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元飛込日本一選手が、ドラマホリック!『DIVE!!』第4話を見て書き殴った

この文章は現役ハイダイビング選手(元飛込日本一選手)から見た『DIVE!!』ドラマレポートです。
所々ネタバレや常軌を逸した(頭の悪い)表現が含まれます。
それでもOKであればぜひ最後までお読み頂けると幸いです。

(まとめる関係上、実際の流れてくるシーンとは違う順番で解説する場合があります。また、権利問題対策のため画像も控えめにしていきます...ご了承くださいませ...!)

〜INTRO〜 3話から4話の架け橋

3話では飛沫のチーム合流と知季の自分の「枠」を超えていった様子が描かれていました。

4話では飛沫という超大型新人に圧倒されつつも周囲の選手たちも負けじと闘志を燃やしていきます。

麻木コーチからインターハイに出場せず、オリンピックの選考会に照準をあわせるよう言い渡される選手達。戸惑いつつも各々照準を合わせるなか主人公三人の心境はどうなっていくか...

競技面でも奮闘していく三人は次のレベルに上がる為に課題に取り組みます。選考会にむけて知季は限られた選手しかできない大技『前宙返り4回半』に挑む..!

何かを得るためには何かを犠牲に

麻木コーチはチーム全体に今年のインターハイには出場しない方針を何の前触れもなく提示しました。麻木コーチのクラブでの使命はオリンピック選手の輩出。

その最短距離として選考大会で目立った成績を残し、各国の代表選手が集う強化合宿へ参加する権利を獲得することに照準を合わせる。

選考大会と期日が近いインターハイも出場するとなればピークを維持させるのは困難と判断した結果の戦略でしょう。

少しでも可能性があるならばと渡されていたトレーニングに励み、選考大会に出ることを決意した陵とレイジ。元々オリンピックにしか照準をあわせていなかったため、さほど動揺しなかった飛沫。

決めきれなかったのは要一と知季。トップで活躍していくという自負を持っていた要一にとってインターハイを捨てる選択はどうしても取れなかった。インターハイに出場(優勝宣言)して選考大会にも出場してみせると冨士谷コーチに宣言することに。覚悟の上であれ現実離れした選択には驚かされます...

覚悟を決めたとはいえ突然の選択に迷う知季。決めかねていた知季にむかって麻木コーチが興味深いことを言い渡します。

「あなたには要一や飛沫にない才能を持っている。インターハイより世界を目指すべきよ。」

未だになぜ自分が見込みありと判断されたのかがわかっていなかった知季にとって、初めてまともなプラスの言葉をかけた瞬間。この一押しで知季は選考大会に出場する決意を決めました。

対人競技ではない飛込でも選択による駆け引きがあります。

ピーク調整のための試合の出欠、演技構成の内容などで競技成績が変わる可能性は十二分にあります。

選手自身が最良の成績とはどのような内容をさすかによって試合の流れも変わる。言い換えれば勝ち方にこだわるとも言えますね。

○ ○ ○

課題克服・目指す先には...

選考大会に向けて更なる強化が必要とされる知季と飛沫。

飛沫は着水時の水飛沫を抑える技術『セービング』

知季は難易率の高い大技『前宙返り4回半』

どちらも違う意味でかなり難しい課題をクリアする必要があります。

ここで両者の課題の解説をします。

飛沫の『セービング』では、飛込技術の根幹に関わる基礎部分の改善なので本来であればかなり時間を要する練習が必要です。いくら強靭な体を持ち、難しい演技ができたとしてもすぐには習得できない技術です。

具体的には『セービング』は『着水直後に水中で行う受身』だと思ってもらうとわかりやすいかと思います。柔道の受身は投げられて畳に打ち付けられる際の衝撃を動作で受け流して体への負荷を軽減する技術です。、

、飛込の『セービング』 は着水時の水面下で体を回転方向に向かって全身を翻す動作です。(説明が難しい!)前方向に回転していれば前転、後方向に回転していれば後転の様な動きで勢いを相殺します。

この技術を駆使する事によって、着水時に瞬時に体を水中に引き込む事ができます。つまり水面に体が当たって水飛沫が発生する前に潜ることで水飛沫を極力出さない事が可能です。

水飛沫の量=体への衝撃の量とも言い換える事ができ、体に衝撃が加わる事によって発生するケガも防ぐ事ができる技術です。

そんなセービングは飛込を習い始めて初期に教わる技術で、セービングが上達していく事で水飛沫がでない演技が可能になり印象が良くなります。

富士谷コーチの指導で飛沫に「入水で8割決まる。」と言っている場面があります。どれだけ難易度が高く豪快な演技をしても入水時の飛沫が大きければ点数は伸びません。

飛沫の祖父の時代の採点基準(50〜60年前?)では水飛沫の量はそこまで重要視されていなかったのも事実です。しかしセービングの技術が向上され、技術自体の高度さが解明された以降は水飛沫の量は採点に大きく影響される流れになりました。

飛沫は祖父から受け継いだ飛込で勝ちたいと意気込みますが、時代とルールが変わった事によって評価しにくい演技になってしまいました。

お手本として提示される要一は演技の正確さと着水時セービングがかなり上手いです。要一の技術を目で見て取り込む様に指示されますが見ただけではすぐに出来るものではありません。通常であれば初心者時代から積み重ねていく事によってやっとマスターできます。

これらの理由から時間がかかるため難しいと判断します。

○ ○ ○

次に知季の『前宙返り4回半』
劇中の説明の通り世界でも限られた選手しかできない超高難易度の大技です。

飛込競技の宙返りや捻りの回転数はどの演技でも概ね3回転半であれば努力次第では可能です。体の使い方と高さによって三回半までは辛うじて回れますが4回半になると努力・素質・才能も問われてきます。

並外れた瞬発力・空中感覚・動体視力・遠心力に負けない筋力など飛込競技に求められるすべての要素が高水準でなければできない演技です。

国際大会でも数えられるくらいの人数の選手しか飛べない大技を日本の高校生が成功させた場合、かなりの注目を浴びるはず。麻木コーチの狙いが徐々に見えてきました。4回半を飛ぶためにトレーニングメニューの追加とトランポリンを使った『スパッティング』練習で猛特訓が始まります。

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回ったり捻ったりする逆バンジーです

知季と麻木コーチがトランポリンでやっていた逆バンジージャンプのような練習が『スパッティング』です。ロープで吊り上げてもらい、演技と同じ回転の動きを行います。

失敗して水に体を打ち付けることなく実際の動きに近い感覚をノーリスクで練習できるので、しかも圧倒的に体力の消耗が少なくて済みます。

ちなみにスパッティングはコーチ側の技術や機材がなければできない練習でもあります。これらの設備が整っている練習環境は恵まれていると言っても過言ではないでしょう。

知季と飛沫両名とも大いにもがきながら練習に取り組む姿はスポ根を体現していますね!なかなか納得のいく動きに近づけない知季、要一に突っかかりながらも助言をもらったりして奮闘していきます。いやー青春ですね!!


〇 ○ ○

周囲の追い上げ

練習にチーム一丸(?)となって取り組んだ結果、選手達のレベルが着実に上がっていく様子が描かれています。陵とレイジの調子も上がり麻木コーチも納得できるような仕上がりに近づいています。

要一は実際の様子は映っていませんがサラッとインターハイに優勝したようです。1位を取ることでさえ困難なインターハイを、あろうことか2連覇してしまう冨士谷要一。まるでインターハイは通過点のような扱いです。ハクを付けて選考大会へ挑みます。

入水技術に相変わらず苦戦している飛沫。冨士谷コーチの指導のクセの強さに胸やけをおこしつつ格闘しています。日頃から指導を受けている要一を気遣うような言葉をかけるも「コーチの言っていることは正しい。」と返される。

さすがの飛沫も「なんだこの親子...」とドン引きします。
この反応はさすがに飛沫が正しいと筆者も思いました。

スパッティングで感覚はつかめたものの、プールでの動きがうまくいかない知季。ひたすら前四回半の「かかり」練習をしています。

新しい演技種目を飛ぶ際に最も重要な練習がこの「かかり」練習です。

10mで新しく演技を作る時は、前段階の練習としておおよそ半分の高さで回転数を減らした演技を飛んで感覚作りを行います。

(例)10m 前宙返り3回半の場合→ 5m 前宙返り2回半 など

高さと回転数が違うのに練習になるの?と思うかもしれません。ところが、

高さが低くなる=対空時間が少ない=より素早く回転しなくてはならない

よって飛び出す瞬間の力加減とほぼ同じになります。
物体が落下している時、重力が作用しているため物体は加速し続ける。よって高さが5mから10mの倍になっても対空時間は倍にはならない。

この法則に則って飛込競技は新しい演技の練習していきます。
(自分で説明してどうかと思いますが、物理学は全く勉強してこなかったので正しく説明できている自信がありません...頭いい人わかってくれ!)

飛び出す瞬間の動作のみ分解しての練習です。むしろここがうまく出来ていなければ実際の高さでも成功しません。

超高難易度の前宙返り4回半ともなればかなり緻密な練習が必要です。


飛込競技は失敗=ダメージです。ダメージを避けるためなら、たとえ遠回りだとしても手を尽くすべきだと筆者は思います。

○ ○ ○

午後オフ!少し変わった男子高校生の日常

ここからのシーンはHiHiJets担の皆様には直接見て楽しんでもらいたいシーンが目白押しです。

調整終盤に差し掛かった頃、麻木コーチから休息も練習の内とのことで練習は半日で終わる選手達に言い渡す。ここにきて麻木コーチが飛沫の水着について追及します。

飛沫は水着なんて関係ないと振り切ろうとしますが、採点競技であり見た目の問題である以上ベストなものを着るべき。麻木コーチが(強引に)知季を水着選びの買い物相手に選定。すると要一君の方が詳しい...とぼやくと道連れに要一も巻き込まれることに。

ここで飛込選手の水着選びについて補足します。
基本的に男子の飛込選手は布面積の少ないV字タイプ(ブーメラン)の水着を選びます。競泳選手などは四角の形になっているボックスタイプを選ぶ人が大半だと思います。

飛込選手が通称ブーメランパンツを選ぶのはいくつか理由があり、一つは足の可動域による理由。飛込では腰から上まで足を上げる動作が頻繁にあります。足を上げるときに股関節部分にある布の有無によって動かしやすさはかなり差が出てきます。

筆者もボックスタイプで飛んだことがありますが、足をあげる動作などで違和感を感じながら飛んでいました。

もう一つの理由で見た目の問題です。ブーメランパンツとボックスパンツとでは足の面積が多く見えるブーメランの方が足が長く見えてスタイルが良く見えます。採点競技で見た目を気にしないのはナンセンス。水着の種類で点数に影響するかと言われれば無い!とも言い切れませんが印象の問題ですね。

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Just fitな水着を!

軽いノリで水着を決めようとする飛沫と知季。すると要一が並々らぬこだわりを持って解説を始めます。生地の厚さ・種類・色など特徴ごとに店員顔負けの情報力で選択肢を出してきます。特に色に関しては黄色は絶対に選ばせない執念を見せてきました。

飛沫にバッチリ似合う水着を選び終え、カフェで談笑する3人。
お互いの飛込に対する思い、恋愛模様などようやく男子高校生らしい会話をする場面が見られました。3人ともプールの外では年相応の高校生。飛込の有無によってここまで変わって見えるのか、とかなり印象が変わりました。

帰りがけに要一が知季に「案外俺がマークしてるのはトモだったりするんだぜ?」とかなり意味深な一言を伝えてお互い帰路につきました。要一は知季に何を見出してこの発言をしたのか?飛沫よりも気にかけているその真意は?今後も目が離せません。

まとめ

第四話では選手個人個人が抱える課題に立ち向かいながら挑戦していくまさに王道!と呼べるような放送回だったと感じました。

知季は前宙返り4回半の感覚を掴み次回いよいよ挑戦、要一の細かな演技の違和感に気づいた麻木コーチ。要一の心境にも何か変化が...?

そして突如更衣室で倒れ込む飛沫。苦しそうにうずくまるその訳は!?

第5話でストーリーが大きく動き出す予感!
3人の戦いを見届けましょう!

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