見出し画像

元飛込日本一選手が、ドラマホリック!『DIVE!!』第3話を見て書き殴った

この文章は現役ハイダイビング選手(元飛込日本一選手)から見た『DIVE!!』ドラマレポートです。
所々ネタバレや常軌を逸した(頭の悪い)表現が含まれます。
それでもOKであればぜひ最後までお読み頂けると幸いです。

(まとめる関係上、実際の流れてくるシーンとは違う順番で解説する場合があります。また、権利問題対策のため画像も控えめにしていきます...ご了承くださいませ...!)

〜INTRO〜 2話から3話の架け橋

2話では徐々に本気になっていく知季と影響され始める周囲の反応がとても色濃く描かれていました。
最後に麻木コーチが連れてきた飛沫がダイナミックなダイブを見せた場面で物語は引きました。

3話では飛沫と麻木コーチの目的が判明して、要一とぶつかりながらもオリンピックという道へ進路を定めて進む。そして大きく揺れ動く知季の気持ちはどのように着地して進むのか。

心理描写が多く多感な高校生のあり様を色鮮やかに表現していた第3話。
知季の覚悟を見届けましょう!

野生児とマシーン ぶつかり合うスタイル

力強い跳躍から繰り出される演技、豪快なスプラッシュを見せて自己紹介ダイブを終えた飛沫。圧倒されるチーム一同に向けて、飛沫もオリンピック出場を目指すことを麻木コーチが表明。

今まで飛んでいた断崖と比べて不満を垂れ流す飛沫。
小さいステージで飛ぶのは性に合わない。
そんな飛沫に同じ土俵で戦うように麻木コーチがたしなめる。
同じ条件で戦って勝て。要一のマシーンのように正確なダイブを横目に煮え切らない様子。

プールから上がってきた要一に対してわざわざ挑発しにいきます。

「面白味に欠けるな。お前のダイブ。」

「お前のスプラッシュこそ全然笑えないぞ。」

画像2

バチバチ張り合っていくスタイル


お互いのプライドがぶつかり合い一触即発状態になるも要一は冷静に距離を取る。

ここで飛込のスプラッシュ(水飛沫)について補足します。
体操競技の着地を想像したらイメージしやすいかと思います。
演技が上手くいったかどうかは着水時のスプラッシュの量によってある程度判別でき、演技の点数に直結します。

水飛沫を立たせない方法の前提として水面に対して垂直真っ直ぐの角度で入らなければならない。回転や捻りの多い高難易度の演技であるほどコントロールが難しく、まっすぐに着水するのが困難です。

コーチング等で水飛沫が出ない完成度の高い着水技術を「ノースプラッシュ」と呼んでいます。

画像3

意外と高度な技術



そんなノースプラッシュはただ真っ直ぐ着水できれば可能というわけでもなく、さまざまな要素が噛み合ってやっとできる高度な技術です。それ故に飛込競技で一番才能や素質が求められる部分だと筆者は考えています。

飛沫はおそらく飛込を我流に近いやり方でやってきたのでしょう。飛び出し方や空中の動きはおそらく祖父や父を見て学んだのでしょう。しかし審判がいる状況で飛ばないのであればスプラッシュはあまり気にしなかったのかも。(考察の域にすぎませんが...!)

決められたルールの中で勝敗を決める。飛沫にとってはいくらか窮屈に感じたのでしょう。


帰り際に富士谷コーチから、次回の練習から飛沫と練習するように指示を受けた要一。ずっと1人で練習してきた要一にとって初めての指示。
飛沫の持つダイナミックな強みを間近で感じさせて要一に刺激を与える事が狙いの様です。良いものは貪欲に取り入れていくスタイル。

画像4



「俺のコーチングを信じろ。」

この一言で納得するコーチと選手の関係性もすごいと思います。
実際自分よりも上手い選手と練習することはどのスポーツにおいてもある程度有効だと思います。見て盗むという言葉がある以上刺激しあう関係性はかなり貴重です。

筆者も進学のタイミングで練習環境が変わり、自分よりも上手い選手しかいない環境になって技術的に向上できた部分が多くあります。納得できる采配です。

○ ○ ○

チーム存続の危機・振り回される選手達

アップ中に富士谷コーチに練習をもう一度見てもらいたいと直談判する陵とレイジ。麻木コーチへの不満が限界の模様。

しかし、富士谷コーチはアメリカでの指導実績のもと麻木コーチに指導を任せている事、そしてチームの存続にも尽力していることを告げられる一同。

クラブを運営している企業の判断でクラブが存続の危機に瀕していることを言い渡される一同。しかし、麻木コーチがクラブからオリンピック選手の輩出を条件に企業の役員達を納得させた。

名称未設定

なかなかの力技では...?

退路は既に絶たれている状況が突然判明したことに動揺する選手。
覚悟が決まっている要一と飛沫以外は当然うろたえます。

現実味のない達成目標、トップ選手が間近にいる環境では自分も目指そう!とは簡単にはなりません。

ロッカールームでは談笑している陵とレイジ。そこに知季が入ってきても以前のように打ち解けられない状況。選ばれた選手と取り残された選手の空気が出来上がっています。

最近お互いの雰囲気が芳しくないことに耐えられず、知季は気持ちがふわふわした状態のまま練習している事を打ち明けると2人は正直な感情をぶちまけます。

「トモには...選ばれなかった側の気持ちなんてわかんねーよな...」

「ひいきされてる奴が適当なことばっか言ってんじゃねーよ!!」
「そうやって嫉妬とかわかりませんって顔して?そーゆう奴がな、一番人を傷付けんだよ!」

レイジはまだハッキリとした目標が明かされていなかったのでわかりませんが、陵は少なくともインターハイ入賞を目標として掲げて多少向上心があったと思います。

画像6

本音でぶつかり合った瞬間

そんな中自分より実力が下だと思っていた選手が、突然才能を見込まれて特別な練習をしているにも関わらず、当の本人がやる気があるのかわからない様な発言をするようであればブチ切れたくもなります。

「俺達をもう”逃げ”に使うな。」

レイジの去り際の言葉ですが突き放す様で、背中を押してる様にも思えました。しかし知季にとってこの時点ではクラブ内には『仲の良いチームメイト』と言う居場所がなくなってしまいました。

これは練習行きたくなくなりますわ...

○ ○ ○

沖津家の系譜

今まで断片的に散りばめられた飛沫の情報が麻木コーチのスカウトシーンで答え合わせのように揃っていきます。

麻木コーチは飛沫の祖父であり伝説の飛込選手と呼ばれた『沖津白波』を事前にファイリングしていて、孫に当たる飛沫の情報を掴んだのでしょう。先祖代々受け継がれてきた断崖絶壁でダイブする沖津家。

天才とまで言われた飛沫の祖父はオリンピックを目指すも、腰の怪我が原因で引退しオリンピックへの道を閉ざされました。伝説のダイバーはなぜ津軽から離れて五輪の道を目指したのか。

画像7

重箱の隅をつつくような挑発

「あんたも懲りないな」と言っているあたり麻木コーチは以前にも何度かスカウトしたのでしょう。しぶる飛沫にコーチは、「案外臆病なのね?」と挑発。(麻木コーチは煽るスタイルが多いですね!?)

麻木コーチからのスカウトは、祖父の真意を掴みたい飛沫にとっても悪くない誘い。故郷の津軽と彼女の恭子を置いて、葛藤もしながらも旅立つ。オリンピックという大舞台を目指して出陣!

○ ○ ○

ここにきてようやく飛沫の練習環境について補足させて戴きます。

飛込競技の視点から見ると、プール以外で飛込の練習をしている・海で崖から飛んでいるなんて言うと頭がおかしいのかと思われます。

そもそも飛込競技は、規定の高さで作られた飛込台と水深の深いプールが用意されて初めて実施できます。(公認プール)
登るために整備された階段、飛ぶときに滑らないように敷かれている滑り止め、手すり、水温、水深4〜5mのプールが揃っていなければ実施できません。

これらを全てガン無視したロケーションで沖津家は飛び続けていたことになります。屈強にならざるを得ないでしょう。

そして!ここで海などの断崖絶壁で飛ぶ時に何がキツいかまとめてみた!

その1 波に揉まれながら陸まで泳ぐ必要がある。しんどい!
その2 水底が見えないから岩にぶつかるかもしれない。危ない!
その3 整備されてない足場が不安定な岩場で飛ぶ。危ない!
その4 海岸のため突風や波の高さに影響される。危ない!
その5 崖に登るために水着一枚でロッククライミング。危ない!

あげるとキリがないですが整備されたプールで練習した方がはるかに効率が良く安全です。(体は強くなるかもしれませんが...)しかし自然の中で飛ぶ良さも筆者はわかってしまいます。

なぜなら筆者もハイダイビングの練習で崖から飛んでいるから。

画像1

超気持ちいいです

筆者は10mよりも高い場所から飛ばないと練習にならない競技をしているので崖を選んでいますが体力的にプールで飛ぶより遥かにしんどいです。

実体験から言います。沖津家はかなりヤバイ。とんでもない血筋です。

○ ○ ○

「飛込」から距離をとる 離れてみてわかること

小宮トレーナーの鬼トレーニングに知季がいない。麻木コーチが選手たちに聞いても誰も理由を知らない。どうやら無断欠席をしていることが判明。

当の知季は練習を欠席していきつけのお店に外食をするも、陵とレイジと楽しく過ごしていた瞬間が頭をよぎる。そのせいか何をやっても知季は満たされない様子。

画像8

無気力...だったが...?

ぐったりしていると未羽からデートのお誘い。いつもなら練習で断っていたけど今回はデートに行くことに。そりゃデートに行きたいよ。高校生だもの。デートの一回でもなけりゃ気が狂ってしまう。(?)

お揃いコーデをするために弘也に服を借りに行くと何やら意味深なことを言う弘也。この先の展開を知っている人にとってはお辛いものがあるかもしれない...

翌日少し気分良くデートに向かおうと玄関を出ると麻木コーチが出現します。選手にとってこれほど気まずい瞬間はない。

画像9

もはやホラー

問答無用で二者面談がスタートし、麻木コーチは知季が飛込に対して意味喪失状態でいる事を指摘しました。「いろいろ考えたくて...」と言う返答からそこまで読み取れるのはコワイ。

「なんで痛いのに飛込やってるのかなって...高い所も苦手なのになんでやってるのかなって。自主トレだってキツいし、朝だってもっと寝たいのに...」

飛込をやっている選手の誰もが思うことじゃないかと思います。筆者も練習が嫌になった時は同じような思考回路に陥っていました。

画像10

「友達と遊んだり、バイトしたり、彼女とデートしたり。そういう生活を送りたいのね?」

そして麻木コーチのこのセリフは筆者にも大ダメージを与えました。筆者も同じ年代の時に、遊びもバイトもデートも切り捨ててきました。一般高校生が体験するような楽しい体験をしたいと強く思っていました。

似た様な経験をしてきたからこそ知季の葛藤が痛いほどわかります。

結果が出るかわからない物に一心不乱になる覚悟を決められるか。他のみんなが経験しているラクで楽しいことを捨てて、自分にしか掴めないものを手に入れるか。

この覚悟を決めるには確かに時間がかかります。

試合の期日を考慮して麻木コーチは決断の返答まで3日の猶予を言い渡して去っていきました。まるで強烈なボディブローを貰ったかのような状況でデートに向かうことに。

画像11


デートのピクニックでも直前のコーチ訪問のせいか暗い様子の知季。すると飛込を頑張っている知季の姿も応援してくれて認めてくれる未羽。

応援してくれる未羽に飛込の魅力を伝える知季がすごくいい顔してたのでなぜか筆者は泣きそうになりました。(なぜ?)

「でも、何十回かに一回上手く行く時があって、その時はスッと水に入っていくと言うか、なんかその瞬間自由になれる気がするんだよね。何十回に一回だけど...気持ち良いんだよね!」

飛込は自分自身の演技を生で見ることはできませんが、成功したかどうかは水に入った瞬間にわかります。

手のひらに水が当たる感触、水に勢いよく吸い込まれるような感覚、着水時の音など成功と失敗は全く別物の感触です。

競技をやっている人以外には理解し難いかもしれないですが
「ッッッシャァ!キタ━━!!」となります。(筆者談)

飛込の事を話して笑っている知季を見て未羽も喜びます。
「トモならいつか誰もできないことやってのけちゃう気がする!」

全肯定彼女最高かよ...尊い...

○ ○ ○

次のステージに誘うエリート

意を決してプールの前まで来た知季。そこで突然電話が鳴って場面が変わると要一と知季が行きつけのお店にいるシーンに。

知季が気がかりにしている陵とレイジとの関係について要一が話します。

「麻木コーチは陵やレイジじゃなくてトモの飛込に目をつけたんだ。」
「トモは、ただあいつらに【勝った】だけだ」

個人競技ゆえに勝ち負けがあること、勝つたびに落ち込んではいられないと諭す要一。メンタルの強固さに打ちのめされる知季にさらに追い討ち。

「勝てば勝つだけ人は孤独になる。それを受け入れろ。」
「孤独の先には、計り知れない喜びがある。きっとある。」
「俺はそう信じて前を向いている。だから、勝ち続ける。」

画像12

達観し過ぎサラブレット高校生


何度も言うけど、ほんとに高校生か?覚悟完了しすぎだろ...と筆者でも軽く引くレベルの精神です。この覚悟マンに挑まなくてはならない知季。茨しかない道です。

しかしこの言葉で筆者の負ったダメージは軽減されました。似た状況を経験したけど、間違ってはなかったのだと。

○ ○ ○

枠(水)からの浮上 そして衝撃の選択

知季の中でさまざまな人からかけられた言葉が反響する。
知季自身の『狭く見えない枠』として描かれていた水中のシーン。息苦しく、もがきながらもようやく顔を出すシーンがとても爽やかです。

画像13

もがき続けた枠


逃げ出し方もわからない窮屈な枠だったけど、飛込でしか超えられないことに気付く。

「俺、この狭い枠から飛び出して見せます!」

このシーンの知季の表情の演じ分けが素晴らしいです。今まではパッとしない表情が多かった知季の、覚悟の度合いでこんなにも人は変わるのかと思えるような表情の変化。井上瑞稀さんの演じ方は爽快です。

知季の覚悟を見受けた麻木コーチも納得して本格的に指導をすることを明言する。選手とコーチの信頼関係が生まれたシーンだと感じました。

画像14

覚悟OK!...かな?

まとめ

サラブレットの要一、野生児の飛沫、その横にようやく並ぶ決意ができた知季。主役3人が揃い、オリンピックに向けて走り始めたお話だったと思います。

3人の葛藤するシーンを織り交ぜつつ、高校生という青さの見せ方が今回も眩しすぎました。

知季メインの掘り下げがされたので、残る2人の苦悩と活躍にも今後目が離せません!

次回は麻木コーチの『試合出場のための試合放棄』という衝撃の選択の真意はいかに...!?という内容です。

主役3人の絡みもあるみたいなのでこちらも見逃せませんね!

第3話は5月5日(水)0時放送です!お見逃しなく!

ここまで読んでいただきありがとうございます!
おもしろい!と思ったらスキ!ボタンを押してください!コメントしていただけたら励みになります!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集