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CCCreation Presents 舞台「白蟻」の感想というか考察というか

舞台「白蟻」@KAAT大ホール

幸運にも6/8のマチネ・ソワレのチケットを手に入れることができたので、観劇してきました。
なんかすごく感想とか考察を文章に残したくなる舞台だなと思った。ただ、ストーリーや全体についてわかりやすく文章を組み立てる気力が今はないので、思いついたことを乱雑に書きます。

最初に言うと、本当に面白くて、これまで見た舞台の中でも上位に食い込む私好みの舞台でした。

概要はサイト参照

席の引きがエグかったこともあり、本当に舞台冒頭シーンから強烈に引き込まれて2時間超。
冒頭、舞台装置の下からシロアリたち(白服の皆さん)が四つん這いでカサカサと這い出てくるの。それを目の前で見た経験は強烈。

終わってすぐの感想は「結構わかりやすかった」。
この場合の「わかりやすい」はストーリーの流れやここがこうなっているをちゃんと理解しやすいという、めちゃくちゃ良い意味です。
というのも、劇場に入って舞台セットを見た瞬間「これは難しい舞台っぽいぞ?理解できるか?」っていうちょっとした不安を感じたから。
小劇場っぽい演劇って、難しいもの多いじゃないですか……私の頭が悪いだけなのかも知れない。笑


すごく特徴的な部分が、主演がダブルキャストで役を交換して演じるということ。私はこのやり方は初めて見たし、役者はほんとうに大変だろうなと思う。
主演は特にだけど、他のみなさんもどっちがどっちかわからなくなること無いのかな、などと。マチソワで両方見れたのありがたかった。

主演の二人は、同じ役で同じ台詞を話しているのに役者自身の表現の仕方が異なるので、全く別の人格に見えた。

冒頭9分間が両キャスト分Youtubeに動画アップされてた。太っ腹。

↓↓↓ここから先は全部ネタバレというか見た人にしか伝わらない文章↓↓↓

両方見た比較(個人の解釈です)。

・櫛本
多和田バージョンは表情とか台詞回しとか、ある意味「芝居がかってる」感があり、自己演出が上手くカリスマ性が非常に高い、教祖的な人間。
平野バージョンはとにかく演説力で畳み掛けてくるタイプ。「この人についていけば正しいのでは」と思わせる強烈な説得力がある。成功するスタートアップの経営者って感じ。

・勢堂
多和田バージョンは先輩の「強さ(色んな意味の)」に圧倒されてとにかく心酔してて、先輩に着いていくことは「自分でそう選んだんだな」というのを感じられる。
平野バージョンだともっと彼自身の意思が弱く隙があって、そこに先輩がスルッと入ってきてるような、自分の意志で強く選んだというより「選ばされた」感、アフォーダンスがある。(ただ本人は「自分が選んだ」と思ってる、絶対に)


ジョジョミュで島田惇平さんに惹かれて、一応今回は島田惇平さん目当てでの観劇だったのですが、やっぱり凄かった~~~。

唯一明確に最初から「非人間」であることがわかっているAI大黒というキャラクターと、およそ人間が出来るとは思えない動きを次々に繰り出してくるJPさんがあまりにもマッチしててキャスティングの妙〜〜〜!!ってなりました。

特に印象に残ったのが、野犬掃討作戦で死んでしまう犬のシーン、片足を高く上げてブルブルって震わせる動きをしてたんですけど、それがものすごく「犬」なんですよ。
めちゃくちゃ研究されていて、本当にすごかった。出てくると目を奪われてしまった。

身体表現が上手い役者が好きだ。私は森山未來さんが大好きなんですが、それと同じベクトルでJPさんめちゃくちゃ好きだなと思いました。
と思って調べてたら公式サイトに「森山未來、辻本知彦、山田うん氏に師事を受ける」って書いてあってア"〜〜〜そういうのね!?!?てなりました。
今後もマメに動向を追っていきたい役者さんが見つかって嬉し。

そういえば、ジョジョミュの時、JPさんのお辞儀独特だな~ワンチェンのキャラに合わせてるんだな~って思ってたら、今日もその独特なお辞儀だったのでこの人いつもこうなんだって思いました。体やわらか〜〜〜


こっからは思いついたものを垂れ流し。

櫛本が一番怖いの、アメリカから帰国してきて、勢堂に害虫駆除をやることにした、と話しているところだと思った。明るい声色で会話しているけど、絶望が一番深いのって多分あのシーンで、『決まってしまった』瞬間なのではと思う。

ていうかその直前の櫛本帰国について語る勢堂の「アメリカから、僕の『恋』が帰国した」にひえってなったよ、そんな明確に『恋』呼ばわりするんだ……。
ここの声色も二人で解釈が違ったような気がする。たわ勢堂は喜びが滲んだような声だった、平野勢堂は何故帰ってきた?という疑問が大きい感じ。


最初の方で、きょんと新渡戸が診察をしていて、きょん父と美緒の診察がそこに重なるシーン。
過去と現在が同時進行していることを初っ端理解できなかったんだけど、位置関係や照明色で同時進行であることを理解できると、スッと一瞬で状況が整理出来て、なるほどこういう説明の仕方があるのかと思った。


生徒会のシーン、なんだかすごくライチ☆光クラブを感じるなと思ったら、パンフレットで言及されてて答え合わせだ!とテンション上がった。笑


櫛本は高校時代に裏山にいる野犬の掃討作戦を実行した時も、最後に「全てのAIと自分を殺す」ことを実行した時も、「自分が今やっていることは『正しい』ことである」というのを明確に言っていた。
「これ以上に正しいことを今は思いつかない」みたいな言い方だったと思う。
彼の正しさ、正義はどこにあるのか。何を「正しいことだ」と考えているのか。人間を守ること?自分の大切なものを守ること?なんとなく、そんなに『人間っぽい感覚』なんだろうかという疑問が……。


ラストシーン。
「大切なものは僕が焼かないといけない」と最初からずっと言っていた勢堂は最後に櫛本の遺体を焼いて、骨壺を墓に納めたのか?
あの棺桶を八百屋舞台の下に押し込むのはお墓への納骨を表してるのかなと思ってたけど、それにしては「これから火葬をするために火葬炉へ押し込む」動きだったなぁと言うのが気になる。

骨壺に入った先輩をもう一度焼いたりした?どこか他のところで焼かれて骨になった先輩を、「大切なものは必ず僕が焼く」マンの勢堂がもう一度火葬した?うーん、ちょっと不合理で考えづらい気もする。。。

とここまで考えて。あ、と思った。

もしかして、あの骨壺は美緒か……???
「先輩の欠けた部分」である美緒と一緒に、先輩を火葬したのかも知れない!

薬でぼろぼろになった美緒の骨は殆ど残っていないけど、人工心臓は残っていた。だから、僅かな骨と燃え残った人工心臓が入った美緒の骨壺だ。
最後に骨壺を持って歩く勢堂と、学生時代の櫛本と美緒がすれ違ったのは、そのことを表していたのかも。

いや、これはある!これは私の中では正解にたどり着いたと思う。
本当は違ったとしても、私はそう解釈しよう。


櫛本の死因は何だったのか。

「輪廻転生が生徒会のメンバーで成立する」という会話できょんが言っていた「俺が殺して、勢堂が焼いて、新渡戸が経を上げて、また俺の病院で生まれる」から考えると、トリアージという体できょんが櫛本を殺した(見殺しにした)のか?

あとは、櫛本もAI化・アンドロイド化していた可能性が考えられる。AI化していたから2025年1月1日に他のターマイト製AI達といっしょに死んだ。
大黒に向かって八重山が言った「死を避けない生き物はいない、だからあなた達はやっぱり生き物じゃない」という言葉、以前から自らに死のタイミングを設定していた櫛本が生き物ではなくなっていたということを暗喩していたのかも。
透析用シャントを設置した新渡戸にきょんが言った「お前も今日から人造人間だ」の軽口は、実はアンドロイド化の手術を請け負ってたことの示唆?(これはさすがに急にSFになりすぎる気がする)


久しぶりにたわちゃん見たんですけど出てきた瞬間デカ!ってなったし、多分通常サイズと思われる棺桶に収まりきれなくてはみ出しちゃうのちょっと面白かった。


松島庄汰さんめちゃくちゃ良かったんだよな。ブレンしか知らなかったから笑、こういう芝居をする人なのか!って驚いた。
役柄に一番『人間らしい』安心感があった。(とはいえよく考えたらあの子すごいハイスペだよね。成績は学年5位以内、甲子園の可能性があるレベルの野球部所属、可愛い彼女持ち)
ソワレのときは席の位置的に見えたんだけど、恐竜のぬいぐるみを櫛本が初めて出した時に表情が一瞬こわばったの、すごく細かい演技で好き。


円周率はずっと終わらない、永遠に届かない勢堂と櫛本の距離。そして永遠に続く輪廻転生。


櫛本は勢堂に「美緒のことが好きなんだろ?慰霊祭の時いつも見てた」って言ってたけど、本当は勢堂がいつも見てたのは美緒じゃなくて悟の方だったんじゃないか?って思える。
でもそれだとブロマンスじゃなくて、ラブだよね。


音にすごくこだわりがある演出だなと思う。
全て生演奏なのもだし、一番思ったのは寝起きの勢堂が「朝食はいらない」と言った時にアンドロイドがお盆をひっくり返して朝食をお皿ごと廃棄するところのガシャン!って大きな音。
人間だったらああは出来ない。絶対躊躇が生まれるから。


勢堂の両親の会話、母が「腰に魚の骨が刺さって痛い」とか変なことを言って認知症になってる?ような感じで始まるけど、実際はその時点で父のほうが認知症だよな。本当はそんなことを言ってなくて、「父が脳内で作った会話」になってる。
根拠は病院で会った新渡戸に高校の野球部時代と同じように「肘の怪我か?」と尋ねたこと。10年以上経ってるのに高校時代と同じ怪我か?と聞くのはおかしい。この時点で時間の認知に問題がある(あの時は、新渡戸をまだ高校生だと思ってる)。
勢堂がAI葬儀を両親に相談した時に「今日はマトモな日」なのは母じゃなくて、父の方。
認知症だから、妻がアンドロイドになっていたことにも気づかなかった。


電話ボックスは棺桶のメタファー?最初からずっとステージ上にあるのに、使われるのはクライマックスシーンだけ。
このご時世にスマホじゃなくてわざわざ電話ボックスから電話する意味とは?
あとどうでもいいけど新渡戸はきょんの電話番号覚えてるのかわいいね。


勢堂ってほんとうに美緒のこと「好き」だったの?
「泣きながら燃やした大切なもの」のひとつだから大切にする感情はもちろん多分にあったと思うけど、どちらかと言うと「勢堂→櫛本→美緒」であって、「勢堂→美緒」の直接の線があんまり見えない気がする。
櫛本先輩が大切にしてるものだから勢堂にとっても大切、と言うだけで、勢堂が美緒そのものを好きというのが全体を通して特に感じられなかった。
櫛本のセリフに「(勢堂は)美緒が好きなんだろ」ってあったからそうなんだって思ってたけど、それにミスリードされてただけな気が……。

勢堂→櫛本は恋慕も尊敬も崇拝も妬み嫉み憎しみも色んなものが混じった濃くて太い矢印。
でも逆の櫛本→勢堂はそんなにだよなぁ。可愛い後輩で「使える」存在ではあるけど。


美緒が人間である学生時代と、ラストのアンドロイド美緒、確かに同じ顔なんだけど、明らかに違うんだよね。
声も同じだけど、違うし、何故か顔の作りが違って見える。
人間の美緒がすごく活き活きした子だからその対比で感じたのか、アンドロイド美緒は不気味の谷がチラ見えしてた(チラ見えする不気味の谷とは?)
今村美歩さん、すごいな。


安くないはずのAIアンドロイドが複数勢堂に付いているように見えるんだけど(朝の準備のシーンとか)、電話するシーンでは「経済的な余裕はない」というのが示されていて、どういうことなんだろうなと思う。
実際は勢堂の周りにいるAI達は、大黒以外は人間の見た目じゃなくて、今で言うスマート家電的な感じなのかも知れない。


他に気づけた伏線とか

  • 勢堂父のフォローに回る勢堂母がはけた後の「良く出来てるなぁ〜」(二人の関係性ではなくアンドロイドに対しての言葉)

  • 昔話をアンドロイドに聞いてもらってる、からの「古い方?最新の方?」→「古い方です」。(大黒が古い方だとすると、「最新の方」母と思われる。大黒と比較すると明らかに人間っぽいし。)

  • AI葬儀についての大黒との会話の中で、八重山を「素子」と呼び捨てにする勢堂(ただの従業員を名前で呼び捨てしない)

  • 父に対して「あんたもその時(共に過ごすアンドロイド=妻が壊れる時)がきたら涙を流して弔いたいと思うはずだ!」と叫ぶ勢堂(本人を目の前にしてそんなこと!)


いくら考えても時系列が合わないのがマジでわからんくて怖い。
(ただズレてるだけだったら恥ずかしいw)
→勢堂は大学中退が正解でした。

1989/1/1 櫛本誕生(早生まれなので卒業年は-1になる)
1990年    勢堂,美緒誕生

2006年夏  野犬掃討
2007年春  櫛本高校卒業、渡米
2009年春  勢堂高校卒業
2012年    美緒死去
→13回忌から逆算するとここだけど、櫛本帰国後に亡くなった事実と矛盾

2013年    ターマイト創設?
2013年春  勢堂大学卒業&就職、櫛本帰国?
→ここが明らかに変。高卒で就職ならなんとか計算合いそうなんだけど、しっかり「大学を出て」って言ってる

2018年    第2次AI革命
2024年    美緒13回忌、勢堂就職14年目?
→大卒12年目の歳では?14年目とは?

2025/1/1  櫛本36歳 死去

櫛本→勢堂の矢印はそんなに無いって上で書いたけど、改めて考えるとあれだけ壮大な計画の最期を任せるのってそれだけで全ての想いを凌駕するほどものすごい事じゃん。
めちゃくちゃ勢堂のこと頼りにしてるやつだ……。


初見の平野櫛本のとき、クライマックスでの「機械とは白蟻だ!」からの一連の台詞、ひらりょさんの顔みたら涙が頬を伝ってて、その表情が本当に苦しくて苦しくて、私も泣いてしまった。
というのを今思い出した。


(あとは思いついたら適当に追加していきます。自分用メモなので)



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