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元飛込日本一選手が、ドラマホリック!『DIVE!!』第10話を見て書き殴った

この文章は現役ハイダイビング選手(元飛込日本一選手)から見た『DIVE!!』ドラマレポートです。
所々ネタバレや常軌を逸した(頭の悪い)表現が含まれます。
それでもOKであればぜひ最後までお読み頂けると幸いです。

(まとめる関係上、実際の流れてくるシーンとは違う順番で解説する場合があります。また、権利問題対策のため画像も控えめにしていきます...ご了承くださいませ...!)


〜INTRO〜 9話から10話の架け橋

第9話では要一の葛藤と決断のお話でした。
要一がオリンピックの代表権を辞退したことによって再戦することになった主人公3人達。

さらに演技に磨きをかけるために各自の課題に取り組んでいきます。

知季は前4回半の精度を上げるためにひたすら練習。
要一はライバル達を突き放し、自分の限界を越えるために前逆宙返り3回半の習得。
飛沫は演技の表現力を増幅と101A(前飛び伸び型)を習得させるためバレエのレッスン。

定められた試合の期日は残り80日。
ラストスパートに向けていざ邁進せん!!

正攻法なし!クセ強特訓!

主人公3人は自分の課題に向けて取り組んでいますが、通常のアプローチとは違う特別な手法で課題解決に立ち向かうことになります。

要一は新しい演技の307C(前逆宙返り3回半抱え型)の習得に向けて練習していくつもりでした。

しかし富士谷コーチが新しく組み直したメニューは宙返りすらしない低い高さからの”基礎の301C(前逆飛び抱え型)をひたすら飛ぶ”というものでした。

「冗談ですよね?」
「俺が冗談を言ったことがあるか?」

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できて当たり前の『基礎練習』

要一にとっては、とうの昔に通過した基礎の部分からの再スタートに戸惑います。しかし富士谷コーチはこの課題を飛ばして307Cを飛ばせるつもりはない模様。

しかし要一の競技歴に隠された苦手意識を克服するには理にかなっていると思います。ここで飛込競技の種目に関して解説を挟みます。

飛込競技には基本的に6種類の飛び方が存在しています。男子の場合は6種類全て試合で飛ばなければいけません。その中でも精神的負荷(怖さ)を高く感じるのが3群・4群と呼ばれる演技です。

この3群・4群は何が怖いと感じるのか?
それは”ジャンプの距離感を間違えたら飛込台に頭を強打する”可能性があるからです。

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3群・4群は飛込台スレスレを頭部が通過する...!!

それなら頭が当たらないくらい遠くに飛べばいいのでは?と思うかもしれません。しかし演技全般に言えることですが飛込台から離れれば離れるほど回転がかかりづらく、減点の対象にもなります。

つまり3群・4群の成功の鍵は”飛込台ギリギリの距離を攻めつつ安全に飛ぶ”ことです。この飛び方を考案した大昔の選手は頭がおかしいのではないかと飛込選手みんなが口を揃えて言っています。

要一が言っていた「事故った」とは、この3群で距離感を失敗して頭をぶつけた過去を指しています。要一が飛込台で構えて前逆とびを飛ぶ際に度々チラつく白黒の画面の乱れが苦手意識のフラッシュバックとして表現されています。

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一番最悪なシチュエーション

人間の”危険の回避”と言う本能と真逆に位置するこの飛び方。一度トラウマになってしまうと抜け出すことはかなり困難です。トラウマからくる苦手意識を乗り越える方法として富士谷コーチは基礎中の基礎から再スタートを計画しました。技術面では完璧な要一の詰めるべき最後の課題をパパは既に把握していたと言うことですね。


○ ○ ○


場面は変わり、鏡張りの部屋でバレエに取り組む飛沫とそれを見張る小宮トレーナー。

「そろそろさ、プールで練習したいんだけど。」

来る日もくる日もひたすら専門外のバレエを練習させられればプールで飛びたくもなると思います。しかし小宮プロはそんな飛沫に激昂します。

「バレエはな、お前に芸術性を与えてくれるんや!」
「精神を研ぎ澄まして...バレエの向こう側にイクんや...(エコー)」

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イクんや...

小宮プロすら計り知れていないバレエの向こう側にアホらしく感じる飛沫。逃げ出そうとするも麻木コーチからのバイオレンスが飛んでくる事を理由になんとか引き止められます。

そもそもなぜ突然バレエのレッスンを取り入れる様になったのか?そこにはれっきとした理由があります。

世界各国の演技による採点で勝敗が決まるスポーツ(体操・フィギュアスケート・アーティスティックスイミング等)のトップ選手の中で幼少期やトレーニングとしてクラシックバレエを取り入れていた選手が一定数いたことがデータで明らかになっています。

独特の姿勢や動作が多くあり、不安定な姿勢からの腰からつま先までの関節の瞬発的な使用による跳躍や横回転、爪先立ち状態でのステップや姿勢保持など体を隅々まで使って安定させなければなりません。

この身体操作性の向上を図ることによってさらに演技中の綺麗さと正確さに磨きをかけることができます。ある程度決まった動きの中で差をつけるとしたら身体の使い方に着目することになります。

津軽の海で鍛えられた荒削りだが豪快な演技の飛沫に、バレエの表現力と繊細な身体操作性を掛け合わせることによってさらに印象的な演技スタイルを確立することが麻木コーチの狙いでしょう。

ここまで説明して初めて飛沫も理解できるかと思いますが、やはり説明が足りないのでは...何事も説明...大事!

○ ○ ○

知季は4回半を決める。この一点にとにかく集中するあまり5時間連続で練習し続けると言う脳みそ筋肉戦法をとっていました。

麻木コーチのストップも振り切って練習し続ける様子はもはや病的な印象すらあります。

自宅に帰って自分の部屋にいる時も、自分の演技の動画を見てイメージトレーニングをやり始める始末。ここまでくると誇張なしに飛込バカと言わざるを得ないでしょう。もはや飛込に取り憑かれています。これはいけない!!

そんなイメトレをしている飛込バカに突然麻木コーチからの電話がかかってきます。何かにかけてよく電話をかけてくる麻木コーチ。選手からしたらあまり嬉しくはないような...内容は明日特別レッスンするから時間をよこせという内容でした。

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しょっちゅう鳴る電話

言われるがままについていった先では、山奥での釣りをするというものでした。突然の飛込以外の行動に困惑する知季。釣りと飛込に無理矢理関係性を見出そうとするも「釣りと飛込、何一つ関係ないわ」とバッサリ言われます。

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つきっきりの特別レッスン

釣りなんかやってる場合じゃない、と逃げ出そうとするも車に乗せられて山奥まできたため麻木コーチの運転なしでは帰ることはできない。このコーチ、退路を絶つことや追い込むことに関しては余念がない。

麻木コーチより釣果をあげられたら練習に戻らせて上げるとのよくわからない条件で強引に釣りに専念させられることに。

果たしてこの特訓の成果はどうなる!?

○ ○ ○

覚醒していく選手達

特別レッスンの釣りを仕掛けたもののしばらく釣り糸が動きもしない選手とコーチ。痺れを切らして知季が釣りに連行した理由を直接聞きます。

「あなたを空っぽにしたかった。」
「頭の中空っぽにしてスッと飛んだほうが案外飛べたりするものよ。」

これに関しては一理あります。スポーツや仕事などに共通してるかもしれませんが、のめり込みすぎてパフォーマンスが落ちることは起こる。根を詰めすぎた状態で成果が出せないのであれば仕切り直しすることは悪いことではありません。

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頭を空っぽにリセット

実際に飛込の練習でも一つの演技だけをひたすらやり続けることは滅多にありません。やった事があるから言えるのですが、ひたすら同じ演技をずっと飛んでいると少しづつ感覚がずれていきます。端的にいうと頭がおかしくなります。加えてずれた状態で演技を続けると怪我にもつながります。

ひたすら数をこなして感覚を定着させる練習方法も間違いではないですが、用量を正確に定めなければただの効率の悪い練習にしかなりません。

強引にでも知季を飛込から一度引き剥がしてリフレッシュさせるのが麻木コーチの狙いだった様です。

そんなこんなで先に知季の釣竿に魚がかかって、師弟対決は知季が制することになりました。人生初の釣果にはしゃぐ知季。釣りを切り上げる事なくもっと続けたいとまで言い出すように。

完璧で何事も迷いなくコーチングしてくる麻木コーチに勝つことなんて滅多にないからと知季が言います。

しかし当の麻木コーチはそうじゃない、迷うこともあると否定。自分のコーチングが正しいか、正解か間違ってるかは結果が出なければわからないと。将来有望な知季、要一、飛沫を見ていると”間違ってはいけない”と。

そんな中でも知季のような誰も気付いていない才能を見出して育て上げることは、自分が飛んでいるよりも楽しいと麻木コーチは言い切ります。

この部分に関しては一度選手を離れて指導者の視点にも立ち始めた筆者も最近感じるようになった感情です。自分が演技を成功させる事ももちろん楽しいですが、自分がコーチングした選手が活躍している姿を見るのもまた違った楽しさがあることを最近知る機会がありました。

この感情こそが指導者として競技に携わる醍醐味です。選手である以上いつかは現役を退く事になる。同時に新たな指導者としての道に立つ選択肢を選ぶ人が飛込界で1人でも増えてくれるといいなと思う師弟の会話でした。

麻木コーチを信じてついていく知季達の意志の強さが垣間見えるえたシーンでした。

○ ○ ○

ひたすら基礎から固め直している要一。最初こそ戸惑いはしたもののメキメキと上達していきます。ゆっくりとではありますが307Cを分解した動きを地道にこなしていく練習は派手さは無いですが堅実です。

途中で焦りを感じる要一。しかしコーチは焦る素振りもなく力強く伝えます。

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急がば回れ!

「俺のコーチングは地味で古臭いのかもしれない。それは自分でもよくわかってるよ。」

「だが、俺は誰よりもお前の事を見てきた。お前にはこの方法が一番合ってる。」

「俺を信じろ。」と度々口にしてきた富士谷コーチ。迷わずついてきた要一には練習を経て上達していく感覚を体感していたのでしょう。

今まで反発していた要一が富士谷コーチに素直になっていきます。

「俺はコーチのことを信じてここまできました。この先もコーチのことを信じます。」

ここにきて二人三脚の足並みが揃いました。ここから更に追い込みをかけて新技習得まで駆け抜けていきます。

○ ○ ○

バレエレッスン漬けの飛沫はついに我慢の限界を迎えます。小宮トレーナーの見張りを逃げ切り飛込台に駆け上がっていきます。

飛沫を取り逃した事がバレたら飛沫かれる事が確定している小宮プロ。追いかけた先には台に立って構える飛沫。その瞬間から以前とは違う立ち姿に驚く小宮プロ。

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圧倒的軽さ!

伸びやかさと豪快さが増した飛沫の演技は、見る人を釘付けにすること間違いなし。飛び終えた飛沫が自分の動きに驚きます。

「体が...軽すぎるー!!?」

麻木コーチの狙い通りバレエによる身体の使い方の改善が実感できた様です。見る人も演技者も両方驚くほどの成果が得られたレッスンに飛沫は更にレッスンを重ねます。

ある日、麻木コーチがバレエの先生を呼んでレッスンを始めます。せっかくやるなら本気でやりたい。あんなに嫌がってた飛沫が自分から志願してきた様です。そこに現れたのは男性用のバレエウェアに着替えた沖津飛沫でした。

やるからには徹底的に、が信条の飛沫。この時のレッスンの動きも素人目からですが様になっていました。さすが歌って踊れるアイドルですね!!(中の人)

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まるで白鳥の如く...

知季や要一に比べて競技経験が少ない自分は、更に頑張らなければならない。負けられないという意思からエンジンがかかる飛沫。

唯一無二のスワンダイブに向けて更に磨いていく!!


あと少し足りないもの

選考会まで残り1週間。真剣に練習に取り組む知季とレイジ。そんな2人の前に突然陵が現れます。飛込から身を引いた陵がなぜプールに?

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突然旧友!

理由もわからないまま誘われていつものカフェに行くことに。久々に3人揃って溜まり場だったカフェで話し合いが始まります。

お互いの近況の報告もほどほどに、陵が部外者の身と言うことで伝えたいことを話します。

それはお互いの飛込に対するスタイルへの率直な意見でした。指摘してきた部分は確かに共に切磋琢磨してきた陵じゃなければ見えなかったであろう指摘でした。

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陵らしさのあるアドバイス

その中でも知季にはもっと楽しんで飛ぶことをアドバイスしました。陵自身もバスケ部に入って楽しんでスポーツをすることの大切さを痛感した様です。行き詰まりを感じていた知季にとってこのアドバイスは基本に立ち返ることのできる自分では気づけない盲点だったのでは無いかと思います。

しかも、このアドバイスの差金は元はと言えば麻木コーチからのお願いだった様です。

「長年一緒にやってきた仲間だからこそ伝えられる事があるって。」

そこで陵は改めて麻木コーチの凄さを実感。そして『スポーツをする』と言うことは多くの人の支えがあって実現している。このタイミングだからこそ刺さる言葉です。高校生の時点でこのことに気付けるのは素晴らしいと言うほかありません。

この後に続く麻木コーチへの『楽しんで飛ぶ』ことへの気付き、要一とコーチ陣2人に対する飛込に専念できる環境を整えてくれている事への感謝の気持ち、飛沫の恭子に観戦に来てもらうための頼み込み。

このどれもが選手を支える家族や指導者などとのやり取りで、間違いなく『支えられている』と言う事実を再確認できるシーンでした。

最後の知季と弘也の兄弟の会話でも同じです。恋愛によってギクシャクしていた幼馴染3人の関係性も試合の観戦をきっかけに再構築できそうな雰囲気へと持っていけそうでした!

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あれから...

試合に向けて心構えはバッチリ!いざ行かん!と張り切っていた知季の前には誰かと電話する麻木コーチ。その内容がなんとアメリカへ渡米すると言う衝撃の内容!

そんな話を試合前に聞いてしまった知季。果たして平常心のまま試合に挑めるのか!?ここで第10話は幕引きとなりました。

まとめ

10話も今までよりも違った選手達の戦いが見れました。飛び込みの練習だけが上達する方法だけじゃない。飛込以外の外的要素もあって人間として、そして選手としても成長していく。

競技スポーツの『成長』と言う部分にクローズアップされた放送回だったのでは無いかと筆者は感じました。

選考会という実戦で誰が勝利を掴むのか?3人の目指す先へは辿り着けるのか?第11話も目が離せません!

試合観戦するかのように11話を目撃しましょう!

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