ショパン=ゴドフスキー 練習曲No.1 を取り組む

この曲は右手アルペジオが特徴的なショパンのop.10-1を基に、さらに左手もアルペジオになっています。当たり前ですが、音が多くなります。ゴドフスキーの編曲法(この曲集の中には別々の曲を対等にミックスさせたものなど編曲と呼ぶには違和感のあるものもあるものの)は詳細まで見ると様々な特徴が見受けられると思うのですが、私の主観で総じて言うならゴドフスキーは常に加法の意欲を持って編曲していたということです。

弾いていると、もちろん腕は結構動かすものの、まるで全鍵盤が自分の手の2オクターブくらいの感覚のうちに落とし込まれている気がします。とても心地がいい。練習し始めはやたらミスタッチを気にしがちかもしれませんが、どこかのタイミングで、振り切ってインテンポで弾いてもそこまでミスしなくなっていたりします。ここまで全鍵盤を掌握した気になる感覚は新鮮です。
でこれ、原曲だとオクターブで押さえる部分も、こちらだと音が増えて3、4和音になっています。和音をダーン!と弾いて煌びやかな分散和音を弾くのはリストのピアノ曲なども思い出させるかもしれませんが、ゴドフスキーはリストよりもピアノの全音域中の空虚な箇所が少なくなっている。密度がすごい。右手、まず最初の和音を打鍵してすぐに最高音域まで上がる。原曲では2小節の中で右手アルペジオ(つまりソプラノ)は上向き→下向きと動いていたのに対しゴドフスキーバージョンの場合、それをするのが左手で、右手は高い音域から下向き→上向き→下向きと原曲より複雑な動きをしています。要は足し算の発想です。これは私の憶測ですけど、ゴドフスキーは原曲の上に行って〜下に行って〜という特徴を取っ払いたかったというよりかは、原曲を左手だけで弾くという発想がまずあった、あるいは原曲の姿はどこかに残しておいた上でさらに付け足そうとしていたのかもしれません。

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