風来
目の前にふと迫る雲。ただ、空はこれまでかというほどに、その青さを際立てていた。
徒桜なんて言葉を知ったあの季節とは違って、風は体温のような暖かさを忘れ、花びらも舞わせることはなく、潤いを帯びはじめた。
そして、青さなんてなかったかのように、夕方ごろにはその我慢の効かなくなった潤いが、風を置き去りにして、ぶつかり、音を立てる。
巡り巡っているはずなのに、この煩さと鬱陶しさは同じようにやってきている。今年もだ。
稲妻には趣がない。
近頃は筆も進まない。
今も、私の中で今も徒桜が散り続けているのだろうか。
それはこの雲が去るまではきっと分からないのだろう。
伊織様から素敵なイラストをお借りしました。
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