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「わからない」を探求するフックを見つける

「わかる/わからない」の視点で、アートに関わるお話を、思いつくままつらつらと綴っています…。

「わかる」には、自分で何か意味付けするという作業が、意識的であれ無意識的であれ含まれています。意味づけというのは、好き嫌い含めて、自分の思考のジャンルのどこかに分類する、つまり「分ける」ことです。
 初めて見るアート作品を前に「わかならい」となってしまうのは、うまく意味づけができない、分類項目がまだ自分の中にないのが大きい理由の一つです。だから「わからない」と感じる時こそ、新しい分類項目を作る、つまり自分の引き出しを増やす絶好の機会なのですが、正直手間のかかる思索の時間になるので、避けがちですよね。
 例えば、次のような作品があったら、どんな意味づけをしますか?

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意味づけも何も、これはもう、正直、展覧会会場にあっても、素通りですよね。真っ白い画面を見ながら意味づけしろというのも、相当な覚悟がいりそうです。
 では、ここに一本の線を加えてみるとどうでしょうか?

額縁と線

先ほどの真っ白いだけの画面より、興味がわいてきたのではないでしょうか? この線をきっかけに、
「坂を表している?」「何かの動きのつもり?」「裂け目にも見える」…
色々と想像が膨らみ始めるのではないでしょうか。
 さらに、作家と思わしきサインが横に書き添えられたりするとどうでしょうか?

額縁と線とサイン

「この作家は一体何を意図してこんなものを描いたのだろう?」
なんてことが、気になりだしたりします。作品を介して、作家と自分が対話を始めたということですね。
 このように、何かしらのフック(引っ掛かり)をきっかけとして、「わからない」に向き合って、自分の引き出しを増やす思索の時間を手軽に持てるのが、アート鑑賞の魅力の一つだと思います。
 名画と呼ばれる作品には、こうしたフックが必ず用意されているので、自分がどこまで”引っ掛かる”のかを試してみるのも面白いですね。

フォンタナ

《空間概念 期待》 ルチオ フォンタナ作
油彩/キャンヴァス/115.5×89cm/1961





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