seizaさんの音楽

ボーカロイドの宇宙の形:再

ボカロ音楽と宇宙とは、親和性が高いのではないかという話を以前した。

今回取り上げるseizaさんも、宇宙を楽曲のテーマの一つとして取り入れているボカロPである。同じ題材、というとしつこいように感じられるかもしれないが、人には人の表現があるのもまた面白いものである。
逆に、同じテーマでありながら「聴かせる」音楽を作っているのが、この手のクリエイターさんのすごいところなのである。そうでもなければラブソングはこうも流行らないだろう。

そして、このテーマを扱うのにseizaさんというクリエイターはもってこいなのだ。

イントロダクション

seizaさんはかなり新興のボカロPである。おそらく今まで扱ってきたボカロPの中で最も新しい方であると思う。しかし、活動歴が短いからといって曲が未熟であるわけではない、というのは皆さんご存知の通りであり、seizaさんも『プラネテス』がスマッシュヒットを叩き出している。
もちろんこの曲以外にも、粒ぞろいの名曲が揃っている。まだ曲数が少ないので、全て聴くのも容易だろう。

最初に述べたように、宇宙やそれに類するテーマを楽曲に用いていることが多く、またそのテーマにも合うような電子音の使い方が魅力でもある。
それでいて、最近流行しているやや前衛的な音構えではなく、メロディがポップなのもまた面白いところだ。自分はこういう音作りがとても好きなので、かなりハマっていると言える。

ところで、seizaさんにはある固有の特徴があるのだが……

音について

seizaさんの楽曲を聴くと、通奏するサウンドの感覚は同じながら、その表現には幅があると感じられる。これは、編曲をそれぞれ別のボカロPが担当していることによる。

例えば『プラネテス』は「ねこぼーろ」ことササノマリイさんが担当している。確かにそれを踏まえると、ちょっとササノマリイさんのテイストが感じられて面白い。
他にも、『チューイングキャンデイズ』はRuluさんが、『クリイムソーダ』はSEEさんが編曲を担当されており、曲ごとにテイストも微妙に異なるのだ。

これはボカロ音楽の作り方としてはかなり珍しいことであると思う。コンピレーションアルバムを作ったり、リミックスを投稿したりなど、一度制作された曲が編曲され直すことはままあるが、制作時点で編曲を別の方が担当することは稀である。
例がないわけではない。雄之助さんは、牛肉さんや攻さんと共同制作をされることが多く、またまらしぃさんはkemuさんにアレンジをしてもらうことが多い、などままあることではある。
しかし、楽曲ごとにアレンジが異なる、というのはなかなかお目にかかれない事象である。

それでいて、創作の軸がぶれない、というのもまた素晴らしいことである。共通した雰囲気を維持しているのは、seizaさんの制作力の強さによるものであろう。

言葉について

その楽曲のテーマが壮大ながら、歌詞が近いというのも魅力の一つだろう。宇宙をうまくワードとして取り入れつつ、その内容は我々の方を向いている。そしてそれがくどくないのだから、もう素晴らしいの一言であろう。

ちなみに例外が『プラネテス』である。これは歌詞だけ見ると話がとても壮大である。もちろん内包されている意味はこちら側である。こういう曲もまた良いのだ。個人的には「たとえ過ちを産んだような出逢いだとしても 君のいない正解を選ぶなら間違いでいい」という歌詞が結構好きである。

楽曲がかなりメロディアスなので、メロディにうまく乗る歌詞、というところも研究されてそうではある。ボカロの場合はリズムに歌詞を乗せることが多く、seizaさんもこの点について考えられているとは思うが、それ以上にメロディとの親和性が高いのが素晴らしいと思う。見事な相乗効果である。

曲紹介

プラネテス

流行った曲だが、実際とてもいい曲である。「君を幸せにできる魔法があればよかった」という歌詞とメロディに射抜かれた人も多いであろう。上に書いた作曲と編曲の違いがうまく掛け算されている名作。

チューイングキャンデイズ

エンディング感が強い曲、おそらく狙ってやっているのでこれはすごい。言葉遣いも可愛くて好き。ちょっとロックっぽいというか、ジャズっぽいテイストが入っているのもいいですね、こういうこともできる。

さよならボイジャー

seizaさんご本人が編曲をされている楽曲。この曲もとても良い。間奏とかアウトロとかの展開がめちゃくちゃ好き。「さよなら」とつく楽曲に悪い曲はない。これもその証左となっている。

以上、またね。

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