、現流山児☆事務所(アングラ)上がり、劇団菅間馬鈴薯堂看板役者、吹きだまり→新宿梁山泊→椿組(アングラ系?)。
 演出の西沢栄治(1971年生まれ)は、新国立劇場演劇研修所の講師もやってるはずなので、まあ、全体的に、新国立主導で集めた役者であるな。

電信柱があることくらいしかわかりません

 で、別役実。よくわかりません。不条理だし、まあいいか。
 『あーぶくたった、にいたった』は以前、若者たちが稽古で発表しているのを観たが、よくわからんかった。。のまま突入。
 ※一部ネタバレ?
 お約束の電信柱、はあるね。

別役さんの日常言語による落ちの無いコントか

 全10場。途中から、あ、これつながってる話なのか?と思う。
 わからん。わからんので、台詞を必死に聞く。ふーん。これは別役さんの日常言語を台詞にしているのかな。そういや、読んでないけど、『別役実のコント教室』とかいう本の表紙を見たことあるぞ(読んでないけど)、これって、落ちのないコントなんじゃないかな。。
 最後に雪に見立てた白い紙きれがどさっ。これは演出かな。。
 ……と、ここまで自分の感想。まあ、1650円だし。
 終わって、会場を出がけに「面白かったね」「うん」と会話する60~70代の男性2人連れ。そうだったのか!!!そうなのか。

分からなかったのでパンフレットを買って読む

 分からなかったので、パンフを買う。800円だか1000円だか。もといが1650円なのでそれくらいは奮発しよう。
 で、冒頭の「こつこつプロジェクト」だったと知る。ふーん。

公演がゴールではない創作

 芸術監督の小川江梨子と演出の西沢の対談がある。こつこつプロジェクトについて(以下、太字は私が入れた)
西沢「時間をかけ、回を重ねれば必ず発見があるというのは、こつこつ期間を終えて振り返ってから実感したくらい。それが本公演に上がることになってどうかと問われれば、逆に「今は過程にいる、まだまだ何でもできると思えているんです」
小川「嬉しい!」
西沢「(略)自分の中でゴールの設定が消え、もっと先々を見るように視点が変わっていく「こつこつ現象」が僕の中で起きていて、ライフワークってこんな感覚なのかな、と思ったりもしています」
小川「そこです! 到達点、ゴールがまずあって逆算してつくるのが、日本の演劇制作のベーシックになっているけれど、それでは作り手がゴールという「正解」にがんじがらめになってしまう。それを取り去りたかったんです」
西沢「若い時は僕も、公演に直接結びつかない稽古やリサーチを当たり前にやっていたんです(略)今回こつこつプロジェクトを介して演劇が仕事ではなかった頃の、純粋な喜びや手応えを取り戻せたのは大きい。仕事と純粋な創作、その両軸を持つのは大切なことですね」

 ふむ。世の「劇団」からすれば、そんな贅沢な、だろう。しかし、ここは新国立劇場。世界に向かって日本の演劇を発信していく場で、そうした試みがあることは悪くない。ここ以外だと、大学なのか(しかし未熟だ)。劇場では無理か。
 ……など、考える材料になった。別役はまた勉強するとして、パンフ買ってよかった。1650円のおかげだ。見えにくくて肩凝るが。また利用しよう。


 

 

 

 

 

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